第十話「開戦」《3》
レインは汗を拭いた。
決して暑いわけではない。
太陽も隠れていて、比較的涼しい日だ。
しかしレインは汗だくだった。
前方にいる、四人の者のせいだ。
四人とも、八時丁度に襲い掛かってきた。
殺す気で。
レインは戸惑った。
全員知り合い……親友だ。
そう、その四人とは、ケイズ達だ。
レインは額にやった左手を元に戻す。
剣を両手で持ち、ケイズ達を見た。
全員同じ目をしている。
死んだような目。
やはり全員、操られているようだった。
「!!」
レインは咄嗟に剣を顔の前にやる。
岩が飛んできた。
ケイズの。
しかしそれで終わらない。
いつの間にかレイスが『風』を使い、後ろに回りこんでいた。
早い。
しかしいつもより遅かった。
と、前に視線を戻すと目の前で爆発が起きた。
フィクスの『火』だ。
レインはぎりぎり前方に空気の壁を作り、それを防ぐ。
しかし休みを与えないように、後ろから突風が感じられる。
『風』の魔法だ。
レインはさすがに防ぎきれず、体を宙に浮かせてしまう。
体勢を整える暇もなく、地上から飛んできたそれが腹部に直撃する。
「ぐっ!!」
レインは思わず声が出た。
飛んできたそれとは、メサイアの石だ。
そう、メサイアの能力は『石』だ。
レインは腹部の激痛を抑え、体勢を整え、地上を見る。
意外に高い。
しかしその方が好都合だった。
地上から、岩、火などが飛んでくる。
しかしこの距離。
見てから反応しても避けれた。
レインは『空』の能力を自在に操り、体勢を崩さずかわした。
レインは剣を一旦離した。
下にはそれは落ちない。
レインの『空』によってそれは浮いていた。
そしてそのままそれを動かす。
高速に。
「ごめんなさい」
レインは呟く。
出来れば攻撃はしたくなかった。
しかし攻撃しなければならない。
攻撃しなければ、自分が死ぬのだ。
レインの剣は動く。
それに対し、レインは動かない。
空中に浮いているのだ。
剣がまず向ったのは、フィクスだ。
それに気付く前に、高速で剣は動いた。
寸前でフィクスは避ける。
が、微かに右の腹部をかすった。
それだけで良かった。
かするだけで。
『斬』の能力で、僅かに斬れた部分から、斬り口を広げられるから。
レインはフィクスから視線を逸らす。
死なない程度。
しかし気絶する程度。
そのくらいでやった。
剣はそのまま近くにいるケイズに向った。
後三人。
そこで気付く。
一人、いないことに。
『風』を使う、レイスだ。
「まさか!!」
レインは後ろを向いた。
予想通り、彼はそこにいた。
一秒も経たない内に、レインの体は地面に向っていた。
しかし大丈夫だ。
ケイズを気絶させれば、地上でもなんとかいける、そう考えていた。
そこでようやく気付く。
視界が赤いことに。
それで気付く。
先程の攻撃が、ただの突風ではないことに。
それで分かる。
自分から、血が出ていることに。
レインの剣は、ケイズにはかすりもしなかった。




