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第6話 ルト町とイリア

「ありがとうございますイリアさん!!!」

「いえいえー!それより遅くなってすみません皆さん…」


 すっかり夜になった頃、俺とイリアさんは無事、ルト町に着くことができた。

 あの盗賊を逃がした後、そのままモンスターに会うことがなく、無傷でルト町に着くことができたのだ。

 そしてそのまま冒険者ギルドに来て、マナポーションを治癒師たちが飲んでいる。


『そういえばあのポーション、治癒する人が飲んでそれで魔法をかけるんだな』

『”マナポーション”は、自分の魔力を底上げできる機能がある。 だから、魔力がない人が飲むと増幅して、より強い魔法を使えたりできるのだ』

『ほほう。 でも魔力って、使い続けたら増えるんだよな?』

『それもそうだが、使い続けて魔力を増やせるのには期間がある。 その期間以内に魔力を増やしてなければ魔力が増えることはまずない』

『あえ、そんな大切なことがあったのか』

『リセルには説明しなかった。 まずまずその期間とやらはないからな』

『…?』



 そんなことをクロエと話しているときに、町長さんに話しかけられた。


「今日は本当にありがとうございました」

「あ、いえいえ。 俺はただイリアさんの護衛をしただけなので」

「いやいや、その護衛依頼を誰も受けてくれなかったのですし、依頼をリセルさんが受けてくれて、わたしたちは助かったのです」

「あぁ、はは…」


 俺は苦笑しながらも町長さんからのお礼を受け取った。

 でもそんなことだけでは終わらずに、町長さんはポッケから袋を取り出した。


「こちら、私たちからのお礼の品です。 受け取ってください」

「あ、いえ、別にいらないのですが…」


 そんなことを言いながら俺は袋を開けた。

 そうすると…



「うぉえ!??」



 その中には、金貨が10枚程入っていたのだ。

 こんなにいいんですか!?町長さん!??


「リセルさんが依頼を受けなかったらわたしたちは助からなかったでしょう

 これくらいのお礼はさせてください」

「え!?、いや、こんなにいりませんよ!」


 と俺が町長さんと話しているときに、包帯で胸をぐるぐる巻きにしているガタイのいい男がこっちに歩いてきた。


「いや、リセルさんとイリアさんが助けに来なければ、俺らは死んでいました。町長さんの言う通りです

 だから、これくらい受け取ってください」

「は、はぁ…」


「なんか、これ断ったらこの人に殴られそうだな…」と謎に怖がった俺は、仕方なくお金を貰うことにした。

 イリアさんにもお金はちゃんと渡っていたから、多分大丈夫だろう。



「ここに来るまで大変だったでしょう。 わたくしの家にお風呂がついていますし、部屋も二つありますので、今日はそこに泊ってってください」

「町長さんほんとぉ!?やったぁ!!」

「お風呂、ですか?」


 お金をもらった直後に、町長さんからそう言われた。

 お風呂、か。そういえば異世界に来てから一度も入ってない………ま、まてよ………?


「す、すみません、入ってもいいですか…?」

「?…えぇ、大丈夫ですよ」


 嫌な予感がした俺は、そのまま町長さんの家に行ってお風呂に入った。



 ◇ ◇ ◇



「うぅ、やっぱりか………」


 俺は服を脱いで自分の体の匂いを嗅いだ。

 うん。強烈に臭い。服もこれ一枚しかないから洗濯しなかったけど、本当に臭い。

 こんな匂いで俺はアークトの街を歩いていたのか…?そう考えるとぞわっとする………


「今後からお風呂には毎日入ろ…」


 いや、お風呂に入るってだけでお金必要だから…

 ってかアークトにお風呂入れる店なんてあるのか…?というかまずまず何円かかるんだ…?

 わからん…アークトについたら見て回ろう………


 俺は「はぁ」とため息をつき、服を脱いで、お風呂に入った。

 お風呂と言いながらも、大きくした桶みたいな物だった。 やはり異世界。

 シャワーは流石にない代わりに、小さな桶ならあったから、その桶にお湯を入れて頭からザバーッと被った。


 そしていろんな所を洗って、最終的にお風呂に入る。



「ふぅ~…」



 いやぁ、気持ち良い。

 異世界に来る前はお風呂なんて滅多に入らなかったからな。めちゃくちゃ久しぶり。

 程よい熱さのお湯が俺の体に染みわたって、今までの疲れを癒してくれる…

 そうしているうちにふと、一つ思い出した。


「そういえばクロエ。 あのさっき言ってた”期間”とやらの説明を…」

『………ん…? なんだ…?

 あまりリセルの体を見たくないから出てこなかったのだが…』

「あえ?そうなの?」


 そんな配慮をしてくれてたとは。前のクロエとは全然違うねぇ

 まぁでももう見られてるし、クロエの体だから俺はもう良いんだけどね。



「まぁいいや、そんで?」

『…あたしが良くないのだが………

 …えぇっと、リセルはあたしの体を使っていると言ったよな?』

「うんそうだな」

『まずあたしの体がその期間がないのだ

 だからその体質を受け継いだから、リセルも同じ、ということだ

 でも確証はない。 実験しなかったからな』

「なるほど、そんな単純な理由だったのか」


 実験と言っても、どうやって実験して証明するのかがわからないけど…ってそこら辺を俺が考えたら意味がない。

 でもこの世界の人とは違って、俺はずっと強くなっていく…か。

 なんだそれ。めっちゃ唆るじゃん。


 そう考えてる瞬間に――



 バァーン!



「うえ!?」



「リセル君!一緒にお風呂はーいろ!!!」



「『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?????』」



『い、いくらなんでも一緒にお風呂に入ることは許さないぞ!!』

「いや俺がお風呂に入るイコールクロエとお風呂に入るってことじゃないんですかねって違う違う違う!!

 イリアさん!あなた女性でしょう!?だめじゃないですか!!!」


「え?何言ってるのリセル君…



 ボク、男だよ?」



「え…」


「『えぇぇぇ???』」



 ◇ ◇ ◇



「…な、なるほど

 説明がめんどくさいから男だってことは言わなかったのか…」

「まぁねー。ボク、女性っぽいからそのまま女性って言った方が楽だしー」

「…なんかプライドとかないんか………」


 さぁ今の状況。誰もが予想しているのだろう。

 そう、俺は………



 このイリアさんに、背中を洗ってもらっている。



 いやお風呂に入る前にしっかり洗ったんだけど、イリアさんが「やりたい!やりたい!」ってうるさくて、最終的にやらざるおえなかった。

 あと普通に男だからね。 許される、と思う。 俺にもプライドはありませんでした。


「ねぇリセル君」

「ん? どうかしました?」

「その敬語やめよーよ、一応ボクのほうが年下だよ?」


 イリアさんは今年で16歳になるらしい。

 中学生くらいだと思ったが、普通に高校2年生くらいの年齢だった。

 俺は18歳だから、まぁまだ幼いな。俺もまだ幼いけど。


「ん、わかりまし………

 …わ、わかったよ」

「うん、それでいいよ!」


 なんというか、居心地が悪い。

 今まで戦闘中とかクロエと話す時くらいしか敬語外してないからだろうか。

 まぁただただ敬語を外すだけなんだけどね。


 イリアさん………イリアは、「お痒い所はありませんか〜」と言いながら俺の背中をその小さな手で洗っていく。

 俺は「それ頭洗うときに使うんじゃない?」と笑いながら答える。

 兄妹になったようだ。 今までそんなこと経験したことも見たこともないけど、なんだかほっこりする。

 最も、イリアは女じゃないけどな。


 そうして、イリアは「ハイ終わり!」と桶にお湯を入れてバシャッとかけてきた。

 一言、「ありがとう」と述べたらイリアは「どういたしまして」と会釈して、お風呂場から去って行った。

「一緒にお風呂に入るんじゃないんですかね…」と、ちょっと落ち込んだ俺であったが、そのまま俺もお風呂場から去った。



 ◇ ◇ ◇



「んー、おはよー。 リセルくーん…」

「おはよ、イリア」

「おはようございます、リセルさん」


 俺はお風呂に入った後、気絶するように寝た。

 今まで旅なんてしたことなかったし、今まで溜まっていた疲労が一気に来たのだろう。

 そんなこんなで朝。 テーブルには町長が作ったと思われる朝ごはんがずらりと並んでいる。


「…これ、町長さんが作ったのですか?」

「えぇそうですよ。 わたくし、こう見えて料理するの得意なので」


 こんなこと言うのもあれだが、町長さんは結構な年寄りだ。

 杖を突いているほどではないが、歩き方に少しだけ癖があったり、腰に手を当てていたりと、色々と不自由なところはあるだろう。

 年齢は聞かない方が良いだろうから、あまり確証はないが。


 そしてこの町長さんが作った飯もまぁ美味そう。

 ご飯、味噌汁、そして丸焼きにした魚。一般的な日本の朝飯だ。

 朝飯だから簡単にできるやつを選んだろうけど、個人的にはそれより味。

 そのまま俺は食材を口へと運ぶ。



「え…美味しい………」

「うまー!」



 俺以外にも、イリアがそう感じたようで、大きな声で「美味い」と叫ぶ。

 なんとなく、初めて食べたお婆ちゃんの飯を思い出した気がする。 多分それより美味いと思うが、まぁあまり考えないでおく。


「そうですか、そうですか

 いっぱい食べてください。 おかわりはたくさんありますので」

「本当ですか? ありがとうございます!」

「町長ー! おかわりー!!」


「あのなぁ」とイリアを抑えようとするが、そんなのはお構いなしに白米をおかわりしにいった。

 そんなイリアの姿に笑って、俺もおかわりしに行った。



「あ、そういえばリセル君」

「ん?」

「アイテムボックス欲しいって言ってたよね?

 町長さんから売ってもらえばー?」


 そういえばすっかり忘れてた。この町で買えるんだっけ。

 だったら買ってったほうがいいな。


「本当ですか? 在庫はたくさんありますので、今色々と持ってきます」

「あ、いえいえお気になさらず。 あとで買うので」

「とんでもない! 代金は要りません!」

「え!? 、いや流石にお金くらいは…」

「要りません要りません!」


 そう町長さんと言い争っていたら、町長の傍にメイドさん、かな?と思われる女性がやってきて、バッグを町長さんに渡した。

 そのまま町長さんは俺にバッグを見せてきて、「どれか一つお選びください」と、もう俺が言ったことは無視するかのようにバッグを選ばせてきた。

 ここまで優しいのはなんでだろうか…と疑問に思ったが、そう疑問に思う前に感謝して受け取ったほうがまだ良いのかなとも思い始め、最終的にバッグを選んだ。



「それじゃあ、これで」


 でもやはり迷惑だろうなと感じ取った俺は、できるだけ小さいバッグを指差した。

 だってお礼のお金ももらって、無料で泊まらせてもらって、最終的にアイテムボックスまでもらえるんだよ? 俺にもやっぱり遠慮というものが出てくる。


「えぇ!?こんなのでいいんですか?」

「えぇ。流石にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないので…

 あ、あと、ご飯。 ごちそうさまでした。 美味しかったです」


 そう言いながら俺は部屋へと戻った。

 イリアと町長はキョトンとしながら、俺を眺めていた気がする。



 そのまま俺は荷物をまとめて剣を背中に装備し、家を出る準備をした。

 臭かった服は綺麗に洗濯されていて、元の質感に戻った感触があった。 流石町長。 ありがたい。

 そしてなんということに、「服が一枚しかなかったそうなので、持って行ってください」という張り紙とともに、ベッドの上に上と下一式が三枚置いてあった。

 防具と呼べるほど強そうではなかったが、これも質感が最高。

 真面目に「俺これから殺される…?」っていうくらい親切にしてもらってるけど、大丈夫なのだろうかと不安が押し付けてくる。

 まぁでも、最終的に全部アイテムボックスに入れて、俺は「これくらいやらせてくれ」と、ベッドのシーツを分けておいた。 多分洗濯が楽、になると思う。


『よしクロエ。 帰るぞ』

『わかった』


 そのまま部屋を出て、町長とイリアに「出る」と伝えて玄関に行くと、そのままみんなもついてきた。


「またこの町に来てくださいね。 わたくしたち一同、待ってますから」

「ボクと町長さんはいろんなことしないといけないからここでお別れだけど、許してよね!」

「わかったよイリア

 すみません。お世話になりました、町長さん」



 俺はそのまま町長の家を出た。


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