第十話「開戦」《1》
深夜二時。
暗い部屋の中で、男が二人、話していた。
「もう一度聞くが、クラウは本当にお前に気付かなかったのか?」
その者は壁に寄りかかり、腕を組んでいる。
クラウ・シュラクス。
その名を知っている二人は、シャラジューマだ。
その者の前に立っている者は言う。
「あぁ。俺は完璧だ」
「なら任務はいつするんだ?」
「さぁ?俺はやるべき時を伺っているんだ」
シャラジューマの二人。
壁に寄りかかっているのは、『 №1 』の、ガレスト・フォール。
もう一人は『 №3 』だ。
しかしサードは、マントを着ていなかった。
ガレストはそれを不思議には思わない。
任務の格好なのだ。
「サード。今日はサイクスとの戦いの日なんだろ?」
「あぁ」
「なら、そこで隙が必ず出来るだろう。その時、しっかりやれよ」
サードはにやける。
この作戦はサードが企画した。
しかしガレストは納得していなかった。
『ファイ・アルロスの仲間に紛れ込み、暗殺する』
別に、ファイ以外の者も殺してよいのだ。
だからこの計画の意味が分からなかった。
ここまでする意味が分からなかった。
が、一つだけガレストは分かることがあった。
サードが、何かを隠していることを。
しかしそれは言わない。
言っても、何も答えないだろう。
「あ、そうだ」
サードは思い出したように言う。
「もしかしたら、リスターとかいう奴にばれてるかもな」
「なっ!!」
サードはまるで人事のように言う。
「いや、予想外な出来事だったから対処出来なかった」
予想外な出来事。
それを聞いて、ガレストは思い浮かぶ。
「サイクスか?」
「違うな」
「じゃあ……」
「シントスとかいう奴だ」
シントス。
名前は聞いたが知らない。
たしか、ロイシャラン王国の兵士だ。
それの何が予想外なのか分からなかった。
レクシィ城の情報が漏れたことだろうか。
しかし違った。
「シントスが知り合いだったことだ」
その意味は分かる。
シントスが知り合いで、どんな関係なのか、全く把握していなかったのだろう。
ならば、ばれている可能性は十分にある。
「止めるか?」
「ガレスト。俺がそうすると思うか?」
サードは強く言う。
やはり分からなかった。
ここまでこの作戦をやりたがることに。
なのに何故か、ばれてるかもしれないこの状況に、焦りを感じていない。
「んじゃ、戻るか」
サードは言う。
その途端、容姿が変化する。
『変』の魔法だ。
「ま、任務が完了すれば俺は何も言わない」
ガレストは念を押すように言った。
サードは荷物を持ち、部屋のドアで止まった。
「分かってますよ」
口調と声も変わっている。
完璧。
確かにその通りだ。
「んじゃ」
右手を挙げ、手を振りながら部屋を出た。
その者……ケミア・タートスとなったサードは、いつもの笑顔をしっかりと作っていた。




