第九話「裏切り」《1》
「俺は」
感情が無いケイズの口が動いた。
「俺はファイ・アルロスに戦いを申し込む」
この俺とは、ケイズではない。
ケイズから発せられているが違う。
サイクスだ。
しかしそれを分かっているのは数人だけだった。
他の者は状況を把握出来ていなかった。
「拒否権は無い。命令だ。従わなければ、どうなるか……分かるな?」
完全な棒読み。
本当に操られてるだけのようだった。
ファイは唇を噛んだ。
人質ということだろう。
目の前にいるケイズが。
それに、ケイズが操られているということは、恐らく他の三人もだろう。
「戦いの内容を教えてやろう」
棒読みで、ケイズは淡々と口を動かした。
場所はこのスレイタウン。
その為に、この街の人々を全て城に移したらしい。
だからこの街には人の気配が無いのだ。
その人々は、同時に人質となった。
勝負は明後日。
人数は無制限。
つまり、敵は無限にいる。
操られているものを合わせれば……だが。
そしてもう一つ、『命令』があった。
人質をもう一人。
しかもレイン又はシュハードだ。
「なっ!!」
ファイは思わず声を上げた。
が、断ることなど出来ない。
それをレインとシュハードは分かっていた。
だから口を開く。
「僕が行きます」
「俺が行く」
ほぼ同時だった。
ファイは悩む。
決められなかった。
自分一人では。
「僕が……僕が行きま」
「俺が行く」
レインの声を遮るように言った。
レインにはほんの少し迷いがある。
それと比べると、シュハードにはためらいもなかった。
ただファイを見ている。
正直、戦いでシュハードがいなくなるのは辛い。
が、ここは決めるしかなかった。
「シュハードさん……頼む」
しばらくの沈黙の後、ファイは言った。
シュハードはケイズに近づく。
「お前だな」
棒読みで言う。
するとケイズの足元に、円形の光が現れる。
床が光っているようだ。
円形の光は、直径三メートルほどで、大きかった。
この円形の光の中に入ると、移動する。
シュハードは自分からその円に入る。
ファイはシュハードを見る。
「……」
シュハードはファイを見て黙っている。
何も言わない。
そして数秒後、一瞬にして消えた。
ファイはその時は気付かなかった。
気付いたのはラーチャただ一人。
驚き、悲しんでいた。
ファイは部屋を見渡してようやく気付く。
ファイは呟いた。
「イルドが……いない」




