番外編 やらかし兄弟、再び--。
夜。
「今回の任務は——潜入だ」
橘の一言で、空気が張り詰めた。
「対象はこの屋敷。警備は厳重だ。正面から行けば確実にバレる」
淡々と説明が続く。
「よって、久遠蒼真、黒瀬蓮、沖田奏、藤堂誠4名で裏から侵入——」
「了解っす」
「任せてください」
「は?」
蒼真と奏が即答し、蓮は嫌な予感しかしなかった。
誠は静かにため息をついた。
数分後。
屋敷正面
「……で、なんで正面に立ってんだよ」
誠が真顔で言った。
「いや、潜入ってまず“正面の様子確認”大事だろ?」
蒼真は堂々としている。
「声デカい時点でアウトだろ」
「安心しろ、バレねぇ」
ガチャッ
門が開いた。
「誰だ」
「ほらバレてんだろ!!!!」
誠のツッコミが夜に響く。
「ちょっと待て」
低い声だった。
蓮が蒼真の襟首を掴んで引き戻す。
「潜入だぞ」
「分かってるって」
「分かってねぇからこうなってんだろ」
「いや、今のは想定外で——」
「想定内だわ」
即答だった。
「まぁまぁ」
奏が一歩前に出る。
「ここはプランBでいきましょう」
「プランBなんてあったのか」
誠が呟く。
「今作りました」
「おい」
次の瞬間。
パチン、と何かが弾ける音。
「うわっ!?」
屋敷裏側で小さな爆発が起きた。
「陽動です」
ドヤ顔の奏。
「いや規模デカすぎだろ!!」
誠が叫ぶ。
「今のうちに行くぞ」
蓮が低く言う。
今度こそ別の場所から侵入——
のはずだった。
「お邪魔しまーす」
「だからなんで声出すんだよ!!」
蒼真が普通にドアを開けた。
「鍵開いてた」
「開いててもだめなんだよ!!!!」
バタバタと足音が近づいてくる。
「侵入者だ!」
「ほら来た!!」
「チッ……!」
蓮が前に出る。
「お前ら、下がってろ」
「お、やる気だな」
「誰のせいだと思ってんだ」
数分後。
「……なんで普通に戦闘になってんだよ」
誠は遠い目をしていた。
「潜入任務とは」
「知らんな」
蓮が即答した。
「いやぁ、楽しかったな」
蒼真が笑う。
「楽しくねぇよ!!」
誠が即ツッコミ。
「結果的には情報も取れましたし」
奏が満足げに言う。
「結果論で語るな」
蓮は深くため息をついた。
「……お前らと潜入任務なんて、二度とやらん」
その言葉に——
「えー」
「次もいけますよ」
「だからやらねぇって言ってんだろ!!!!」
誠だけは蓮に同意した。
夜空に、怒声が響いた。
——数十分後。
「……で?」
低い声が響いた。
4人の前に立つのは——橘だった。
「潜入任務、だったよな?」
沈黙。
「……はい」
誠が小さく答える。
「結果は?」
「……正面から侵入して、陽動して、戦闘になりました」
「誰が原因だ」
「「「こいつです」」」
3人の指が一斉に蒼真を指した。
「おい待て」
「声出して門開けた人が何言ってるんですか」
「鍵開いてたんだよ!!」
「だからって“お邪魔しまーす”はねぇだろ」
「そこは同意です」
誠が頷いた。
橘は静かにため息をついた。
「……全員、前に出ろ」
嫌な予感しかしない。
「一列」
素直に並ぶ4人。
「目、閉じろ」
「え?」
「いいから」
次の瞬間。
ゴンッ
「いっ!?」
「痛っ!!」
「ぐっ……!」
「ちょ、まっ……!」
順番に、綺麗に拳が落ちた。
蒼真だけが一瞬よろけた。
「潜入って言葉、もう一回調べてこい」
冷たい一言だった。
「……すいません」
4人揃って頭を下げる。
「次同じことやったら」
橘が静かに言う。
「一発ずつじゃ済まさねぇからな」
「「「「はいっ……!」」」」
帰り道。
「……お前らのせいで殴られたんだが」
蓮が呟く。
「僕もなんですけど?」
誠が即返す。
「まぁまぁ、結果オーライだろ」
「よくねぇよ」
「次はもうちょい静かにやります」
「やらねぇって言ってんだろ!!!!」
夜空に、3度目の怒声が響いた。




