番外編1 戦いの後で
任務が終わり、静けさが戻った夜。
張り詰めていた空気はほどけ、どこか気の抜けた空間が広がっていた。
誰ともなく、ぽつりと呟く。
「……飲むか」
その一言で、すべてが決まった。
「……こういうの、初めてです」
少しだけ緊張した声で、陽葵はジュースのグラスを持つ。
「……じゃあ、まあ」
橘がグラスを持ち上げる。
「一応、任務完了ってことで」
「雑じゃね?」
蒼真がすかさず突っ込む。
「いいんだよ、終わったんだから」
軽く肩をすくめて、橘は続けた。
「――乾杯」
「かんぱーい!」
グラスが賑やかに触れ合った。
最初は、穏やかな時間だった。
誰もが少し疲れていて、言葉も少ない。
ただ、それでも。
――この空気は、嫌いじゃなかった。
「でさぁ」
数分後。
その静けさは、あっさり壊れた。
「お前あの時、絶対判断遅かったよな?」
「は?」
蓮の声が一段高くなる。
「いや、遅かっただろ。俺フォロー入れなかったら普通に終わってたぞ?」
「いやいやいや、あれは状況的に――」
「言い訳きた」
「言い訳じゃねぇ!」
――始まった。
陽葵は苦笑しながら、そのやり取りを見つめる。
さっきまでの静けさはどこへやら。
今は、ただ騒がしい。
でも、それがどこか心地よかった。
「…まったく…うるさい奴らだ」
低い声。
橘だった。
そう言いながらも、グラスに口をつける。
少しだけ、頬が赤い。
……珍しい。
「橘さん、酔ってます?」
「酔ってない」
「絶対酔ってるじゃないですか」
「酔ってない」
即答だった。
「いや、でも奏が未成年で良かった」
橘が呟く。
「……確かに」
蓮が苦笑する。
「絶対面倒なことになるだろ」
と蒼真。
「いや、お前も変わんねぇ」
と蓮。
「間違いないですね」
天音も笑った。
静けさは、戻らなかった。
でもそれでいい。
それで、よかった。
「……でも、楽しいです」
ぽつりと、こぼれた言葉。
―-数分後。
「テキーラ、20杯目ぇぇぇぇ!!!」
完全に出来上がっている蒼真。
「終わりか、れーーーん!!!」
「お前が終わりじゃ、ぼけぇ!!!」
と、蓮も出来上がっている。
2人は飲み比べをしている。
「…ねぇ、大和ぉぉぉ!あんな吹き飛ばされるなんて、聞いてないよぉぉぉ!!」
泣き出している天音。
「天音、泣くな」
「だって、俺、最強って言ってたじゃん!」
天音は泣き上戸だった。しかも、大号泣。
「…総統、辞めたい」
ぽつりと呟く。
「それは、ダメ」
と橘。
そんなバカ騒ぎをする大人たちを影から撮影する人物がいた。
「これは---共有案件ですね」
にやにやと奏は撮影を続けていた…。
この後の悲劇をまだ、誰も知らない。




