第九話「裏切り」《2》
「……」
ファイはゆっくりと目を覚ました。
そこは小さな部屋の中。
少し薄暗かった。
まだ早朝だ。
周りを見ると、レインが寝ている。
他の者は違う部屋で寝ている。
明日。
サイクスとの戦いは明日にまで迫っていた。
「ファイ君……」
小さな声で誰かに呼ばれた。
レインかと思ったが違う。
その声はドアから……ドアの近くにいるラーチャから発せられたのだ。
「ちょっといい?」
ラーチャは小さな声で言う。
まだ朝ということもあるが、やはり元気が出ないのだろう。
二人はそっと家を出た。
二人の足音以外、何も聞こえない。
とても静かな街だ。
しばらく黙って歩いていたが、ラーチャが口を開いた。
「イルド君……なんで……」
やはり。
ファイはそう思った。
その話題に触れるのは分かっていた。
が、返す言葉が見つからなかった。
気安く大丈夫、なんて無責任な言葉は発せられない。
ラーチャの目を見ると、余計にそう思った。
「あ……ごめんなさい。ファイ君も友達が」
「それは気にしないで」
ファイはラーチャの言葉を遮るように言った。
二人は、ただ、街の中を歩いていた。
「ファイさん!!」
ふと、後ろから声を掛けられた。
レインだ。
「あの……ちょっと良いですか?」
レインはファイを見た。
その目でファイは分かる。
「あの、ラーチャさん」
「え?……あぁ。うん、分かった。先、戻ってるね」
ラーチャも分かったようだった。
ラーチャがいなくなり、二人だけとなった。
「で、なんだ?」
「ファイさん、考えたんですけど……えっと……」
レインは話しずらそうだった。
「その……イルドさんのことなんですけど」
レインもそうだった。
それもファイは分かっていた。
「イルドさんが、円の中に入っていくのを……自分から入っていくのを見ました」
「!!」
ファイは驚いた。
レインの目を見る。
「それで、思ったんですけど」
レインは続ける。
それを見てしまっては、あることに気付くだろう。
「もしかして……イルドさんは……」
「言うな」
ファイは小さな声で、しかし強く言った。
言いたいことは伝わった。
しかしそれを声に出しては欲しくなかった。
「すいません」
レインは誤る。
イルド。
その者は謎だった。
自分からサイクスの元へ行く。
そして浮かび上がること。
それは一つしかなかった。
『イルド・サンシルは、サイクスの仲間である』
しかしファイは、そうは思いたくなかった。




