第三話「レクシィ城で」《2》
シントスという監視付きで、ファイ達は動くことが出来た。
その気になれば、振り切るなんて簡単だ。
まず、ジェイダスの居場所を聞き出した。
今いる通路を真っ直ぐ進み、突き当たりを右に曲がり、一番奥の、右側の部屋から二階に行け、その隣の部屋らしい。
ジェイダスを捕まえた理由は、説得して配下にさせる為らしい。
「ジェイ兄がそんな事する訳ないのに……」
その話をしているときに、レイラはそう呟いていた。
3人はまずジェイダスの所へ向っていた。
しかしシントスだけは違った。
ファイが、シャラジューマはここに来る、と嘘を付いたら簡単に信じてしまったのだ。
直線の通路の突き当たりを曲がり、しばらく走っていると、急にファイとレイラの足が止まった。
理由は同じ。
後ろから殺気が、それもとても強い殺気が、感じたのだ。
ファイはゆっくりと後ろを見た。
そこには、シャラジューマのマントを着た見たこともない男が立っていた。
派手に立っている金色の髪に、同じく金色の瞳。
背はファイより高く、年は、30歳前後くらいだろう。
耳にはピアスが付いている。
口元は僅かににやけていて目は鋭い。
「ファイ・アルロス…だな」
男はにやけながら言った。
「追ってか……」
ファイは風を足にやり、構えた。
「進入者4人…囮は上手くやったみたいだな」
「なんのことだ」
「つまり、俺達が本命ってことだ」
「!!」
ファイは後ろを見た。
この男は、「俺達」と言った。
予想通り、後ろには男が立っていた。
背がとても高く、丸い眼鏡をかけている。
赤い髪は少し長く、瞳も赤く、目は鋭い。
「僕達が来る必要は無いんじゃないのか」
「そう言うなって」
「だってこいつら、全然強そうじゃ無い」
ファイとレイラは動けない。
二人から出る恐ろしいくらいの殺気に押しつぶされそうだった。
シントスは状況を把握するのに必死な為、腰にあった片手で持てるほどの銃を構えていた。
「ファイ・アルロス。特別に名前を教えてやろう。自分を殺す奴の名前くらい、知っておきたいだろう?
俺はシュハード・ダリセルネ」
「!!」
ファイは驚いた。
顔は知らないが、その名前だけは知っていた。
「ケイズさんの…指南者か……」
「そうだ」
シュハード・ダリセルネ。
何度かその者について、ケイズから話を聞いていた。
『火』『水』『雷』の3つの能力を使う強者。
そして…
「なんで上級者が………」
ファイは呟いた。
シャラジューマは、大きく分けると3つに分類される。
入ったばかりで、任務は受けない『初級レベル』
初級レベルに魔法を指南し、任務を受ける『中級レベル』
力を認められなければなれない『上級レベル』
「僕も名乗っておこうか」
後ろにいた男が眼鏡をいじりながら言った。
「僕の名は、ノスタード・ジュリアス。シュハードと同じ、上級者さ」
ファイは、シュハードを見ながらシントスに呼びかけた。
「シントスさん。援軍を、助けを呼んでください」
しかしその答えは返ってこなかった。
ファイは後ろを見て分かった。
シントスは、うつ伏せに、倒れていた。
「し…シントスさん!!」
シュハードを見た。
笑っている。
右手に雷を集めながら。
ファイは深く考えなくても分かった。
シントスが倒れている理由を。
しかしファイは深く考えた。
何故倒れた時に気付かなかったのだろうか。
音がしなかったからだろう。
何故音がしなかったのだろうか。
シュハードが、気付かれないように倒したからだろう。
何故気付かれないようにしたのだろうか。
「注意を逸らすためだよ」
「!!」
ファイは気付いた。
いつのまにかシュハードが目の前にいたのだ。
そのままシュハードの右手がファイの首に向った。
シュハードは強くファイの首を絞めた。
その時、『反射』が起こった。
咄嗟に風を操り、シュハードの右手を切り刻もうとした。
しかしその時はもう、シュハードは右手を引いていた。
「おっと…。シャラジューマでの事が、役立ってるじゃねーか」
ファイは悔しかった。
「大丈夫そうね」
いきなりレイラが喋った。
シュハードや、ノスタードに聞こえないくらいの小さい声だ。
そして大きな声で言った。
「あんたはそっち。私はこっち。頼んだわよ」
「!…レイラ。何言ってんだ。上級者だぞ」
その声は無視されたらしい。
レイラはノスタードの方を向いたまま動かない。
そのノスタードは、また眼鏡を弄りながら口を開いた。
「今の会話からすると君、裏切り者?いつ抜けたんだ?まあいい」
「私について来れるかしら」
レイラはそのまま水と化した。
「そっちか……」
ノスタードは呟きながら、右手を壁に付けた。
すると、そこが爆発した。
『火』の能力か何かだろう。
そこから、城の外に抜けた。
「はぁ」
ファイはため息を付いた。
そしてレイラの言葉をお思い出した。
「何が、『大丈夫そう』だよ」
ファイはシュハードを見て構えた。




