第一話 訓練生とAクラス
晴れ渡る空
心地いい風
暖かな春の日差しが降り注ぐ穏やかな森の午後
そこに一人の悲鳴が響き渡った
「きゃぁぁぁああーーーーーーー!!」
◆◇◆
「ふんふんふーん♪」
朝の6時
こんな朝早くから上機嫌に鏡の前で座ってメイクをしているのは
トレジャーハンター Fクラス、すなわち訓練生の
新米トレジャーハンター セリナ・ロワール
「今日は待ちに待ったノエル様に会える日だ!気合入れてメイクしなきゃ!」
ノエル様、私のこと気に入ってくれるかな~?
ノエル様の訓練生としてノエル様から指導を受けて、休憩時間にノエル様と話したりできるのかな?
それから、一緒にご飯も食べたり・・・
ノエル様ことノエル・キニアス 彼はこの世界では有名なトレジャーハンター
Aクラスのトレジャーハンターでトレジャーハンターとして優秀なだけでなく、ルックスも抜群
ノエルの写真集がださたりファンクラブが立ち上がるほどだ。
実力もトレジャーハンター最高位のSクラスの実力を持っているという噂もある
・・・という理由で国民の人気が高い、特に女性に
「セリナ!もうそろそろ時間よ。降りてらっしゃい」
一階からお母さんの声がする
その声でセリナははっと我に返った
いけないもうこんな時間だ!!
セリナは急いで階段を下り、玄関に直行する
玄関ではもうお母さんが出発の準備をしてくれていた
「気を付けてね。」
「いってきますっ!!」
心配そうなお母さんの顔を見ながら元気に返事をし
セリナは家を出て行った
「体には気を付けるのよ」
お母さんの声に驚き後ろを振り返る
家の外まで出てきてくれたらしい
これからしばらく会えなくなるな
少し寂しいと思う気持ちを抑え
「お母さんこそ体に気を付けてね」
心配させないために元気よく手を振り
家をあとにした
そんな幸せな日の朝のひと時とは一転し
午後から地獄に変わることになる
◆◇◆
「きゃぁぁぁーーーーー!!」
森の中で一人の悲鳴が響き渡る
「せんぱーーーい、助けてくださーーい」
セリナが逃げている後ろからウルフファングという
狼に似た魔獣が6匹ほど追いかけてきている
「ぎゃーぎゃーうるせえ、たったの6匹だろ?ほら頑張れ、頑張れ」
セリナは声のしたほうを見上げる
そこには安全地帯である木の上でだるそうに
手を叩きながら見下ろしているノエルがいた
「ウルフファング6匹なんて、一人では無理ですよっ!!」
襲い掛かってくるウルフファングを次々にかわしながら
ノエルに助けを求める
「無理じゃねぇ、無理なもんでも気合だ、気合。それに10匹のうち4匹も倒したんだろ?」
「たったの4匹ですっ!6匹なんて無茶ですよ!!実戦はまだ初めてなのに・・・」
ノエルに抗議している最中にウルフファングが2匹束になって飛び上がり
セリナに襲い掛かってきた
「ひぃっ!」
悲鳴を上げながらも、杖と槍がひとつになったセレナの武器
ランスロッドの槍の部分で2匹を一刀両断する
しかしまだ4匹セリナの周りで円を描きながら
襲い掛かるタイミングを図っている
ここまでの戦いでセリナはすでに相当体力を使っており
ウルフファング4匹を相手にする体力は残っていない
これはマズイ。次襲い掛かられたら終わりだ
命の危機を感じ、助けを求めようと
ノエルの方を見上げたら、怒りを通り越し落胆した
「ちょっと何寝てるんですか!せんぱーーい」
そんなセリナの悲痛の叫びも届かず
ノエルは気持ちよさそうに木の枝に横になって眠っている
こんなに大声で叫んでも聞いてないし・・・
もうだめだと思ったとき
残りの4匹のウルフファングがいっせいにセリナに襲い掛かってきた
「きゃぁぁぁあああーーーー」
もう何度目かもわからない悲鳴が森の中に響き渡った