第11話 旅立ち
「リセルさん、おはようございます
今日はどんな依頼で?」
「あ、いやー、アクレスさんにちょっと話したいことがあって来たんだけど…」
「…ん?話したいこと…?」
俺は朝食をパンで軽く済ませて、速攻で冒険者ギルドに向かった。
なんだか最近の朝食はパンで軽く済ますことが多くなった気がする。食生活も見直さないとなぁ。
まぁそんなことは置いといて、俺はアクレスさんを受付から外してもらって、そのまま冒険者ギルドにある、クロエが俺の名前を考えてくれた席に座った。
そのまま俺が旅をすることを事細かに話した。
「なるほど、旅に出るんですね…」
「急なご報告で申し訳ないです。 でも一応自分で決めたことなんですよ
あまり否定はしないでもらえると…」
「まぁリセルさんならもっと他の場所で活躍できそうですよね
ただでさえ短期間で冒険者ランクがCまで上がった人なんて、私の人生で一回も見たことありませんよ」
アクレスさんが言うように俺の冒険者ランクはまた上がった。
オークも倒してるし、この街を救ったという実績があるんだから、それ相応のランクじゃないと我に合わないというわけで上がったのだった。
でもオークと言ってもランクCくらいで余裕に倒せるそうだ。 まぁ「街を救ったから」という理由も込みで、ランクが上がったと思うけどね。
「まぁでも、オークみたいな魔物はここ、アークトではあまり出ないわけ…というか、もう出ない可能性のほうが多いんですよね?」
「そうですね。 リセルさんの言う通り、オーク以上の魔物はここ最近出てませんし、それこそオークなんて本当に出てないですよ
『ヨル』、という盗賊団が原因だったのですよね?」
「ヨル」のことも、俺と「ナイツ」でオークの死体を解体しに行った後に冒険者ギルドで公言した。
俺は「ヨル」とは関わりを持ってなかったため、「俺はこの『ナイツ』たちに、『自分で殲滅しろ』と言っただけです」とそのまま伝えた結果、すぐに事情聴取は無くなって、報酬を手に入れることができたのだ。
俺はアクレスさんの問いに答える。
「はい。 俺は何も知らないのでわからないのですが、その『ヨル』が所有していたオークを使って、あいつら『ナイツ』が殲滅したらしいです
俺の放った言葉だけであんなにやる気になるとは…って最初は思いましたね」
「ふふっ、そうですね」
なんだか、頭が痛くなるような、そんな感じの嫌な予感がするようになってきたから、俺はそろそろ行くことにしますかね。
たまーに女子と喋るってだけで「ふんっ」だとか、これみたいに頭が痛くなるときとかあるんだけど…まぁでも前世では女子と話すことすらできなかったからかな。
最も、男子友達もいなかったわけだけどね。
まぁそんな良くわからない理解をした俺は、アクレスさんに「時間取っちゃってすみませんでした」と頭を下げた。
「あっ、リセルさん!」
「…はい?」
「がんばってくださいね!!!」
「………はい!!!」
◇ ◇ ◇
次はゼプトスさん。
この世界に来て初めて食べて、初めて美味しかった、「串刺しお肉とゴロゴロ野菜スープ」を頬張って、今はゆっくりしながらゼプトスさんと話している。
「なんだか、もうちょっとゼプトスさんのご飯食べたかったっす…」
「んなもんいいんだよ。 またここに来た時に食えばいいだけの話だろ?」
「それもそうっすけど~」
比較的軽く喋っている。
かしこまって喋るよりもこっちのほうがなんとなくいいかなってことで、俺からそうしてるだけだけどね。
まぁそれと同時に少しだけ寂しさも出てくる。
もうゼプトスさんの飯が食えなくなるんだ………、何個か作り置きしてあっためたら食える食品みたいなの持っていこうかな。
と、考えた瞬間に――
「あ、俺が何個か作り置きしてあるやつ買ってくか?
魔力を適当に込めるだけで温まってくれて、すぐ食えるやつ」
「…あっ、いいんですか?」
なに?俺の考えはクロエだけじゃなくてみんなにも筒抜けなの???
………まぁいいや、ゼプトスさんが言うに、レンチンして温まるみたいな画期的なご飯はこの世界にもあるらしいし、数個買ってくか…
「………じゃあ、お願いしてもいいっすかね?」
「おう!いくらでも持ってけ!」
なんか、ゼプトスさんがちょっとだけ怖く見えた自分がいた。
まぁでも、これで旅の途中で腹が減ったとしてもこいつを温めて食えばOKってことだな。
ほんとなんか、前世と同じみたいな仕組みのやつが多いな。なんでだろ。
まぁそこまで深く考える必要もないか…
俺は数個、いや数十個買ってアイテムボックスに入れて、ゼプトスさんの店を出た。
「おい坊主!!!」
「は、はい!!」
「がんばれよ!!!」
「はい!!!」
◇ ◇ ◇
そしてのてんちょーさんとラルク。
行く途中に買い出しをしていたラルクに会ったから、そのまま旅をすることを話しながらてんちょーさんのいる店に向かっている。
「まぁ剣もそうだし、オークを倒す実力もあるってんなら、旅をするのが普通だよな」
「普通なの?」
「そりゃそうだろ。 普通の人間、強くなりたいなら誰でも勝てるようにならないと『強くなった』とは言わないからな」
ラルクがちょっとだけ俺を呆れるような目で見たのは俺でもわかったがそんなことは置いといて、やっぱ旅をするのが普通なのか。
まぁ俺に関しては「強くなる」と言った理由ではないけれど、でも「強くなる」のほうがやっぱり目的としてはあっているのかね。
んま、目的を一つに絞らなくても別にいいってことだろ。うん。
俺はもう店の近くだったこともあり、ラルクの言った言葉に適当に相槌を打って、店へと入った。
「てんちょー、リセルが旅に出るってよー、って………
また隠れてお菓子食べてるっすね!!!」
その瞬間にちょっとだけ体がびくっとなっている後姿のてんちょーさんがいた。
やっぱなんか可愛い。
「もーほんとにやめてくださいよてんちょー」
「い、いいではないか!この間みたいに仕事は…」
今日のてんちょーさんは慌てて誤魔化そうとしてる。 前のてんちょーさんは結構堂々と言い張ってたのに…仕事してないのか?
そう考えた瞬間にラルクがてんちょーさんの前に瞬間移動して………
「「まだ終わってませんが???」」
と大きい声で言い放ったのだった。
てんちょーは「ひーっ!!」と言いながら会計カウンターの後ろにある部屋に逃げていった。
やっぱなんか可愛い。
そう思った瞬間にまた頭が重くなるような痛みが出たけど、まぁ多分大丈夫っしょ。
俺がそんなことを考えているとラルクが「ごめんな」と言って俺の傍に戻ってきた。
「いや全然いいよ。 忙しかったってことでしょ?
なら俺すぐ出るわ」
「あぁ、それのほうがいいかもな
俺もやるべきことあるし、まぁこんな感じでリセルとは話せたから大丈夫だ」
「わかった」
俺は剣の詳細をラルクと確認して、そしてラルクから地図と方位磁針を貰った。
まぁ最初は戸惑ったけど、地図と方位磁針はそこらへんで貰うことができるから別にいいんだとか。その”そこらへん”がこの店なんだとか。
「んじゃ、ありがとなラルク
また来るから」
「おう!また来いよな!」
ちょっとてんちょーに会えなくなるのは少しだけ寂しい俺であった。
「あー、頭痛ぇ」
◇ ◇ ◇
んま、そんな感じで一通り俺の知ってる人にあいさつは最後までした。
イリアとナイツのみんなにもあいさつしたかったが、イリアはまだルト町に残ってて、ナイツのみんなはもうとっくのとうに旅立ったとアクレスさんに聞いたので、イリア宛にだけ、アクレスさんに手紙を渡してくれと頼んでおいた。
なんか、ナイツのみんなとも話をしたかったけど、まぁあいつらもあいつらでやるべきことがあるんだろ。
でも少しくらい挨拶しても良くね???………まぁいいけどさ。
イリアに関しては、ちょっと名残惜しいけど、まぁでもイリアに駄々をこねられて止められたりとかしたらあれだからな。
そんな感じで俺は一歩一歩踏みしめて進んでいく。
「なんだか、見慣れた光景だけど、ちょっと寂しいな」
『旅をするって言うのに、そんないちいち寂しがっていたらキリがないぞ』
「わかってるけどさ」
ここ、アークトに来て、初めて俺の異世界生活が始まったんだ。
いろんな人と出会って、戦って、守って………なんかほんとに涙出てくるぜ………
おっといかんいかん。最後くらいは涙一つ見せずに行かないと。
そう思いながら俺は、この街を出た。
その瞬間――
「リセルくーん!!!!」
「………?だれだ?」
俺の名前を叫んだ人が現れた。
なんかよく見えない………って!
バサッ!!
その瞬間に俺の名前を叫んだ人は俺のことを抱きしめた。
「イリア!?」
「そーだよ!イリアだよぉぉ!!
いっちゃやだよぉ!リセルくんーー!!」
「やっぱ駄々こねるかー」とか思いながらも俺はそんな悲しんでいるイリアの頭を撫でて「どうせまた帰ってくるって」と笑いながら答えた。
「ほんと!!いつ!!」
「いつって………まぁ、1年くらい、?」
「遅いってぇ!!!!」
「痛い痛いちょっと痛いって!」
そんな他愛もない話をしながら、イリアは口を開く。
「1年でも、何年でも………ずっと待ってるからね!」
「おうよ! 待っててくれ!」
そう俺が答えた瞬間にパァっと明るくなったイリアが「うん!!!」と元気よく答えた。
まぁこれで一安心だな。大体の人にはあいさつできた。
多分ナイツのみんなには旅をしてる最中に会えるでしょ。
「んじゃイリア、じゃあまた!」
「ばいばいーー!!!!!」
「よいしょっと、クロエ
行くぞ」
『わかった』




