第17話 それぞれの想い
レオン・ヴァルディスはセレスティア様の部屋から出てきました。
妙にスッキリした顔をしています。
分かっています。
二人はヤったのですね。
なんといううらやま……いいえ、けしからんことでしょう。
しかし、見上げたものです。
最初は意気地無しと思っていたけど、ヤるときはヤる男ではありませんか。
しかも、手を回してあの王子を廃嫡に追い込むなんて、一体どんな手を使ったのかしら。
さすがは勇者。
恐るべし。
続いてセレスティア様も出てきました。
頬を染めています。
分かります。
あれは恋する乙女の顔ですね。
さぞかしレオン・ヴァルディスのテクがうまかったのでしょう。
私も一度体験してみ――いいえ、確かめたいのです。
どれほど凄いのでしょうか。
想像するだけで股間が濡れました。
しかし、私が恐れていたことは起きませんでした。
セレスティア様の聖力が衰えたどころか、むしろ増強しています。
あの男は一体なにをしたのでしょう。
―――ッ!?
分かりました。
分かりましたわ。
レオン・ヴァルディスはセレスティア様の身体を乗っ取ったのです。
私の目は誤魔化せません。
セレスティア様から溢れる魔力の奔流は、レオン・ヴァルディスのそれと同じ色をしています。
つまりはそういうことですね。
今のレオン・ヴァルディスの身体はセレスティア様の傀儡で、本体はセレスティア様の中にいるのです。
セレスティア様を救わないとなりません。
すべてはセレスティア様の魂を弔うためです。
これ以上レオン・ヴァルディスにセレスティア様の身体を冒涜させてはいけません。
私はセレスティア様を救うことを決意しました。
◇
ぐぬぬぬぬぬっ。
レオン・ヴァルディス様が。
レオン・ヴァルディス様がセレスティア様とヤった。
許せない。
わたしというものがありながら、浮気するだなんて。
しかし。
そう思うと、股間が濡れていた。
わたしは気づいてしまった。
認めないわけにはいかない。
わたしは興奮しているのだ。
寝盗られ。
とでもいうのだろうか。
わたしはいま快感で身が震えている。
愛する男をほかの女に奪われたというのに、わたしは興奮しているのだ。
分かったわ。
これも全てレオン・ヴァルディス様の意思なのだね。
わたしを満たすため。
淫魔であるわたしの欲望を満たすため。
ああ、レオン・ヴァルディス様はなんとわたしを愛してくれているのだろう。
しかし、レオン・ヴァルディス様は早漏だ。
わたしにもう(女とは)しないと言ったはず。
だとすると。
セレスティア様との行為は偽装に違いない。
それはつまり、わたしを(寝とられの快感)でイかそうとしているということなのだろう。
(早漏だから物理的に)わたしを満たせないと考えての苦肉の策。
なんと愛らしいレオン・ヴァルディス様。
それほど、わたしが可愛いのだね。
その証拠にレオン・ヴァルディス様はわたしを真剣に見つめている。
それこそ愛の証。
ああ、わたしはなんて幸せ者なのだろう。
◇
ルミナリアというメイドが俺を見つめている。
理由はもちろん分かっている。
彼女はまだ俺に自分を〇してほしいと思っているのだ。
その証拠に、彼女の目は虚ろだ。
しかし、彼女は身震いしている。
(死を望んでも、)やはり死ぬことが怖いのだろう。
矛盾した感情を抱く。
哀れな女の子。
彼女のためになにかしてあげたい。
幸い俺の力は回復したようだ。
だから俺は彼女に精神安定の魔法をかけた。
◇
心が安らいでいく。
自分が幸せ者だと自覚した途端、わたしの心が満たされた。
自分のことを不幸だと思っていた。
左腕を失い、路頭に迷っていた。
辛い日々だった。
レオン・ヴァルディス様に復讐しようと思う気持ちだけがわたしの命を繋いでくれたのだ。
しかし、いまはどう。
セレスティア様はわたしを拾ってくれて、働く場所をくれた。
わたしがミスしても全然叱りもしない優しい聖女様。
それどころか、フォローまでしてくれる。
そんなセレスティア様を、わたしたち魔族は〇そうとしていたなんて信じられない。
不思議とあそこの疼きが止まった。
満たされないわたしの渇き。
それがセレスティア様とレオン・ヴァルディス様によって解放されたのだ。
しかし。
虚無。
欲望を失ったことで、わたしの心は虚ろになった。
初めて知った。
際限の無い欲望に悩まされていたのだけど、いざ失うとなると空虚なものだ。
わたしはセレスティア様とレオン・ヴァルディス様の傍を離れた方がいいのだろうか。
◇
なぜだ!?
なぜ彼女の目がさらに空虚なものになっている!?
それほどの(俺の魔法でも治せない)絶望が彼女の心の中にあるというのか。
俺は自惚れていた。
自分はこの世界でもっとも《《不幸》》な人間だと思っていた。
しかし、それは他人と今まで触れてこなかったからだ。
井の中の蛙。
俺は人間というものを理解していなかった。
未熟だ。
俺はまだまだ未熟だった。
今まで世界を転々としていた。
いつしか俺はこの世の全てを理解した気でいた。
だが、どうだ。
蓋を開けてみれば、俺はこの少女の絶望すら理解できない。
同じ側の人間だと思っていたが、それは驕りだった。
これからもっと、もっと人間と《《触れ》》ねばならない。
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