第三話 森へ行く前に
「でも、ちょっと待ってくれないかな?」
「えぇぇーー!?」
いざ行かんとしていた男の子はガクッと肩を落とした
「どうして?」
「私、見ての通りボロボロでしょ?だから、まず怪我を直さなきゃと思ってさ・・・」
「まぁ、確かにすっごいボロボロだよね、お姉ちゃん・・・」
セリナのボロボロの姿を見ながら男の子が言う
「怪我を直すのって、どのくらいかかるの?」
「・・・多分、30分くらいかな?」
「えっ、そんな短時間でこれだけの傷が治るの?」
「うん!あっ、そういえばまだ自己紹介してなかったね。私、セリナ。よろしくね!」
自己紹介をしていないことに気づいたセリナはあわてて自己紹介をする。
「俺、ロン!よろしく!じゃあ、お姉ちゃんの用事が済むまで俺も自分の用事を済ませてくるよ!」
「うん、わかった。じゃあ、30分後にここで集合ね。」
「うん、わかった!」
そう言ってロンは走って行った
さてと、まずテレポステーションを探さないと!
走って行ったロンを見送り、セリナはハンターハウスを探すため街を歩き始めた。
ハンターハウスとは、トレジャーハンターのための、トレジャーハンター専用の国家施設である。
ここでは、国からの任務や指令を受けたり、民間の人たちからの依頼を受けたりすることができる。
トレジャーハンターが仕事をするには必要不可欠な施設である。
仕事のほかにも、泊まることができたり、食事をすることもできたり、武器防具、旅に必要な必需品を買ったり、傷を治すことができたり、ハンターハウスに行くだけで、大抵のことはできてしまう。
しかもほぼ無料でサービスをうけることができる。
ハンターハウスは国の都市に設置されており、ハンターハウスに行くには、そのまま都市に設置されているハンターハウスに直接行くか、街に最低一か所設置されてあるテレポステーションに行き、必要な手順を踏めば、瞬時にハンターハウスにテレポートすることができる。
テレポステーションは大抵町役場や市役所の近くに設置されているので、すぐに見つけることができる。
セリナたちがいた場所から役所は近かったらしく、セリナはほんの数分で見つけることができた。
まず、入って手続きをする。
テレポステーションの床には、魔法陣が描かれており、そこに自分専用の魔法陣をかくためのペンで魔法陣に自分の国名、名前を書き足す。そして、トレジャーハンターであると認識された場合、自国のハウスにテレポートすることができる。
セリナは手続きを済まし、トレジャーハンターと認識され、テレポートが開始された。
初めてだから緊張するなぁ
と思うのもつかの間、一瞬にしてハンターハウスに移動していた。
「ひ・・・広い・・・!!」
セリナはハンターハウスにあまりの広さに声をあげた。
見上げると天井があんなに遠くに見え、建物の端の部分は全くもって見えない
何階まであるの・・・、てかどんだけ広いの!!
セリナは広さに衝撃を受けつつも、自分の怪我を治すため看護室を探す・・・が、
看護室ってどこにあるのーーーーー!!
とりあえず、インフォメーションセンターで看護室の場所を聞くことにした
インフォメーションセンターはテレポートしたすぐそばにあるので
すぐに見つけ、聞くことができた。
「あの、看護室ってどこですか?」
セリナは案内係の女性に声をかける。
「看護室ですか?看護室は、ここのすぐ近くにありますよ。よかったら案内しましょうか?」
「ぜひぜひお願いしますっ!」
「こちらです。」
そういって、案内係の女性は歩き出した。
「あの、あなたってまだ訓練生ですよね?」
案内係の女性がセリナの制服を見るなり尋ねてきた。
「はい、そうですけど・・・」
「ここに来たのは初めてですか?」
「はい、そうです。ここって、すごい広いですね。想像以上でびっくりしました。」
セリナは辺りを見渡しながら言う
「監督官の人とは一緒じゃないの?」
「監督官は用事があるとかで、どこかに行ってしまいました。」
「そ・・・そうですか。初めてここに来る訓練生の方は、監督官と一緒に来るのが一般的なんですけど・・・。失礼ですが、監督官の名前は?」
と聞かれた瞬間、ノエルとの約束を思い出した。
◆◇◆
セリナがカフェを出ようとした瞬間
「ちょっと待った、一つ言い忘れてたことがあった。」
とノエルに止められた。
「なんですか?」
「ハンターハウスに行こうとか思ってるか?」
「はい、思ってます。怪我治したいですし・・・。それがどうかしましたか?」
自分のボロボロの体を見ながら言う。
「いいか、ハンターハウスに行くのはいいが、監督官の名前はばらすなよ。」
「ど、どうしてですか?」
いきなりのことに驚き理由を聞く
「どうしてもだ、絶対ばらすなよ!」
セリナはなぜばらしてはいけないのか不思議に思いながらも、ノエルに質問を投げかけた
「もし、ばらしたらどうなります・・・?」
「もしばらしたら、万年訓練生にしてやる。」
という恐ろしい返答が返ってきた。この人はやりかねないと思い
「絶対にばらしません。」
と心に強く誓いカフェを後にした。
◆◇◆
という約束を思い出したセリナは
「監・・・看護室はまだですか?」
と質問を受け流した
「こちらです。」
おおきく看護室と書かれたある大きな病院といってもいいすぎではないほど大きな看護室があった。
セリナは案内してくれた人に礼を言い、看護室に入る。
「どうなされました?」
看護室に入り、受付の女性に声をかけられた。
「あの、訓練中に怪我をしてしまいまして・・・。」
「わかりました。すぐ治療しますね。こちらへどうぞ」
受付の女性に案内されたのは、人一人が入れるカプセルみたいな容器が横に倒されたくさん並んでいる部屋だった。
「そこの容器に入ってください。容器に入ったらすぐに治療が始まります。」
「わかりました。」
セリナはおそるおそる容器に入り、寝転んだ。すると扉が閉まりふたをされた。
その瞬間薄い緑色の液体が流れ込んできた。
「きゃあ、なにこれ!?」
意味が分からず、受付の女性を見る。
「大丈夫ですよ。これは特殊な液体で、液体のなかでも呼吸できますし、服をぬらすこともありません。すぐ治りますから、そのまま横になってお待ちください。」
そう言うなり、受付の女性は元の受付に戻って行ってしまった。
するとたちまち、容器は液体に満たされた。
本当に大丈夫なのかな?
セリナはおそるおそる液体に中で息をしてみる。
「全然普通に息ができる!!しかもしゃべれる!!しかもなんだか気持ちいい!」
いろんなことに感動しながら、だんだん眠気に襲われてくる。
なんだか・・・眠たく・・なってきたな・・・
そしてセリナは眠りに落ちた。
「セリナさん、もう終わりましたよ。」
自分を呼ぶ声に反応し、目をゆっくり開ける。
「お疲れ様でした。怪我のほうは完治されましたか?」
「怪我・・・?あっ、私いつのまにか寝ちゃったんだ!」
すぐさま自分の包帯をとる
「な・・・治ってる!」
全身の包帯をとっても、すべてきれいに完治している。
「そうですか、では、気を付けてくださいね。」
怪我が完治したことに感動しながら看護室を出る。そして、ロイとの約束を思い出した。
「あっ、ヤバい!時間大丈夫かな・・・?」
時計を見てみると、ロイと別れてから25分が経っていた
「ぎりぎり大丈夫・・・かな?早く帰らないと!」
◆◇◆
「あっ、お姉ちゃんすっかり怪我治ったね!」
先に待ち合わせの場所に来ていたロンがセリナに気づき、声をかける
「うん、ばっちりだよ!それじゃ暗くならないうちに行こうか」
何とか待ち合わせの時間に間に合い、ロンもう大丈夫だとアピール。
そして、二人はようやく森へ向かった。