第10話 縄、縄、縄
俺は一心不乱に剣を振るった。
振るって。
振るって。
振るって。
だが雑念は消えない。
あのルミナリアというメイド、只者ではない。
セレスティア様のおっぱいを攻撃したあの魔法、わずかだが俺の【多重結界】と【絶対結界】を貫通した。
俺の力が弱まったとはいえ、【多重結界】はともかく【絶対結界】は破れないはず。
なのに、ルミナリアの魔法はセレスティア様のおっぱいを変形させた。
恐ろしい。
分かっている。
彼女は俺と《《同じ》》側の人間だ。
かつて想像を絶するほどの絶望を味わって強くなったのだ。
ただ、精神はまだ未熟。
あの夜以来、彼女は常にロープを持ち歩いている。
隙あらば首を吊るつもりなのだろう。
一体どれほどの絶望が彼女をそうさせているのか。
想像ができない。
彼女は勇者ではない。
普通の《《人間》》だ。
だから、未熟だと責めるのは筋が違う。
俺に何ができるのだろう。
俺はセレスティア様の騎士。
セレスティア様に忠誠を誓った存在。
なのに、ルミナリアというメイドのことが気になってしまう。
彼女を〇めようとしたからなのだろうか。
自責の念。
これに尽きる。
セレスティア様を守るためとはいえ、俺は一人の少女を手にかけようとした。
彼女は俺に〇して欲しいと懇願してきた。
それほど思い詰めている。
俺に出来ることはないか。
今の力が弱まった俺に果たして彼女のために出来ることはあるのだろうか。
◇
わたしは目覚めてしまった。
そう、あの夜レオン様によって縄で縛り付けられてしまってから、わたしの身体は覚えてしまった。
あの快感。
忘れられはしない。
身体の自由を封じられたことによって研ぎ澄まされた感覚。
今でも思い出すだけでイってしまいそうだ。
レオン様は酷いお方。
わたしにその快感を覚えさせときながら、それから一向にわたしを縛り付けようとしない。
わたしが露骨に縄を持ち歩いているというのに、彼はただ冷たい目でわたしを見つめるのみ。
分かっているわ。
それは彼なりの優しさ。
わたしを焦らしているのだろう。
わたしの悲願する顔を見て、楽しんでいるのだ。
でもいいの。
それも――
気持ちいい♡
ああ、わたしはなんて変態になってしまったのだろう。
父が生きているなら、今のわたしを見てどう思うのだろう。
きっとわたしの成長を喜ぶはず。
淫魔として誇らしいのだと。
わたしを褒めてくれるだろう。
わたしはもうレオン様なしでは生きていけない体になった。
一人の男にのみ身体を捧げる淫魔。
わたしはなんと純情で可憐な少女なのだろう。
あぁ、身体が疼く。
縄。
縄。
縄。
縄が欲しい。
もっと強く縛り付けて欲しい。
あぁ、レオン様よ。
いつになったらまたわたしにご褒美をくれるのだろうか。
◇
ルミナリアさん。
私と同じセレスティア様のメイドになった女の子です。
最近彼女の様子がおかしい。
常にロープを持ち歩いているのです。
分かります。
彼女もレオン・ヴァルディスを警戒しているのでしょう。
なにかあれば縄でレオン・ヴァルディスを縛り付けて無力化するつもりのはずです。
最近、レオン・ヴァルディスはセレスティア様の胸だけでなく、ルミナリアさんのこともずっと見つめているのです。
なんといういやらしい男。
ハーレムでも築こうというのでしょうか。
ルミナリアさんも美少女なのです。
真紅の髪。
つぶらな瞳に丸っこい目
あれ? なんか重複しているような気がしますが、まあ問題ないでしょう。
そんなルミナリアさんを、あのいやらしい男が狙うのも当然なことなのでしょう。
しかし。
何もかも上手くいくと思わないことです。
レオン・ヴァルディスの正体は魔王。
でも人間の力を舐めてもらっては困ります。
思い上がるなよ!!!!!
おっと、つい感情が高ぶってしまいました。
メイド失格ですね。
私は強くならなくちゃいけません。
セレスティア様とルミナリアさんを守るために私が立ち上がらなければなりません。
◇
最近、ルミナリアちゃんの様子がおかしい。
彼女は常にロープを持ち歩いてる。
これも全部レオン様のせい。
理由はおおよそ見当が付く。
彼女は私の恋心を見抜いたのでしょう。
そのために私とレオン様をくっつけようとしている。
「……しくっ」
感動で涙が出た。
私は聖女。
決められた相手と結婚する運命。
しかし、ルミナリアちゃんはそんな私の運命を変えようとしてくれている。
その優しさが眩しい。
それも全部彼女がヴェナスの路地裏で生活していたからなのでしょう。
権力に屈しない思い。
なにも頼らずに一人で生きてきた彼女だからこそ、持てる勇気なのだ。
だから、彼女は私の立場を理解した上で私とレオン様を縛りつけようとしている。
既成事実を作らせるために。
「……うぅっ」
涙が止まらない。
まだ出会ってまもないのに、そこまで私のことを思ってくれるなんて。
彼女を連れ帰ってほんとに良かった。
私は得難いメイド、いいえ、親友を得たのだ。
気持ちを誰かに理解してもらえるのはこんなに心が救われることだとは思わなかった。
ほんとに、ほんとに、私はなんて恵まれているのでしょう。
ルミナリアちゃん。
次会ったら礼を言おう。
そしていつか、聖女とメイドの関係を超えて語り合おう。
いつでも、レオン様と結び付けてくれるのを待っています。
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