第3話 リリアの憂鬱
私の名前はリリア。
小さい頃から聖女――セレスティア・リリフォード様に仕えているメイドです。
そんな私ですが、最近は悩みが一つあります。
それはセレスティア様に騎士ができたことです。
聖女様は16歳になると、必ず騎士を持つ決まりになっています。
そして、それは絶対的な強さをもつ人間でなければいけません。
それで選ばれたのは、勇者のレオン・ヴァルディス。
彼はたった一人で魔王を倒した英雄であり、この国の希望でもあります。
この目で見たことがありませんでしたが、相当の美男子とも聞きます。
わずか16歳で、人類の頂点に立った男。
彼こそセレスティア様にふさわしいお方だと、私は思っておりました。
そしてやって来たのが騎士様の任命式の日。
この時、私は初めてレオン・ヴァルディスという男を見ました。
白髪の少年。
力強い眼差しに鋭い眼光。
あれ?
なんか重複しているような気がしますが、まあ問題ないでしょう。
とにかく、彼は勇者の名に恥じぬ素晴らしい男だと、私はこの瞬間心に刻んだのでした。
謁見の間の下段に平伏し、聖女様を待つレオン・ヴァルディス。
そんな彼の横顔は覚悟に満ち溢れていました。
勇者にしてこれから聖女様の騎士になる男。
これくらいの気概を持っていただかないと困ります。
彼は白い燕尾服を纏っていました。
頭を下げたまま、銀色にも見える前髪を垂らしています。
一言でいうと、とても、かっこいいです。
私はその時妄想に耽っておりました。
この人が私の騎士様だったらどれほど良かったのでしょうか。
そんなセレスティア様への羨望が絶えませんでした。
そして、壇上にお越しになったのは、聖女――セレスティア様でした。
セレスティア様は白いローブに身を包まれていて、神聖で厳かな雰囲気を纏っていらっしゃいます。
「面を上げてください」
そんなセレスティア様が静かにレオン・ヴァルディスに告げます。
ああ、なんとお似合いの二人なのでしょう。
私は見とれてお――うん? なにか様子がおかしい。
いや、待ってください。
きっと私の見間違いなのでしょう。
レオン・ヴァルディスはセレスティア様の胸を凝視していませんでしたか?
まさか、ね。
史上最強の勇者と謳われているレオン・ヴァルディスに限って、そんな邪な気持ちは抱かないでしょう。
ええ、きっと私の勘違いです。
勘違いではありませんでした……。
ことある毎に、レオン・ヴァルディスはセレスティア様のおっぱ――失礼いたしました。
胸をチラチラと見ていました。
チッ。
これだから男は。
ゲスい。
ゲスすぎます。
まじでぶん殴ってやりたいですね。
儀式の最中、セレスティア様のおっぱ――ではありませんでした。
胸を食い入るように見ているあの男は今にもヨダレが垂れそうです。
これだから童貞はよっ!!!!!
おっと、失礼いたしました。
つい心の声が漏れてしまいましたね。
私は聖女様に仕えるメイド。
心も清くなければいけません。
これからは気をつけましょう。
あっ、危ない!
セレスティア様が階段から転げそうになりました。
急いで駆け寄ろうとしたのだが、さすがは勇者といったところか、レオン・ヴァルディスは見事にセレスティア様を抱きとめていました。
あれ?
なんか様子がおかしいです。
セレスティア様のおっぱ――胸がレオン・ヴァルディスの腕に挟まったのでした。
なんとうらやま、じゃなくて、けしからんことなのでしょう。
私だってセレスティア様のおっぱ――胸を触ったことがありませんというのに。
「あの……い、いま……当たって、ましたよね……?」
「……いいえ、俺には触れることができませんでした……不甲斐ないかぎりです」
「さ、触りたかったのですか!?」
「ええ、もちろんです。貴女の全てを受け止めるつもりでいました」
チッ。
清々しいほどのクズ。
そんなに堂々とセレスティア様のおっぱ――胸を触りたいという人間はこの国ではほかにおりません。
さすがは勇者。
ヤりますね……。
それから私はしばらくレオン・ヴァルディスという男を観察していました。
彼は毎朝剣を振っていました。
とても熱心で努力家のように見えます。
しかし。
なんでおめぇはいつもセレスティア様のおっぱいばっかガン見してんだよ〇すぞおらっ!!!!!
おっと、失礼いたしました。
私は聖女様に仕えるメイド。
心も清くなければいけません。
あれ?
なんかこの前も同じようなことを思ったような……。
まあ問題ないでしょう。
人は過ちを繰り返すもの。
もっとも、これくらいは過ちに入りませんが。
しかし、この男――レオン・ヴァルディスはやはり別格でした。
セレスティア様と一緒にいる時、彼は常に覇気を纏っていました。
彼をぶっ飛ばしたいと思う私を思いとどまらせるほど、レオン・ヴァルディスは尋常ならざるオーラを放っていました。
またです。
また彼はセレスティア様のおっぱ――胸をガン見しています。
セレスティア様は少し天然が入っているので、気づいてないかもしれませんが、メイドの私の目はごまかせません。
はあ。
いつになったらこの勇者を駆除できるのか、私は今現在憂鬱な日々を過ごしております……。
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