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第4話 魔王と面談

青の間で待っていたのは、

恐怖ではなく、懐かしさ。


勇者とは違う

もう一つの「役割」と向き合う面談が始まります。

第4話 魔王と面談


青の間は、冷たかった。


赤の間のような温度も、重さもない。

青の間と言っているのに、どこまでも暗い。


闇の中で、ただ座っている感覚。

椅子が止まる。


俺は、思わず目を閉じた。


……怖い。


気配だけが、ある。


「遅かったな」


声は、前から聞こえた。


目を開けると、そこに“男”が立っていた。

黒い外套。

角と翼。

暗闇に溶けて、輪郭が曖昧だ。


人間ではない。

そう断言できる何か。


だが、目だけが異様に優しかった。


「……ま、魔王さん……ですか?」


喉がひりつく。


男は、口元だけで笑った。


「ああ。そう呼ばれている」


拍子抜けするほど、落ち着いた声。


「安心しろ。

 ここでは、世界を滅ぼしたりしない」


……しない、のか?


「お前が、裕之(ひろゆき)か。

 よく来たな。……フフ、何か飲み物はいるか?」


……は?


俺は、思わず瞬きをした。


「なーんてな!

 ガハハ!久しぶりだな、裕之(ひろゆき)

 二年ぶりか?」


頭が追いつかない。


久しぶり?

知り合い?

俺の友達に魔王なんているはずがない。


男は、俺の名前を自然に呼んだ。


「ああ、まだ分からないか。

 オレだよ」


胸が、妙にざわつく。

懐かしいような、嫌な感覚。


寺嶋てらじま 亜久滋あくじ


……まさか。


魔王が、高校の部活の先輩?


二つ上の先輩。

通称、あっくん先輩。


高校一年の頃

自然研究部に入った俺は、

あっくん先輩に世話になった。


優しいが、校内では評判の悪い男子生徒。

だが、異様に強い人。


「……あっくん、先輩?」


思わず立ち上がる。


「久しぶりだな。

 オレ様もな、卒業後に受験したんだが……

 落ちたんだ」


ガハハ、と豪快に笑う。


「たぶん、お前と同じだ」


頭が痛くなってきた。


見た目は完全に魔王。

でも、中身は昔の先輩のまま。


思わず、足元の黒猫を見る。


(助けを求めるな)


そう言わんばかりに、クロはそっぽを向いた。


恐る恐る、先輩を見る。


……やはり、人間ではない。


「あっくん先輩……

 先輩も、転生したんですか?」


「ん?ああ。

 フレンの野郎に聞いたな?

 勇者面談が先だったもんな」


部屋が、ぐらりと揺れた。


雷のような低い音。

先輩の感情と連動しているようだった。


「い、いや!特に何も!聞いてません。あ、

 それより先輩、俺……進路が決まらなくて」


闇は、静かに落ち着いた。


「なぁ裕之(ひろゆき)

 お前のパラメータは“特殊”だ」


「特殊……?」


「簡単に言うとだな」


先輩は、少し真面目な声になった。


「世界の穴を埋める存在だ」


「普通は一人一役。

 役割を果たせば、次が来る」


「だが、稀に……

 “終わり”になれる奴が現れる」


終わり。


「お前はな、

 何にでもなれるし、

 何にでもなって、世界を終わらせられる」


ガハハ、と笑う。


「スーパーヒーロー裕之(ひろゆき)、だな」


笑えなかった。


先輩は、玉座に腰を下ろし、俺を見る。


「今なれるのは二択だ。

 勇者か、魔王か。」


淡々と告げる。


「オレは……疲れた」


その声は、本音だった。


「二年戦っても、世界は勇者を選ぶ。

 理は変えられなかった」


青い目が、俺を射抜く。


「だから頼む。

 オレを超えてくれ」


まただ。

俺を超えてくれって。


背筋が、ぞくりとした。


「お前は、希望だ」


「あっくん先輩……

 俺、決められないよ」


「分かってる」


鼻で笑う。


「オレとフレンは、

 二百八十一回戦ってる」


同じ数字。


「勝ったことは?」


「一度もない」


悔しそうではなかった。


「勝ち負けじゃない。

 同じ鎖につながれて、ずっと世界は続いていく。」


鎖。

フレンの言葉と重なる。


「役割を演じる限り、終われない」


先輩は、俺に近づく。


近い。

ちょっと近すぎる……


「だがな」


低い声。


「オレは、この役割を利用している」


……利用?


「世界を壊して、負けて、見極めた」


青い目が笑う。


「世界の仕組みを…な」


ぞっとした。


裕之(ひろゆき)


「お前は、勇者にも魔王にもなれる。

 だが……」


一拍。


「両方になれる存在なんだ。」


頭が真っ白になる。


「禁忌だ。

 進路調整局が最も恐れる選択だ」


床が歪む。


「黒猫……。」


魔王は、黒猫のクロを見た。


「……やはり、そこにいたか」


(こいつに選ばせるな)


クロの声は鋭かった。


(選べば、失う。

また、やりなおしだ。)


魔王は笑う。


「失わずに進める奴はいない。

 時間を旅行する猫の言葉など、誰も聞かん」


胸が激しく波打つ。


「考えろ、裕之(ひろゆき)!」


「選ばされる側で終わるか。

 選ぶ側になるか」


「時間切れか……。」


音もなく、姿が消えた。


扉が閉まる。


青の間に、静寂。


クロが小さく言う。


(誰の言葉も聞かず、自分で決めろ。)


俺は、青い床を見つめた。


俺は……


俺は、俺になるのをやめるのか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


魔王は、世界の裏側を教えてくれていました。

世界の役割は一人一役。特殊のパラメータの意味。

世界の役割を果たしたいが為に、鎖を断ち切れない因縁の、勇者と魔王。


次は、俺はどうしたらいい?

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