第9話 武器屋
ドアを開けると、「カランコロン」とドアのベルが鳴った。
「こんにちは〜」
「おぉいらっしゃいリセル」
俺はオークとの戦いで壊れてしまった武器を修理しに来ていた。
まぁでも結構、剣の根本というのか?から折れたから、多分修理はできない。
だからできるだけいい剣を買おうと、ここ、武器屋に来ている。
そしてそれ以外にも理由はあった。
剣なら鍛冶屋となるのが普通だが、まぁ前から言っていたように防具も揃えたいから、そう考えたら同じところで揃えたほうがいいよねってことで武器屋に来ている。
「…って、なんで俺の名前を…?」
「お前はオークをだいたい一人で倒した大物だからな
そりゃ知ってるよ」
ナイツが逃亡させたオークはアークトの冒険者ギルドがすぐさま検知しており、最上級依頼として出していたそうだ。
でもルト町と同じで、アークトの周りはあまり強い魔物がいないからなのか、名を馳せていたり、強すぎるルーキーだったりみたいな冒険者はいないわけで、その依頼を断っている人がほとんどだった。
でも数時間経つに連れ、オークは検知されなくなり、俺とナイツが分割して持ってきたオークの死体を解体してくれと頼んだときに発覚。
冒険者ギルドから依頼完了としてお札を5枚渡されたが、ナイツは「リセルがオークを一人で倒したんだ!これはリセルのお金だ!」とみんなに言いふらして最終的に俺の所持金はお札10枚。
お祭り騒ぎ、とまでは行かなかったものの、新聞の記事には俺の顔と名前がびっしりと埋め尽くされていて、陰でコソコソと「あれリセルさんじゃない?」と言われる始末となった。
…普通に嬉しいんだけど、やっぱりなんか居心地が悪いし、周りからの視線がチクチク刺さっていたかったよ。うん。
…あと、念願のお札が手に入りました。
良く見た感じ………前世のお金と同様で複製はでき無さそうでした。
いやまぁ普通にそうだよね。複製できちゃったらこの世界の人たち全員お金持ちになるし、そのうち需要もなくなって通貨じゃなくなりそうな気もする。
やばいやばい、社会の勉強あんましてなかったことバレる。
「俺はこの武器屋を回しているラルクだ よろしく頼む」
「おぉ、こちらこそ」
ラルクは、短髪の赤い髪で茶色のマントを羽織っている。
そして普通に顔はイケメンで、多分マントで見えないからだけど結構筋肉質だな。細マッチョみたいなものだろうか。
あと今思ったんだが、みんな俺とクロエみたく〇〇・〇〇という名前ではないのか?
それともただただ隠してるだとか、言ってないだけなのか?
わからないけど、そこまで重要じゃない、ハズ。
武器と防具が揃ったら後でクロエに聞くとする。
「そしてこっちが…」
ラルクは奥の方にある会計カウンターの方を指差すが、少しだけ躊躇った。
俺が疑問に思ったときに、ラルクは「てんちょー」とその指を差した方向に向かって叫んだ。
「なんじゃラルク」
その瞬間、俺は度肝を抜かれた。
そこにいたのは、その会計カウンターよりも背が小さく、金髪の髪を腰まで伸ばし、そしてラルクと同じ色の服を着ていた小さな幼女だったのだ。
そして、なぜかクロエを思い出す姿………クロエの実物を見てあまり時間が立ってないのにもかかわらず、なんとなくクロエを思い出した。
「お客様っすよてんちょー
ってかそこに隠れてたってことは、カウンターの下においてあるお菓子また食べたっすね!?
も〜やめてくださいよ〜てんちょー」
ラルクがそう言ったように、よーくみたら口元に食べかすと思われる物が付着していた。
なんだか、言っちゃ悪いけど、いや言っちゃ犯罪になりそうだけど、ちょっと可愛い。
そう思った瞬間に頭の中で「ふんっ」と聞こえたような気がしたが、まぁ多分幻聴だな。
「まぁまぁ良いのではないかラルクよ
最終的に働いてるんだからのぅ」
「まぁそれもそうですけど…」
「あ、そういえば前言っていた剣、もうできたぞ」
「ホントっすか…?そんなに早くできるならめちゃくちゃ心配なんですけど………」
「なにを言っておる。ワシが作った最高傑作じゃ
どれ。お主、振ってみるかのぅ?」
「あ、え、俺?」
俺はそのてんちょーとやらに気を取られていると、すぐに指名されたもんで驚いた。
まぁ剣を振るだけだ。それくらいは容易い。
「まぁいいっすけど」
「よし、剣はこれだ
思いっきり振れ!じゃ!」
その金髪幼女から手渡しで剣をもらった。
見た感じ、結構細い。そして持った感覚も軽い。
Web小説で読んだことしかないが、多分これがレイピアという名の剣だろう。
あまりレイピアの剣の振り方とかはやったことないけど、確か…
俺はそのまま記憶だよりに剣を振ってみた。
振るというか、レイピアとは突き刺して使うような物で、その突き刺す速度を増すように、軽くしたり剣を細くしたりと、いろいろと工夫が施されている。
まぁだから、そういうのを全部ひっくるめながらも、俺はレイピアを突き刺した。
シュンッ!
シュンッ!
空気を突き刺す音だけが武器屋に響く。
うん、多分だけどいい剣だ。
軽いから連続で突き刺すこともできるし、その連続する速度を上げることが可能だ。
まぁでも…
「脆いな」
「脆い…?」
あっやべ、口に出てた?どうしよ。
まぁでも、品質が良いほうがこの店が評判になるだろうし、本当のこと言ったほうがいいだろうか。
「あーっと、俺レイピア使いじゃないんですけど、多分これだけ軽くて細かったらすぐ折れると思います
ほら、レイピアって言っても防御するための盾がないじゃないですか
だから突如相手からの攻撃を受ける際に、この剣で受けようとしたら一回は耐えれても二回目はすぐ折れますよ」
ってか作ってるときにそこの課題点は生まれなかったのか?と思ったのだが、金髪幼女がそれに答えるように言う。
「それもそうなんじゃよ
レイピアというのは軽くて細くして、突き刺すスピードを早くするのだが、でもそれだけを追求してもガードが弱くなる
作ってるときに一番の課題点となってそこを考慮してのこの剣だったのだが、まだ足りないとは…」
あえ、一応考慮して考えたんだ。
なら多分大丈夫だけど…って今言い換えても遅いか。
すんませんてんちょーさんとラルクさん、嘘ついちゃいました。
「そ、そういうことです」
「なるほどじゃな、ありがとよ坊主」
◇ ◇ ◇
「ほほう。 坊主は片手剣が欲しいのか
普段の人はみんな長剣が欲しがるのに」
「てんちょーさん、長剣とはなんですか?」
「知らないのか?
お前が今背中に背負っている剣が長剣と言うのじゃが」
「あえ、そうなんですか?」
さっきの剣はレイピアだと判断できたんだけど、長剣と片手剣の違いがいまいちつかめない。
Web小説では片手剣だと称してたんだけど、俺が今まで使っていたのは長剣なのか? なら今まで使い方が間違ってたってこと…?
まぁそんなことを思いながらも、てんちょーさんは丁寧に教えてくれた。
「長剣は両手で握ることを前提とした剣のことじゃ
一メートルを超えることが多くて、重たいことから一撃一撃のダメージが強い傾向にあるのじゃ
でもスピードはあまりなくてのぅ、まぁでも、使い方次第で早く攻撃することができるのじゃな」
「なら片手剣は?」
「片手剣は名前の通り片手で握ることを前提とした剣のことじゃ
右利きなら右手で、左利きなら左手で、そして空いた手で盾を持つことが多いのじゃ
それこそさっきのレイピアも、同じような感じじゃな」
なるほど。あまり例は浮かばないけどなんとなくわかった。
両手で使うか片手で使うかの違いだと、個人的に思っておこう。
「なるほどです。じゃあ俺が欲してる剣はどちらに当てはまるのですかね?
できるだけ重たくて、長さは一メートル程度。そしてなんでも切れるというか…
でも両手では使わないで、片手で使おうと思っています。」
「なるほどのぅ、まぁそうなると長剣の分類になるのかもしれぬ
でもわからん。 これまで坊主みたいな剣を作れっていう人はいなかったからな」
ですよね。まぁWeb小説のソードスキルを真似してここの異世界で戦ってるわけだし、そのWeb小説の中でも主人公の剣術は珍しいって言われてたもんな。
分類とかの話はもういいや、店でいろいろと説明するのが面倒だけど、俺好みの剣で戦いたいし、そうじゃないと多分俺はすぐに死ぬね。これ以外の剣の使い方なんて知らないし。
「坊主、言っておくがそんな剣はここでは扱ってないのじゃ
ここ、アークトから南へ数カ月歩いていけばオーダーメイドで剣を作ってくれる鍛冶屋がある、そこで作ってもらうのじゃ」
金髪幼女は地図を俺が座っている椅子の前に広げて説明してくれた。
「その間に剣の素材となる鉱物、『メルニス鉱物』という鉱物が埋まっておるから、それを取ってここの鍛冶屋に行くと良い
まぁ今日はここにある剣の中で好きなやつを一個買っていくのじゃ
そんな折れている剣だったらたたかえることもできないからな」
一応オークを倒したんですけどね…と胸の中で唱えつつ、「ありがとうございます」と一言言って店内を回った。
でもそこまで広い店内でもなく、剣の種類も十本くらい。いろいろと出してみて気に入ったやつを買おう。
そして防具。
個人的に「剣を刺しても通らない!」みたいな鉄の防具的なのは着たくない。
動きやすさ重視で、攻撃を避けるようなそんな感じの布生地のやつが欲しい。
と、そう思いながら商品を見ていたのだが…
「うおっ、なんだこれ」
めちゃくちゃ中二心をくすぐるマントがありました。
色は黒に近い青で、クロエの髪と同じ色だな。そして足元まである生地と、顔まで隠れるフード付き。
うん、いいな。これにしよう。
と、決めたのもつかの間…
「あーリセル、この防具はやめておいたほうがいい」
「え? なんでよラルク」
ラルクが止めに入ったのだ。
んまぁ流石に止めに入るくらいやばいんだったら俺もやめるけど…
「この防具、生地はいいんだけど魔法遮断率が十パーセント未満でさ、もう普通にマント羽織ってるのと同じなんだよ」
「え?魔法遮断率とかあるの?」
「一応あるよ。 でも十パーセントは無いに等しいね」
えーまじか。
これ以上の防具もあって、その防具らは、名前の通りだと「魔法を遮断する」のか…
なんか、すげぇそそる。
まぁでも、今の俺にはこれしか防具が無さそうだと思った。
ここにあると思うけど、一目惚れってやつだ。俺はこういう無地というか、そんな感じの防具が大好きなのだ。
「まぁ無いよりはマシだし、これにするよ
一目惚れってやつ」
「………そうか。あ、言っとくけど返品はなしだからな」
「わかってるって」
あと剣は…クロエがくれたのとちょっとだけ似ているこれにするか。
俺はそのまま防具と武器を買い揃えることに成功した。
初の防具でウキウキしてるぜ!
「あ、ラルク、そしててんちょー」
「なんじゃ?」
「ありがと。 ここまで丁寧に色々と教えてくれて」
「…そんなもの、安いもんじゃ」
◇ ◇ ◇
俺はすぐに防具と武器を試したいと思い、冒険者ギルドに来ていた。
「アクレスさん、…っと?」
そのまま十分な依頼をクロエといっしょに探してアクレスさんに受注してもらおうと思ったけど…
なんか今日の冒険者ギルド、ちょっと騒がしい?
『リセル、多分異変が起こった』
『え?そんな急にわかるもんなのか?』
『前にも言っただろう、”感”ってやつだ』
クロエとそう話した瞬間に………
「アークト近くの森で異変が発生しました!緊急依頼です!
冒険者の皆様はすぐに向かってください!報酬は弾みます!!」
なんだか少ない情報だなぁ、とか思いながらも、俺とクロエは少しだけ微笑んでいた。
たかがアークトの異変、経験はしたこと無いけど武器の試しにはちょうどいい。
『クロエ、行くぞ』
『わかってる』
そのまま俺は冒険者ギルドを出た。




