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第3話 異世界の自分

「いやぁー! 美味い!!!」


 今まで嗅いだことも見たこともない大きい肉!

 そしてそれを打ち消すようなあっさり野菜スープ!

 何と言っても、空きに空きまくったお腹が最高のスパイスになって、美味さが倍増している!!


 もう…最高……


『うるさいなぁ、飯くらい静かに食えよ』

『いやだってさ! 異世界に来て初めての料理だよ!?

 しかも朝はお腹が空くからって依頼を受けに行って、その依頼はスライムの討伐!

 クロエが言ったとおりに多少草は食べたけど、やっぱり空腹は紛らわせなかったし…でもそれが最高のスパイスになって今の飯が美味すぎる!!!』


「そんなに美味いか! ならもっと食べろ!」


 クロエと会話しているときに、ゼプトスさんからおまけのお肉を俺が食べている食卓の上においた。


「うおっ!マジっすか!! いただきます!!」



 俺は、朝起きた瞬間に空腹に襲われて耐えられなくなり、速攻でギルドへ駆け込んで、受付嬢さんに依頼を受注してもらった。

 ただ飯代を稼ぐだけだったからまた「月見草」の採取でも良かったのだが、クロエが「駄目だ駄目だ」と聞かなくて、最終的にスライムの討伐に向かったわけだ。

 クロエの声はなーんか耳に響いて痛いんだよなぁ…魔法か………?

 まぁそんなこんなで俺はスライム討伐に向かったわけだけど、スライムと言っても俺の足くらいの大きさで、それが3体。

 こんなのを依頼に出すのか…?と住人を疑った。

 魔法は子供でも使えるのだ。スライムの1体や2体くらい容易いと思ったんだけど………

 だが俺はなんとなく、「住人は戦闘経験があまり無いのだろう」とあまり口出ししないでおいた。

 多分この世界の設定とやらなのだろう。


 さぁ、そして俺が今食べている食事のことだ。

 店の名前は「ゼプトス」。 店長はその名の通りゼプトスさんだ。

 アークトに初めて来たときから気になっていた店で、店の外まで漂う良い匂いと、看板で堂々と宣伝しているこの「串刺しお肉とゴロゴロ野菜スープ」が目に留まって、ここに来る以外は考えられなかった。

 名前の通りで、5個か6個くらいの大きなお肉が串刺しにされて焼かれているやつで、これが塩コショウがめちゃくちゃ効いててマジで美味。 白米欲しい。

 そしての、噛んだらじゅわっと出てくるこの肉汁。 もう最高だよね。 白米欲しいマジで。

 そんな塩コショウが効いたお肉でいっぱいになった口の中を、まるでゲームのリセットボタンのような、でもちゃんとお肉の味は舌に覚えさせてくれるこのセーブ機能が携わってるスープが最高に美味。

 異世界の料理が美味いって言うのは定番だけど、ここまで美味いとなるともう前世には戻れないな…

 いや前世で美味い飯あまり食ってなかったって言うのもありそうだけど。


 ちなみにこの飯食ってて、「お婆ちゃんのご飯が食べたいー」とはならなかった。

 なんというかお婆ちゃんの味は質素と言うか、この飯が美味すぎるというか…比べたら悪いけど、これと比べたら敗北が確定する味だった。

 まぁそのお婆ちゃんのご飯を食べる前まで、「飯が美味い」とは感じなかったからなのか、その時はお婆ちゃんの飯が美味かったと理解できたんだろうけど…

 いや美味いんだよ?美味いんだけど、あんま俺の舌には合わないかなーみたいな、そんな感じだったよ。 うん。


 そして俺が一番に気になったのは”価格”だ。

 昨日の受付嬢さん、アクレスさんって言うんだけど、そのアクレスさんに聞いた話だと、この世界はお札、金貨、銀貨、銅貨の、大体4つに分けられているらしい。

 お札は、「金貨10枚」に分けられる。

 そして、アクレスさんに昨日の「月見草」の報酬が渡されたときは”銀貨4枚”だった。

 宿代はチョッキリ銀貨4枚。

 スライム討伐報酬はほんの少しだけ高くなって銀貨5枚。

 そしてこの飯は銀貨1枚と銅貨2枚。

 先にお金を払う感じで、銀貨2枚を渡すと銅貨が8枚になって返ってきた。

 まだ金貨は試してないけど、多分…


 ・金貨→1万円

 ・銀貨→1000円

 ・銅貨→100円


 ということなのだろう。

 まぁ、そこらへんは使っていくうちに慣れていくようにしよう。

 っていうかそう考えるとこの飯は1200円か…

 日本も物価高とかで飯が高いって聞いたけど、少なくとも俺が食ってた飯は数百円のパンとかだったぞ…?

 母さんがくれるお金もあまりなかったし、知らない男からもお惣菜とかしかもらえなかったからな。

 まぁいいや、今後は働ける仕事も見つけたし、自分が食べたいと思った物を食べていこうと思う。



 俺は、飯を食べ終わってお腹をさすっていた。


『今日はもう依頼を受けないのか?』

『いや、このままじゃ夕食代も宿代も足りないから、もう一回依頼を受けることにしようと思ってたんだけど、大丈夫かな?』

『スライム討伐の時にあれだけ戦えていた。多少強くても大丈夫だ

 ついでに魔法の練習でもしよう。限度があるからあまり使えないがな』

『わかった。じゃあもう飯も食べ終わったし、行くか』

『そうだな』


 さっきお肉をくれたゼプトスさんはもう厨房に戻っているので、俺は皿を片付けて、「美味しかったでーす!」と厨房に聞こえるように叫んで店を出た。



「ありがとうなぁ!少年!!!」



 ◇ ◇ ◇



 俺は家にいるときは暇な時が多かった。

 勉強することが大半だったが、Web小説にハマってからは、その小説のことを試したこともあった。


 まずは魔法。

 この前の魔法を使ったときと同じで、少しだけ練習していたことがあった。

 練習と言っても、魔法のことはソードマン小説で言ってたことしかわからないわけであって、詠唱を唱えるくらいしかしてないのだがな。


 そして、ソードスキルだ。

 スキルと言う名の”技”で、その技一つ一つ名前を付け、その名前を叫びながら技をするというものだった。

 多分だけど、技名を叫ぶ理由はあんまなく、ただただ「かっこいいから」という理由だと個人的に思った。

 技名を叫ぶにしても、俺の家では騒音被害とか出させたくなかったため、何も言わずに俺はそのソードスキルを再現しようと思った。

 魔法とは違って、確実、というわけでもないが、再現はできる。


 まずはただ振りかざすだけのソードスキル。

 もう名前は忘れたが、一応その小説のように俺は再現する。


 構える姿は、剣先を相手に向けて、持ち手を右耳の少しだけ後ろの方へ持っていき、下から支えるように手首を捻って、5本の指で優しく包む。

 そして足は軽く開いて腰を落とし、左手は相手のほうへ。


 一度深呼吸。 そして――



 剣を持っている右手を相手の右肩めがけて素早く振りかざす。


 その瞬間、俺とは少しだけ背が小さいゴブリンの肩から、血と思われる液体が噴き出す。

 そして俺は、振りかざして下を向いていた剣をそのまま振り上げ、左手を落とすように振り上げた。


 左手は勢い良く落とされ宙に舞う。

 そして体は一時停止し、血を噴き出しながらバタリと倒れた。



「あと、数体か。」



 俺はまた深呼吸し、剣に付着したゴブリンの血を弾くように勢い良く振り下げる。

 血は地面をぺチャペチャと叩きつけられ、見ていたゴブリンにもその血が付着する。


 そのゴブリンは血相を変え、持っていた木の棒を落とした。




「ふぅー、終了だな」

『お前、スライムを討伐する時はあんな感じではなかっただろう…』

「まぁあの時は”初めて”だったからね。なにもかも経験が命って言うでしょ?」

『そう、なのか…?』

「うん。そうだよ」


 俺は倒れたゴブリンの死体から耳をそぎ落とし、受付嬢のアクレスさんから貸してもらった袋に入れていく。

 そう言えばスライムの討伐なんだけど、スライムの中には「魔石」という物が入ってて、それを壊せばスライムは死ぬ。

 説明を読んで少しだけ疑問に思ったけど、まぁスライムにすぐ会えて理解できたから瞬間的に理解することができた。

 服を溶かすとも説明に書いていたし、あまり接近戦はしない方がいいかもだけど、ただただ剣を刺せばすぐ死んでくれたので、なんとかなったのだ。

 あと剣を使うなんて初めてだったからね。そりゃなんか心地悪いよ。


 魔石は、スライムだけにしか無いらしく、他の魔物は普通に心臓を止めさせたり、致命傷を負わせればすぐに死ぬんだそうだ。

 だからできるだけゴブリンには強くした。

 あのソードスキルならあそこで剣を振り下ろして終了だけど、ゴブリンを剣で振り下ろした時に血が噴き出たから、「痛いかなー」って思って追加で剣を振り上げた。

 できるだけ素早くトドメを刺そうと言う判断にしたけど、大丈夫だったかな? 他のゴブリンはもう目が白くなってたけど。


 というか、この世界は本当に楽しい。

 魔法は使えるし、剣は本気で使えるしで、なんとなくストレス解消になる。

 ストレスなんて貯めてすらいないが、やっぱり体を思いっきり動かせるってことは最高なのだなと思った。

 前の世界でまずまず家に出ることが無かったし、ソードスキルを再現するために練習してたって言うのもあるけど、本物の剣みたく重くはないハンガーで再現してたし、本当に切ってるわけではないから違和感がすごかった。

 でもやってみるとしっかりハマる。 パズルのように。

 本当、俺は異世界に来たんだなぁと再認識した。



『このまま魔法の練習もしていかないか?

 多分だが、昨日一回魔法を使っただけで気絶したから、今度は数回できるようになっていると思う』

「昨日みたいに気絶しないかなぁ~とか思うけど、クロエがそう言うなら多分大丈夫でしょう。やってみるよ」

『頭が重かったり、体調が悪くなったりしたらすぐやめて開くぞ

 お前が死んだらあたしが困る』

「わかったよー」


 クロエって所々優しいんだよなぁ。

「死んだら困る」とか言ってるけど、本当はどうなんだろうかなぁ。

 まぁでも、クロエの言うように魔力不足になってまた気絶したら死ぬ可能性は大だ。

 普通にここは森の中だし、魔物が弱いと言っても気絶しているときに攻撃されたらそれで終わりだからな。

 俺はそこらへんを少しだけ意識しながらも、魔法練習を開始した。


 俺は剣を背中の鞘にしまい、右手を前に出した。

 なんとなくで腕まくりをし、そして昨日のようにまたイメージする。



 パチャ。



 あ、え?



『ほう、もう習得したようだな』



「は?何言ってるんだ?」



 俺がイメージし始めたときに、俺の右手から水弾が出てきた。

 なぜ下に落ちたのかとか疑問に思ったけど、そのままクロエが説明してくれた。



『魔法を長年使っていると、もうイメージしたものがすぐ出てくるようになってくる

 イメージと言っても、「出てくれ」と脳で唱えた瞬間にだ

 もちろん魔力の消費量は変わらないし、ただただスピードが変わったってだけだ』

「え? でもそれは”長年魔法を使ってる人”にしかできないんでしょ?」

『一応これには個体差があり、長年と言っても1年だったり10年だったり…早い人でも一カ月で習得する

 だから、習得する時間はあまり関係ないんだ


 まぁそれにしても、リセルは習得が早い』


「うーん、異世界転生したからチート能力を授かった、みたいなやつかな?」

『チートノウリョク?とやらはわからんが、異世界人だからって、なにか力を授かったようには思えない

 まずまず、昨日は一回魔法を使っただけで気絶したからな。この世界の人なら二回で気絶することがざらなのに』

「まぁだよねー…」


 そう、か。

 まぁ俺みたいなやつにチート能力がもらえるわけないもんな。

 ってか異世界転生させたのクロエだし。

 まずまず神様とか信じない派だから。俺は。


『まぁ良い。もう時間も良い頃だ

 帰るとしよう』

「ほーい」



 ◇ ◇ ◇


 そういえば忘れてたけど、魔法の練習をしているときに、昨日は水弾が下に落ちなかったけど今日は落ちたのはなぜ?ってクロエに聞いてみたんだけど…


『お前がそうイメージしたからだろ?』


 って、あたりまえのように言ってきた。


 昨日のように水弾が俺の右手から出てそこにとどまるって思ってたから、下に落ちるとは考えてすらなかったんだけど…

 まぁでもクロエがそう言うなら多分、「水弾よ!空中にとどまれ!」的なことをイメージできたら本当にとどまるんだろうな。

 逆に「速いスピードで飛んでいけ!」ともイメージできたら、イメージ通りに飛んでいくんだろうな。

 また時間があったら試そうと思う。



 ゴブリン討伐は銀貨7枚が支給された。

 そして今現在の宿代が4枚。

 飯はあまりお腹が減ってなかったから、出店のパンを一つ買って銅貨3枚。

 合計、銀貨6枚と銅貨5枚となる。

 ギルドで、銀貨10枚になったから金貨と交換してもらおうかなと思ったけど、まずまずミスってる可能性もあるし、銀貨のほうがお釣り出ずらいから大丈夫かなと思って交換しなかった。


 こんな感じで、俺は異世界に溶け込んでいっている。

 クロエがいて心細いということはないが、やはり、前の世界で過ごしていた俺が、壊れてしまうのではないかと心配した。

 前まで持っていた自分の感情とか考えが失くなってしまったら、そりゃ心に穴が開いたみたいに寂しくなるのだろうか。

 だけど、あんな世界のことはもう捨てると自分で決めたことだ。こんなことは目に見えていたはず。

 だから、俺は大丈夫だ。


 俺はそう自分に言い聞かせ、ベッドで就寝した。


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