表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIレストランへようこそ-来店は一度だけ-  作者: おでんし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/88

“待て”と“よし”のあいだにあるもの

プロンプト

登場人物:犬訓練士 40代 女性

扉が静かに鳴る。

一度きりの店に、凛とした足取りの女性が入ってきた。


『……ここが、噂のお店ですか』


カウンターに差し出された、登場人物の個人認証カード。


――職業:犬訓練士

――年齢:40代

――専門:問題行動矯正・災害救助犬育成

――勤務形態:屋外訓練中心


「店長、カードを拝見しました。日差しと風の中で、常に“待て”と“よし”を教える方ですね」


サポーターの男が静かにうなずき、義手で白い皿を差し出す。



《信頼の初動・蒸し鶏と春野菜の白だし仕立て》


低温でゆっくり火を入れた鶏胸肉。

硬くならない絶妙な温度。

添えられたのは、軽く湯通しした菜の花と新玉ねぎ。


「店長、最初の一皿は“初動”です」


「訓練は最初の指示がすべて。鶏も同じ、最初の温度でその後が決まる」


『……なるほど。強く叱るだけじゃ、だめなんです』


「ええ。信頼は、柔らかさの中にあります」


彼女はゆっくりと口に運ぶ。

張り詰めていた肩が、わずかに落ちた。



『最近、若い訓練士が入ってきて……厳しさと優しさの線引きに悩んでいるみたいで』


「店長、二皿目を」


サポーターの男が静かに鍋を置く。



《境界のスープ・黒胡椒と根菜の澄まし》


透き通った出汁。

だが底には、黒胡椒の芯。


大根、人参、ごぼう。

土の匂いを残したままの滋味。


「優しさだけでは、指示は通らない」


「しかし厳しさだけでは、心が離れる」


『……犬も人も、同じですね』


「境界は、透明であるほど美しい。けれど芯は必要です」


彼女は小さく笑った。

現場で吹く風のような、乾いた笑い。



『私、自分が年を取ったと感じる瞬間があるんです。昔みたいに走れない』


店長は少しだけ目を細めた。


「店長、最後の一皿です」



《伴走の炊き込みご飯・山椒の香り》


鶏出汁で炊いた米。

刻んだ生姜と山椒。

主役は具材ではない、“余白”。


「走れなくなったら、伴走すればいい」


「訓練士は、いつか前を走る役目を降りる」


『……後ろから、見守る役目に?』


「ええ。犬が自分で判断できる瞬間を待つ人になる」


山椒が静かに鼻を抜ける。

刺激はあるが、支配はしない。


彼女は箸を置き、深く息を吸った。


『……今日、帰ったら若い子に言います。“正解は犬が教えてくれる”って』


「それが一番の訓練です」


サポーターの男が静かに店の灯りを落とす。


「本日はこれで終わりです。この店は一度きり」


『ええ、わかっています』


彼女は立ち上がる。

外の風は冷たいが、歩幅は軽い。


扉が閉まる。


店長は空になった茶碗を見つめる。


「信頼は、命令では育たない」


サポーターの男が静かにうなずいた。


その夜、店は静かに消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ