第七話「驚きの訪問」《4》
ファイは立ち上がらない。
いや、立ち上がれなかった。
何が起きたか理解する内にシュハードはやられていた。
助けようか迷っている内にレインはやられていた。
ファイは震えていた。
体も自由に動かない。
これが「恐怖」だった。
「は……ははっ」
ファイは何故か笑いがこぼれ出た。
何故かは自分でも分からなかった。
しかしその途端、立ち上がることが出来るようになった。
恐怖はまだある。
だが震えは止まった。
「つまらない」
それを見て、クラウが吐き捨てるように言った。
笑みは無い。
が、数秒経つと笑みが戻る。
余裕しか見えない笑みだ。
「そうだ!……ほら、これでどうです?どうぞ?」
クラウは両手を横に広げる。
魔法を使うわけではない。
余裕。
それを存分に使いたかったのだ。
「ありがとよ!!」
ファイはすぐ攻撃した。
準備をさせる暇を与えないのだ。
ファイはレインがつけた切り傷と全く同じ場所を切った。
はずだった。
クラウは僅かに体を動かし、致命傷を防ぐ。
ファイの動きを見てから体を動かしたのだ。
完全に避ける気は元々無かったらしい。
その次をクラウは狙っていた。
クラウの血が飛ぶ中、クラウの笑みが一瞬見える。
それは本当に一瞬だった。
次の瞬間、今までに無い、とてつもなく大きな爆発が起きた。
普通ならその衝撃で吹っ飛ぶ。
しかしファイは背中に風を溜めといてそれを防いだ。
爆風の衝撃は和らいだが、爆発自体のダメージはあった。
ファイは次の攻撃が来る前に仕掛けた。
深くしゃがみこみ、クラウの視界から一瞬で消える。
体が反応しない為、風で自分を動かせたのだ。
そして下から風で切り裂く。
完全に命中したと思った。
外れるわけがないと思った。
避けられるわけがないと思った。
が、避けられた。
爆風だ。
自分の目の前で爆発を起こし、その爆風で自分を動かす。
自分を傷つけず、かつある程度動くほどの爆風を起こす。
慣れだ。
上級者の持っている慣れがここで出た。
「おっと……」
クラウの口からそんな言葉が発せられた。
まだ殺気はない。
その分余裕はある。
ファイとクラウの距離がある程度あるところで止まった。
ファイはクラウを見る。
ファイはまた感じる。
忘れかけていた恐怖だ。
動きが止まると感じる。
クラウは全身血まみれなのに。
自分よりダメージは受けているはずなのに。
完全に、優勢なのはクラウとしか思えなかった。
と、考えてた時、大量の血が宙に舞った。
ファイが何かしたわけではない。
しかしクラウも何もしていない。
シュハードやレインも気絶したままだ。
だが確かに、血は流れた。
クラウの腹部から。
「な……に……が……」
クラウは何が起きたのか分からなかった。
ファイも同じだ。
しかし一つだけ分かることがあった。
血が流れ出たのと同時、いや、その寸前に、音がした。
その音で何が起きたのかは分かる。
が、疑問も出来る。
その音とは、『銃声』だった。
クラウは完全に命中してしまった。
後ろから撃たれた。
クラウは力を振り絞り、ゆっくりと振り向く。
その前にもう一発、右胸にあたる。
「な……ぜ……」
その先、ドアが開いている玄関にいたのは、青い者だった。
そしてその者はまた撃った。
こんどは左胸の少し下。
クラウは一瞬で力が抜けた。
余裕。
それで気付かなかった。
もう一人の訪問者に。
青い者はもう一度、手に持った銃で撃った。
次は、左胸に。
クラウは、ゆっくりと倒れた。




