第6話 俺の魔法が効かないだと!?
セレスティア様の顔が赤い。
昨日よりも赤い。
むしろ風邪は悪化している。
俺の魔法は万能だ。
どんな病も治せる自信がある。
かつて黒死病に襲われた街を俺は治癒の魔法で救った。
黒死病の蔓延を防いだのだ。
なのに、セレスティア様の顔が赤い。
あの目。
病気だ。
俺を見るセレスティア様の目は恍惚としている。
分かっている。
それは失望の眼差しだ。
風邪すら治せない俺に、セレスティア様はがっかりしているのだろう。
その証拠に、俺と目が合った瞬間、セレスティア様は目を逸らすのだ。
俺の顔も見たくないのだろう。
それにしても可哀想なセレスティア様。
きっと風邪で苦しんでいるに違いない。
かつて救世主と呼ばれた俺はセレスティア様を癒すことが出来なかったのだ。
理由は分かっている。
俺の力が弱くなったからだ。
魔王を倒したことに慢心して魔法の練習を怠った。
なんという不覚。
俺はセレスティア様を守ると誓った身。
だというのに、俺はなんと無力なんだ。
おっぱいを三度も救えなかったのに加えて、俺はセレスティア様が風邪で苦しんでいるのを助けることもできなかった。
しかもその原因は俺の風邪がうつったからというのも皮肉なものだ。
ふふっ。
堕ちたな、レオン。
お前の力はもはやここまでだ。
勇者?
笑わせるな。
騎士としての役目を果たせない上に、風邪までうつすなんて、俺は果たしてセレスティア様の騎士としてふさわしいのだろうか。
しかし、騎士という地位を返上するつもりはない。
俺は生涯セレスティア様を守ると誓った身。
ならば、精進するのみ。
俺は爆炎烈を放った。
さらに放った。
放ちまくった。
魔法の威力が低下したというのなら、努力して取り返すのみ。
セレスティア様を守るためなら、俺は死力を尽くす。
全てはセレスティア様のため。
敬愛するセレスティア様のため。
何があってもセレスティア様を守れるように、そしてセレスティア様のおっぱいを守れるように。
もう二度とセレスティア様のおっぱいを危険に晒さないためにも、俺は強くならなきゃいけないのだ。
爆炎烈を放つ。
さらに放つ。
魔力の底が尽きるまで放つ。
かつて魔王軍を一撃で一掃したこの魔法。
今は頼りないように感じる。
俺は弱くなった。
おっぱいさえ守れないほど弱くなっていた。
ふふっ。
堕ちたものよのう、レオン。
爆炎烈を何百回放ったにもかかわらず、魔力が尽きる気配が一向にない。
理由は分かっている。
俺の魔法の出力が弱くなったからだ。
俺は平和ボケしていた。
魔王を倒したことで自惚れて、魔法の練習を怠っていたのだ。
常人なら一発放っただけで魔力切れで死にかける羽目になるこの魔法。
俺はそれを1000発以上放ったというのに、めまいすら感じない。
理由は分かっている。
それは俺の魔法の出力が10000分の1以下まで低下したからだ。
堕ちたな、レオン。
全盛期の俺は北方大陸を一発で溶かしたというのに。
今は。
このざまだ。
ほんと、情けない……。
どういうことだ。
なぜ人々が逃げ惑っている。
助けねば。
たとえ力が弱まったとしても、俺は腐っても勇者だ。
人々を脅威から守るのが俺の使命。
さあ、行け。
俺は爆炎の中を通って、街へ向かった。
◇
ヴェナスの街は半壊していました。
それもこれもあの勇者のせいです。
ヴェナスに着いた次の日、なぜかレオン・ヴァルディスは海に向けて魔法を放ちまくっていました。
海面は上昇し、津波が街を襲う。
人々は逃げ惑い、行き場を失う。
こんちくしょうがっ!!!!!
おっと、失礼しました。
少し取り乱してしまいましたね。
私はこの勇者の本性を見抜きました。
自作自演、この一言に尽きます。
私とセレスティア様が滞在している宿屋はレオン・ヴァルディスの結界によって守られています。
セレスティア様は困惑の目をしていました。
なぜこのようなことが起きているのか分からない様子です。
しかし、私には分かります。
これはレオン・ヴァルディスがセレスティア様の好感度を上げるための芝居だと。
自分で災いを起こしときながら、さもありげに自分がセレスティア様を守っているのだと演じているのです。
滑稽。
この言葉しか思い浮かびません。
セレスティア様はバカじゃありません。
そんなの見抜いたに決まっています。
もはや私が出る必要もありません。
きっとセレスティア様はこの勇者を見限ったはず。
もはや、騎士を解任される日も近いかと。
愉快だわ!!!!!
おっと、失礼しました。
少々気が早まっていたようです。
にしても、この勇者は何をやっているのです?
津波の前に立ち、なんらかのスキルでそれを防いでいるのです。
おかげで死傷者は出ませんでした。
分かりましたわ。
これもやつの自作自演。
かつて世界を救ったと言われているあの勇者。
それもきっとレオン・ヴァルディスが自分で武勇伝を吹聴しているだけにすぎない。
きっと自分で魔物の軍勢を率いて、人間の街を襲わせたのでしょう。
なんという下劣な。
この瞬間、私はすべてを悟りました。
レオン・ヴァルディスこそ魔王なのだと。
きっとわざと消えたふりをして、自分が魔王を倒したと宣伝しているに違いありません。
その狙いは、セレスティア様。
セレスティア様の騎士になるためになんと卑怯なことをするのですか!?
私は誓いました。
きっとレオン・ヴァルディスの魔の手からセレスティア様を守り抜くと。
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