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第7話 感謝、そして

「っぷはぁ~!」


 ルト町を出て数十分。まだ全然先にアークトがあるが、一度休憩をしている。

 そして片手にあるのはイリアが行くときにくれた水筒。中には水が入ってる。

 たかが水だが、運動した後に飲む冷えた水が一番美味しい。

 前世でも飲んだことあるけど、冷えてない水ばっかだったからな。めちゃくちゃに嬉しい。


『そのままマナポーションも分けてくれて良かったな』

「そうだよなぁ」


 イリアはこの冷たい水のほかに、マナポーションもくれた。

「消耗品だけど、この日のお礼として」らしい。まぁこの旅の途中に異変が起きるかもしれないし、そう考えたら超ありがたい。


「ほんと、できた妹だよ…」

『イリアは男だ。あとリセルの弟でもない。』

「そんな断定しないでくれませんかね…」


 俺は少しだけ笑いながらクロエと話す。

 そういえば思ったが、最初クロエと話した時はこんな感じではなかった、と思う。

 まぁ最初っからぶっ飛んでる行動をしてたから、俺も次第に突っ込んでいって敬語が外れたり親しくしてたりしてたけど。

 普通、呼び出されるってなんだよ。あと呼び出されるならこの世界の創造神とか、現実世界の神とかじゃないのか?って思ったね。

 まぁでも最終的にクロエとこのように話したり、いろんなことができるから別にいいんだけどね。と、そう思った。

 クロエには聞こえているだろうか。まぁわからないけど。

 俺は本当に感謝してるぞ。この世界に呼んでくれたこと、あの世界から逃れたこと、色々とな。


 俺がそう思った瞬間にクロエからの返信は途絶えた。

 まぁ多分恥ずかしがってるかなにかだろう。微笑ましいですな。


「あ、思ったんだけどさクロエ」

『……ん?』



「…人間に戻りたいとは思わないのか?」



 ここまでいろんなことをしてくれたんだ。流石に俺からもお礼がしたい。

 自分の体を犠牲にしてまで俺をここに呼んだんだ。だからまずは体だな。ってのことでクロエに聞いた。

 そうした方が俺から感謝を伝えることは簡単だからな。


 そうクロエに聞いたんだが、少しだけ悲しそうな雰囲気を出していたのは手に取るように分かった。



『……思わない。』



「そう、なのか」


 俺の問いに少しだけ沈黙しながらも、最終的にそう断言した。

 何か嫌なことがあったのだろうか。まぁだから俺をこの世界に呼んだって言っても頷ける。

 それでもやはり疑問が生じるもんだ。嫌なことって言っても多分人間関係だろうし、そう考えたら今の俺みたいに体を変えて逃げるだのなんだのできたはず。

 まぁいい、考えないでおこう。

 この先ずっとクロエにお世話になるんだ。そのうちこのお礼は返させてもらおう。


「悪いな。こんなこと聞いて」

『いや、いいんだ』


 俺は一応謝ったが、やはり気まずくなってしまった。

 そんなつもりはないんだけどなぁ…


 と、その瞬間――



『リセル。敵だ』

「…?なんでわかるんだ?」

『”感”ってやつだ』


 クロエが言った通り、遠くからものすごく大きい足音みたいな音が響く。

 敵、と言ってもここらへんはあまり出ないんじゃないのか…?


 そう考えながらも、敵はどんどんこっちへ近づいてくる。



 ドゴォン!!!



 ドゴォン!!!!



『一歩一歩が遅い、そして重い…

 これは――



 オークだ。』



 大きな音をまき散らしながら、最終的に俺がいるところまで来た。



 俺の数倍の大きさ。牙が口からはみ出していて、服は下半身だけ来ている。

 そして武器は、なにもない。


「ここで倒さないとやばいよな…」

『オークは人間を食い殺す。ここで倒せリセル。』

「わかったよクロエ」


「グワァァァァァァァァ!!!!」


 クロエと会話しているときにそうオークは叫ぶ。

 なぜここに来たのかは知らないが、ここで倒させてもらおう。


 俺は鞘から剣を取り出し、そのままオークの元へ走っていく。

 個人談だが、オークとかそういう大きい敵は倒しやすい。

 魔法や剣を駆使して普通に振り回してれば当たるからな。大きな的ってことだ。

 それでも腹部分とかは大きすぎて届かないだろう。だからまずは足を切り落として膝を地面につかせるところからだ。


「ッオラァァ!!!」


 そのまま俺はオークの足めがけて剣を振った。

 その瞬間――



 ガキンッ!!!



「…はっ!?」



 剣が折れたのだ。


 そのままそのオークは俺を踏み殺そうと足を出す。

 俺は間一髪で避け、だがその足が地面に触れた瞬間に風圧で飛ばされてしまう。



「おいおいどうすればいいってんだ!」

『剣が使えないなら魔法だ!オークを倒すというイメージをしろ!』



 くっそ、急にそんなこと言われたって無理だぞこのままじゃ…


 オークから掴まれそうになるがギリギリで避け、そのままオークの左手で殴られそうになるも少しだけ掠って避け、そのまままた踏み殺されそうになるも避け…を繰り返していく。


 なにか、なにか考えろ…

 駄目だ!こういう時に何も思い浮かばない!

 オークを倒す、オークを殺す、オークを…

 駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!

 魔法とはイメージだ!だからオークを殺すイメージを…!



『やめろ!』



「!?」



 その瞬間、クロエの声が脳に響いた。



『殺すというイメージだけでは倒すことはできない!殺す”過程”のことを意識して魔法で殺せ!』


 俺はオークからのパンチを食らい、後方へそのまま飛ばされる。

 剣をもって両手で防いでそのまま滑り、右足だけ地面に膝をつく。


 クロエが言ったように、殺す過程を意識、か。

 思い出せ。Web小説では魔法使いはどんな戦闘をしていたのか。

 正直、主人公のソードマンに見惚れていたからあまり意識はしてなかったが、主人公が魔法使いに助けられていたシーンが少なからずあったはずだ。

 確か…


 俺はそのまま右手を前に出した。

 オークは不思議ながらをそれを見ている。

 ナイスだ。ここで攻撃してこないならイメージする時間は十分にある。



 俺が最初に考えたのは、水だ。

 鋭く、スピードはもっと早く、そして硬く、オークの体に大きな穴が空く感覚だ。

 もっと、もっとだ。もっとしっかり。


 俺がそうイメージをしているうちに、オークは俺の元へゆっくり寄ってくる。

 そんなのはお構いなしに俺は、どんどん魔力をこめていく。


 あとちょっと、もうちょっと…

 水、水、水、水………


 オークが俺に殴りかかろうとした瞬間…



「ッオラァァァ!!!」



 俺の魔力を全部込めた水が、オークの手に直撃した。


 穴、とまでは行かないが、結構な衝撃だったようで、オークは尻もちを搗く。



『ナイスだ!だがまだだぞ!』

「あぁわかって………」



 やばい、頭がクラクラする…

 くっそ、ここで魔力切れか………


『おい!リセル!しっかりしろ!!』


 クロエの声が脳に響く。痛くない。

 この前、痛いとか言ってすまなかったな………



 バタリ



 俺は魔力切れて倒れた。



 ◇ ◇ ◇



「………い!!!おい!!起きろ!!!」



 頭が痛い…グラグラする………



「おい!!起きろ!!!起きろ少年!!!」



 ゆっくりと、目を開けた。

 目の前には、



「大丈夫だったか少年!」

「………この前の盗賊か…?」

「あぁそうだ!

 アニキ!こいつ目を覚ましましたぜ!」



 そして俺もそのアニキとやらに視線が行く。



「あぁ!それじゃあ回復に徹しろ!俺たちはこのままこいつを抑える!」


「わかったぜ!アニキ!」



 その光景には、短剣で一生懸命オークからの攻撃を防いでいる、一人の男の姿があった。

 そしてその横にも二人、剣と斧を駆使して必死に戦っている。



 なにやってんだ俺は………



 俺はそのままクラクラしながらも、必死に立とうと努力する。



「お、おい!あまり立とうとするな!」

「何言ってんだ?」


「だ、だってお前、頭から血が出てるぞ!」


 その瞬間に頭から出た血が目のところまで滴る。

「くっそ」と吐き捨て、俺はその血を手で拭う。



「大丈夫だ。 問題ない」



 俺は治癒してくれた盗賊の人にそう言い、アイテムボックスの中からマナポーションを取り出した。

 そのまま飲み、瓶を地面にたたきつける。


「流石に武器くらいは………」

「いらない」



 右手には折れた剣、そして額から汗のように出る血…

 色々と不便だが、まだ戦えるな。


 そのまま俺はその戦ってる盗賊の元へと歩く。



 殺すためのイメージ。殺すまでの工程。

 いや、まずは剣か。


 俺はイメージをしていく。


 折れた剣を治すように、魔力で覆う。

 そして鋭く、あんなオークの肌なんてもろともせずに切れる魔力。

 そして硬く、もう折れることなんてない剣みたいに。

 そして重たく、一撃一撃、最大級のダメージを与えるように。


 その瞬間、剣に光が纏わりついたように、青い光が剣に付いていく。


「うん、良い剣だ」


 物体というわけではないが、こういう剣があったのなら最高に使い勝手が良い。

 よし、このままで行こう。


 そして、戦っている盗賊の隣に着く。



「すまん、遅くなったな



 あとは任せろ」



「………あぁ。わかった」



 さっき考えたように、まずは足だ。

 切り落として膝を地面につかせる。そこから腹。


 俺は足に魔力を込め、最大級の力で地面を蹴る。

 そして一瞬でオークの足元に付き、魔力が纏わりついている剣で足を切断。



「「ウガァァァァァァァァァァァ!!!」」



 オークはそう叫び、膝が地面につく。

 隙を与えずに腹に飛び込んで、剣を振る。

 そのまま振りかざした剣を上にあげるようにして、傷を入れる。

 そして――



「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」



 剣を持ち変えて、腹を剣で刺した。



「「ウガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」


 そのままオークは後方に倒れ、俺は魔法でゆっくり地面に立った。

 そしてそのまま…



 バタリと倒れた。




 ◇ ◇ ◇




 顔に水滴がつく。

 ポタポタと、一定に落ちてくる。


 俺はその小さな衝撃で目が開く。


 そこには――



「…無理して………」



 黒髪、いや青に近い黒髪を流した、すごく綺麗な少女が俺の目の前にいた。

 まだ幼い、だろうか。でも俺と年が近いのは確か、だと思う。


 そして俺は聞いた。



「………誰?」



 そう聞いた瞬間に少女は、俺のことを抱きしめ、優しくこう言った。



「クロエだよ」



 抱きしめた瞬間に、その「クロエ」と名乗った少女は泣いた。

 確かに、クロエに似ている気がする。というかもうクロエそのものだと俺は思った。

 いきなり抱きしめてくるもんだから少しだけ戸惑ったけど、俺も抱きしめ返した。



 数分後、クロエは泣き止んだ。

 そして俺はこの状況に疑問を抱く。



「………膝枕!?」

「そうだよ。リセルの頭の中を少しだけ見せてもらって、これがあったから…」

「おいおい少なからず俺はこんなの見た覚えないぞ…」


 俺は一生懸命記憶を探るが、クロエは…



「…ダメ、だったかな?」



 と上目遣いで聞いてきたのだ。



「いや、全然大丈夫デス。」

「ふふっ、良かった」



 くっそ、今思ったけどクロエってこんなにかわいかったのかよ。

 腰まで長い髪、シュッとした顔立ち、おまけに声…

 なんだか真面目に謝りたくなってきた。



「そういえば、ここどこ?」


 俺とクロエは、真っ暗な空間にいた。

 周りを見渡してもなにもない。だけど真っ暗だからと言ってクロエの顔が見えないというわけではない。結構はっきり見える。


「ここはリセルの頭の中、って言った方がいいのかな?」

「じゃあここでいつも俺の行動を見てるってわけか」

「そう。 まぁ今は気絶状態だからここにリセルがいるし、外の景色とかはまだ見れないけどね」

「なるほど」


 クロエはここで俺の行動を見ているらしい。

 なるほど、こんな風になっていたのか。

 多分俺の意識が戻ったら、テレビみたいな長方形の画面が出てきて、外の景色が見えるってことらしい。

 まぁなんとなく暇になりそうだけど…


「それじゃあここで何か物事を考えても、クロエに筒抜け?」

「いや、違うよ」

「あえ、そうなんだ」


 ここだけは大丈夫なのか。なるほど。

 まぁでもなんとなく寂しい感じはある。クロエがなにか突っ込んでくれないというね。

 でもクロエの実物が今目の前にあると考えると、これも悪くはない。

 というかそれよりも…



「なぁ」

「ん? なーに?リセル」



「なんで前世の俺の体に戻ってるんですかね…?」



 違和感はあった。体が重たくて、腹に突起物があって、所々痛くて…って、死んだ直後の体の構成をしてるのか。


「それはリセルの頭の中の姿みたいなものだからね

 前世の体なのは当然」

「全く意味が分からん…」


 だから制服なのか。納得ーじゃなくて………

 まぁいいや、まずはここから脱出する方法を考えないと。


「クロエ、ここから脱出する方法は?」

「わからない、けど…」

「けど?」


 クロエはまたもじもじしながら俺に言う。

 やめてくれよ、真面目に襲いたくなるから。



「…もうちょっと一緒に居よ?」



 ねぇ前のクロエさんはどこに行ったのかな???

 真面目にこれクロエじゃないぞ。どこ行ったんだマジで。


「いやまぁそれは俺も同感…じゃなくて、

 戻らないとこのまま俺みたいなデブと一緒にここでいることになるよ?」

「リセルはデブじゃない。 …多分」

「断言してくれたっていいじゃないですか…」


「でも、もうそろそろ起きると思う。あっちのリセル」

「お、本当か」


 危ない危ない。

 じゃあこのままここから脱出することにしよう。

 俺はそう思いながら立ち上がった。



「あ、リセル」

「ん?なんだ?」


「あたし、やっぱり人間になりたい。」


 ………


「あぁわかった。待っててくれ。」


「うん!」



 その瞬間、俺の周りが白い光で覆われた。

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