第九話「裏切り」《5》
ファイは付近の森の中を走っていた。
音のする方向に。
おそらく、戦闘だ。
なら、裏切り者は高確率でいるだろう。
気配は複数。
「……」
ファイは速度を緩め、気配を消した。
戦闘の音がしっかりと聞こえる。
戦場はすぐそこだ。
ファイは状況を確認する。
気配は三つ。
音は爆発の音と、木が倒れる音などだ。
そこに裏切り者がいることは間違いないだろう。
ファイは、戦場のすぐ側まで来たが動かない。
あまり戦いたくはないのだ。
それに、今いる人がやってくれるかもしれない。
ファイはその場を静かに見た。
二人、シャラジューマが向き合い、一人、倒れている。
恐らく、向き合っているシャラジューマのどちらかが裏切り者だ。
そうなると、一人やられた、となる。
なら戦いに参加したほうが良いか。
そんなことを考えている内に、誰かがファイのすぐ横まで吹っ飛んだ。
その者の顔を見る。
……違う。
既にその者は死んでいて、裏切り者ではないことが分かった。
そうなると、ファイが行かなければならない。
ならば奇襲だろう。
裏切り者の気配は動かない。
追っ手が消えたと思い、油断しているのだろう。
ファイはその隙を狙う。
「!!」
と、思ったら違った。
ファイのすぐ後ろの木が爆発した。
ダメージはない。
ファイは裏切り者の方向を見る。
やはりその者は、ファイを見て右手を伸ばしていた。
いることがばれていた。
恐らく、この者は手慣れだ。
追っ手を二人も倒し、気配を消したファイを見つけた。
「そんな人が……何故?」
ファイは思わず口に出した。
毎回思っていたことだ。
この任務の度に。
全員、裏切り者は手慣れなのだ。
また、この者は違うが、『風』の能力者が裏切ることが多いのも気になる。
なんせ、自分も『風』の能力者だ。
「……」
裏切り者は、考え事をしているファイを構わず攻撃した。
ファイの周辺で爆発が起きる。
しかしファイはその時は高く飛び上がっていた。
「ちっ。風か」
裏切り者は舌打ちをし、ファイを見る。
両手には火の玉が作られている。
しかし裏切り者は疲れていた。
連戦に。
だからファイの風に間に合わなかった。
裏切り者は全身に切り傷を負い、前に倒れる。
ファイはゆっくりと着地し、その者を見る。
死んではいない。
急所は外した。
しかしもう動けないだろう。
「……」
ファイはその場を離れる。
大きな爆発があったのだ。
誰かが気付くだろう。
その者に任せる。
気付かなかったとしても、あの傷だ。
一時間ももたないだろう。
部屋に戻る前に、任務完了ときた。
『心』の魔法でだ。
やはり誰かがやってくれたのだろう。
ファイはしかし気付かなかった。
先程の行動が見られていたことを。
ファイは部屋に戻る。
レイスはいない。
しかし、人はいた。
「!!」
ファイは体を起こした。
それで分かる。
それが夢だということに。
「懐かしいな……」
ファイは呟く。
懐かしい、そう感じたがそれはつい最近だということに気付く。
ファイは窓を見た。
まだ暗い。
しかしもうすぐ明るくなるだろう。
今日だ。
サイクスとの戦いは今日だった。
ファイはゆっくりと立ち上がった。




