第四話「理由」《1》
ファイが目覚めた時、少女はいなかった。
それにしても、あの時はどうかしていた。
シュハードとの戦闘だ。
力が抜けたように感じたが、そうではない。
圧倒的な実力差を感じ、どこかで『諦め』が生まれたのだ。
「……はぁ」
ファイはため息を吐いた。
他にも考えなければいけないことがある。
何故ここにいるのか。
その前に、ここは何処なのだろうか。
仮定として、誰かが助けてくれたとしたら、この家の者の誰かが元シャラジューマということになる。
他にも、シュハードが攻撃するのを何かがあって止め、そこをあの少女が助けた、というのも思いつく。
しかし、どれも微妙だ。
城に一般人がいることはないだろう。
なら、城の兵士の家だろうか。
幾つか考えていると、その部屋のドアが開いた。
そこから入ってきたのはあの時の少女だ。
さっきと違い、ピンク色の髪は後ろに赤い紐で縛っている。
しかし、それほど長いわけでもない。
少女はファイを見て、笑った。
口も、目も、心も。
少なくとも、この子はシャラジューマではないだろう。
「もう話せる?」
少女は近づいて来た。
少女はそれほど身長は高くないようだ。
それも合わせると、年は、15ぐらいだろうか。
「名前はなんて言うの?」
「ファイ。ファイ・アルロスだ」
「ファイ君ね。私は、ラーチャ・ファラゼーネ」
どうやら、少女は何も知らないらしい。
ファイの名を聞いても何の反応もしなかった。
「ファイ君、大丈夫?」
「え?何がだ?」
「だって、ずっと、深刻な顔してるから」
ファイは驚いた。
少し考えていたが、それが顔に出ていたとは。
しかし一般人を巻き込むわけにはいかない。
「いや、それは……」
ここが何処なのか、気になって。
そう言おうとした。
しかし、言えなかった
不覚にも、正直な腹が違う答えを言ってしまった。
それを聞いて、ラーチャは微笑んで言った。
「あ、お腹が空いていたのね。今持ってくるね。作ってあるから」
ラーチャはゆっくりと部屋を出てった。
何故だろうか。
いつかの時と、同じことになっている。
しばらく経つと、ラーチャは戻ってきた。
持ってきた料理は、やっぱり美味しかった。
食べながら聞いてみた。
「ここは何処なんだ?」
「何も覚えてないの?」
「ん、まあ。そうなんだ」
覚えているとしたら、レクシィ城にいたことまでだから、言わないどいた。
余計なことは言わないほうが良い。
「ここはデリア村だよ」
「……?」
デリア村。
どこかで聞いたような、聞いてないような。
たしかシャラジューマの時だった気がする。
「えっと、何処?」
「スレイタウンって、分かります?」
「ああ。」
「そこから一番近い小さな村です」
ファイはふと思った。
レクシィ城の近くに村があっただろうか。
ファイは食べ終わった所だ立ち上がった。
「あ、ちょっと…まだ寝てたほうが…」
ラーチャは止めたが、ファイはそのまま立った。
体は全く痛くない。
シュハードとの戦いでは、痺れくらいしか攻撃はされてないのだ。
近くの窓の外を見ると、赤かった。
もう夕方だ。
「ラーチャさん……でいいか?」
「え?うん」
「こんな時間で悪いが、俺がいた場所に案内してくれないか?」
「うん。いいよ」
ラーチャは笑顔で答えた。
その部屋を出て、家の玄関のドアを開いた時、ファイにとって信じられない光景が見えた。
ごく普通の小さな村。
しかしその村に掲げてあったのは、東の王国、ロイシャラン王国の青い旗ではなかった。
その逆方向にあり、あるはずのない、西の王国、シャルゼイナ王国の赤い旗だった。




