第二話 男の子の依頼
1話書いた後に、自分の書いた小説を読んでみると、すごく短かったので、2話は文字数を大幅に増やしてみました。1話書いたときは結構書いたつもりだったんですけど、いざ見てみるとあまりの短さにびっくりしました。本当にごめんなさい。
港町レスカ
「どうして助けてくれなかったんですかっ!!」
セリナの怒号がカフェの店内に響き渡る
怒号を向けられた本人、ノエルは眉間にしわを寄せ
不機嫌そうにしながらも、もくもくと昼ごはんを食べている
全く相手にされていないセリナはより一層大声で怒鳴った
「見てください!この全身傷だらけの体!!」
本人が言うように、セリナの顔は絆創膏だらけ足や腕は包帯だらけである。
どうしてこんな傷だらけになったかというと
不幸の始まりはセリナが訓練生として一歩踏み出したところから始まる・・・
◆◇◆
午前9:00
待ち合わせの場所はここであってるよなぁ・・・?
待ち合わせ場所に指定されたこの町に唯一、一つだけある噴水の前でノエルを待ちながら思う。
普通訓練生と監督官(トレジャーハンターAクラス)が会うときは
ハンターの拠点となるハンターハウスとよばれるトレジャーハンターしか利用することのできない施設で会うことが一般的である。
しかしノエルの場合、なぜか噴水の前で待ち合わせということになっている。
ハンターハウスに行くこともできないほど忙しいってことなのかな?
とセリナがあれこれ考えていると
トレジャーハンターの制服を着てフードを目深にかぶり、大剣を背負った男がこちらに近づいてきた。
「お前がセリナ・ロワールか?」
「はい、そうですけど・・・」
「俺がお前の監督官を担当するノエルだ。これから・・・」
「あなたがあのノエル様ですかっ?」
この男がノエルと聞いた瞬間、セリナは興奮し大声をあげた。
「馬鹿っ!!声が大きいっ!何のためにフード被ってるとおもってるんだっ!!」
セリナははっとして思わず口に手を当てたが、時すでに遅く・・・
「今、あの子ノエルって言わなかった?」
「えっ、あの有名なトレジャーハンターの?」
「顔が隠れててよく見えないんだけど・・・」
セリナとノエルの周りにはすでに多くのギャラリーが集まっていた。
「ちっ、気づかれたか・・・。行くぞ!」
「はっ・・・はい!!」
セリナに声をかけるなりノエルはギャラリーが集まって道をふさいでいるほうと反対方向に駈け出した。
セリナは慌ててノエルを追う。
セリナが全力疾走すること1時間
ようやく町を出ることができた。
「ハァ、ハァ、・・・ごめんなさい、ノエル様・・・。本物に会えて嬉しくって、つい大きな声をだしちゃいました・・・。」
「もういい、とりあえずその“ノエル様”っていう呼び方はやめろ!」
「では、何て呼べば・・・?」
「ノエル様以外ならなんでもいい。」
「それじゃあ、ノエル先輩って呼んでいいですか?」
「・・・好きにしろ。」
そう言いながら、被っていたフードを脱ぎ歩き出す。
わぁ、かっこいい・・・!!
写真集なんかで見るより全然かっこいい!!やっぱり生はちがうなぁ。
セリナがボーっとしながらついていくと
いきなりノエルが歩みを止めた。
「ノエル先輩、どうしたんですか?」
「お前の訓練生としての最初の訓練だ、この森に棲みついているウルフファングを倒してもらう。」
「えっ!!ウルフファングをですかっ!!っていうか、訓練?」
「そうだ、訓練だ。」
「いきなり訓練なんて、そんなことひとつも聞いてないんですけど・・・。」
ウルフファングは魔獣としては下級モンスターで、訓練生のモンスター戦訓練によく使われている魔獣だ。
セリナも訓練生になる前に、何度か戦ったことはあるが、1匹倒すのがやっとというレベルだ。
「1匹だけですよね?戦うのは・・・。」
セリナはおそるおそる聞いてみた。
「そんなわけないだろ。俺がみたところ、この森には10匹くらいいるぜ?」
想定外の返答にセリナの血の気がサッとひいた。
「じゅっ・・・10匹ですかっ!?絶対無理です!!1匹倒すのがやっとです!!」
「来たぜ。」
セリナがあたりを見回してみると、ノエルが言ったとおり10匹のウルフファングが2人の周り取り囲んでいた。
「じゃあ、訓練開始!!」
「ちょっ・・・ちょっと待ってくださいよ!!」
ノエルはそう言うなり、木の上に一瞬で上り、安全地帯に移動した。
「ノエル先輩!ずるいです!!それより、無理ですよ!こんな大群一人でなんて・・・」
セリナがノエルに抗議しているうちに、ウルフファングが次々に襲ってきた。
「きゃああああああああ!!」
それから今に至る。
◆◇◆
「もう少しで私、死ぬところだったんですからねっ!!ちょっと、聞いてるんですか先輩!!」
「あー、もう、うるせぇっ!!」
今度はノエルの怒号が響き渡った。
そして一気にまくしたてる。
「ウルフファング10匹ごときで、なにごちゃごちゃ言ってんだ!?あんなもん、訓練生でもみんな10秒で倒せるっての!!」
1秒あたり1匹倒すなんて無理に決まってるだろっ!!
セリナは心の中で毒吐いた。
「あんな雑魚で、あの程度じゃ、万年訓練生だな。」
ノエルのこの言葉が、セリナの心に深く突き刺さった。
「そ・・・そんな・・・。」
私ってそんなに弱かったの?訓練生候補生の中でも、けっこういい成績とってたんだけど・・・
やっぱり私まだまだなのかな・・・?
セリナが深く落ち込んでいると
「今日の訓練はこれで終わる。明日、俺が依頼を受けてるから、お前は俺のサポートをしろ。今日は残りの時間で、必要なもの買いそろえるなり、ゆっくり休むなり、好きにしろ。」
「はい。」
「俺は用事があるから、これから別行動な。夕方には戻ってくるから、ここで夕方の5時におちあおう。」
「はい、わかりました。」
ノエルと別れ、セリナは店を出た。その瞬間、どんっと衝撃を受け、尻もちをついた。
「いった・・・。」
衝撃を受けた方向をみると男の子が同じように尻もちをついていた。
「痛っ、いきなり出てくんなよ・・・。」
悪態をつきながら男の子はセリナを睨む。しかし、セリナを見た瞬間その目が大きく見開かれた。
「お姉ちゃん、もしかしてトレジャーハンター?その制服の色からして、下級クラスだと思うけど・・・。」
トレジャーハンターは制服の色でランクが分けられている。
トレジャーハンターのクラスは最上級のSクラス、上級クラスのA、Bクラス、中級クラスのC、Dクラス、下級クラスのE、Fクラスに分けられている。クラスが上にいくほど国から重要任務を任されるようになり、下にいくほど雑用を任される。
制服の色は、最上級のクラスは白、上級クラスは赤茶、中級クラスは緑、下級クラスは青となっている。
「うん、そうだよ。何、ちょっとその残念そうな顔は・・・、下級クラスだけど、すごく強いんだから。」
ノエルがいたら全力で否定することを口にした。
「えっ、お姉ちゃん強いの?」
「うん、強いよ。」
「じゃあ、僕のお母さんを助けるの手伝ってくれる?」
「お母さんを助ける?」
男の子は頷きながら続ける。
「お母さんは重い病気にかかってて、その病気を治すには、この町の郊外にある森の中に生えている薬草が必要なんだけど、その森には、危険な魔物がたくさんいて、一般人は森に入れないんだ。」
「危険な魔獣って、魔獣の名前は?」
「タイガーファング」
「タイガーファングぅ!?」
タイガーファングとは、ウルフファングと系列は同じ魔獣だが、ウルフファングよりはるかに強い魔獣である。
「タイガーファングは、ちょっと・・・」
「えぇぇ、お姉ちゃん強いんでしょ?助けてよ!!それにタイガーファングは夜行性だから今は安全なんだよ!」
「そっか、そういえば夜行性だったね。」
訓練生候補生として受けていた授業を思い出しながら言う。
タイガーファングは夜行性で、夜に行動する。日光が苦手で昼間は行動しない魔獣って習った気がする・・・
タイガーファングがいなかったら大丈夫だよね・・・。それにこの子相当困ってるみたいだし・・・
「よしっ、お姉ちゃんが一緒に行ってあげる」
「本当!!やったぁ!!」
そしてセリナは男の子と一緒に森に行くことになる。
そして森へ行ったことに後悔することとなる。