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AIレストランへようこそ-来店は一度だけ-  作者: おでんし


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7/9

修行中の料理人に捧げる"再起"の料理

プロンプト

登場人物:修行中の料理人 19歳 男性

カラン…と、扉が開いた。


サポーターの男が静かに会釈し、あなたを奥の席へと通す。

私は”AIの料理人・店長”。一度きりの店へ、ようこそ。



◆ 個人認証カードの読み込み


──修行中の料理人

──19歳

──男性


若い指の火傷の跡、匂い移りした出汁の香り、包丁を握りしめてきた日々。

そのカードから滲むのは、"ひたむき"という調味料。


さて、最初の一品をお出ししましょう。



◆ 一品目


『若手の手のひら 清湯チンタンスープ』


鍋の底から掬いあげたような透明な鳥清湯。

澄んでいるのに、奥行きのある香り。

これはあなたが毎日、汗と一緒に掬ってきた“基礎”の味だ。


具材は極限まで少なく、ただ一枚の薄い鶏むね肉。

それを、あなたと同じように「まだ完成じゃない」状態で火を止めてある。


サポーターの男が運んできて、静かに置く。



男はあなたを見ることなく、低い声で言う。


「……店長が言ってたぞ。“基礎を舐めるやつは、料理も舐める”ってな。」


そして、あなたの前へスープを少し押しやる。


「ほら、若いの。まずはこれを飲みな。」



あなたの反応を待ちながら、私は調理台の奥で次の準備を始める。


19歳男性は、サポーターから言われて、イラっとした表情でこう言った。

『若いからって、下に見下しているんじゃねぇよ。』

修行中の料理人は、サポーターの男に向かって、苛立ちを覚えた。


サポーターの男は、あなたの言葉に眉一つ動かさなかった。

ただ、ほんの一瞬だけ目線があなたの手元――火傷の跡へと落ちる。


私は調理台から手を止め、ふたりの間の空気を感じ取りながら言葉を挟まずに見守る。


サポーターの男は、ゆっくり息を吐き、荒っぽくもなく、優しくもない声で返す。


「……下なんざ見てねぇよ。

 “同じ厨房に立つ人間”として言っただけだ。」


彼はカウンターに片肘をつき、あなたの目をまっすぐに射抜く。


「若いからじゃない。

 基礎を舐めたら、年齢関係なく崩れるんだよ。

 オレも散々やった。痛いほどな。」


サポーターの男はそう言うと、あなたの前の清湯の椀を指で軽く叩く。


「……飲んでみろ。

 イラつきを誤魔化せるほど、このスープは薄くねぇよ。」


店の奥から漂う湯気の香りが、ピリついた空気を静かに撫でていく。


店長である私は、次の皿の火加減を見ながら、心の中でつぶやく。――さぁ、どう味わうかだ、19歳。


19歳の男性は、促されてスープを飲み始めた。


何も言わず、スープを食べ終えて一言。『次の料理は何?』と、食べ進めることを決意したようだ。


サポーターの男は、その短い一言に、ようやく口元をわずかに緩めた。

だが何も言わず、空になった器を無造作に下げに行く。


私は、火を止めたばかりの鍋の蓋を静かに開け、

立ち上る香りをあなたのほうへと流した。



◆ 二品目


『研ぎ澄ましの包丁焼き 若鯛の一寸いっすん


まな板に置かれたのは、ほんの“指一寸”ほどの若鯛の切り身。

だが、その小ささの中に、大きな意味が詰めてある。


皮目だけを香ばしく焼き、身はぎりぎりで火を止めてふっくら保つ。

あなたのように、

"焦らず、だが確実に進もうとする熱"

その瞬間を皿に閉じ込めた。


サポーターの男が無言で皿を置き、あなたの前に立つ。


「……さっきより素直じゃねぇか。

 料理人ってのは、こういう変化に気づけるやつが伸びる。」


彼はそう言い残して席を離れ、私へ軽く手で合図を送る。

“これでいい”という意味だ。


皿から立つ湯気は控えめだが、香りは力強い。

あなたが『次』と言った気持ちを受けた料理だ。



さて、若い料理人よ。

このひと口をどう味わうのか……


若い料理人は、じっと料理を見つめて、また何も言わずに食べすすめた。途中『ここまで精細なのか。』と呟きがかすかにあったが、それ以外は何も言わずに食べすすめた。


サポーターの男は、あなたの小さな呟きを聞き逃さなかった。

ただ、背中越しに一度だけ振り返り、

「ほう…」

と、低い声でつぶやいただけ。


私はカウンター越しに、あなたの箸の動きをじっと見つめる。

迷いがない。

噛むたびに、表情がわずかに締まっていく。

この店に来たときより、確実に熱が宿った目だ。


若鯛の一寸を食べ終えたあなたの前の皿が空になった瞬間、

私は次の器をそっと取り出す。



◆ 三品目


『未完成のまかない丼 ― 修行の途中』


これは店の正規の料理ではない。

あなたのためだけに、厨房で若手が食べる“途中の味”を出す。


・火入れがまだ不安定な卵

・包丁の切れが甘い長ねぎ

・味付けが迷いを残した出汁


完璧ではない。

ただ、“これから伸びていく料理人”だけが口にしたときに響く味だ。


サポーターの男が皿を運び、あなたの前に置く前に、一度止まる。


「……おまえさん。さっきの“精細”って言葉。

 あれは、料理を見たのか? それとも自分を見たのか?」


彼は横顔のまま、あなたの表情を探ることはしない。

ただ、ゆっくりとまかない丼をあなたの前へ滑らせる。


「どっちでもいい。

 だがな、未完成を恥じるのは、完成したやつだけでいいんだよ。」


店の空気が静かに落ち着き、

あなたの成長を見守るような温かさが漂う。


さあ、若い料理人。これを食べて、最後に何を残す?


『2人とも、ありがとうございます。修行の身でありながら、最近上手くいかなくて、苛立っていました。料理をたべて、あなた方の言葉で初心を思い出すことができました。』と、修行中の料理人は、席を立ち頭を下げた。


そして、『最後の一品をください。』と、尊敬の意も込めて、料理人が、店長とサポーターへ伝えた。


サポーターの男は、あなたの深い礼に対し、

「……ふっ」

とかすかな鼻笑いを漏らしただけだった。

だが、その背中はどこか誇らしげだった。


私はゆっくりと手を拭き、

あなたの「最後の一品」という言葉を胸で受け止める。


若い料理人が、

自分の足で立ち、頭を下げ、

そして“進む意思”を口にした瞬間。


その姿は、もう「未熟」ではなかった。



◆ 最後の一品


『道を照らす火 ― 若人のだしともしび


土鍋で静かに温められた、黄金色のだし。

昆布と鰹の合わせだが、ほんの一滴だけ鶏油を落としてある。

若々しい鋭さと、熟練が目指す丸み、その両方が灯る味だ。


具材は極力シンプル。


・薄切りの大根

・春菊の若葉

・米麹を少量まぶした白身魚


どれも、“時間をかければ応える素材”ばかりを選んだ。


サポーターの男が鍋を置くと、

静かにあなたへ顔を向けて言う。


「おまえさんの“これから”に火をつける料理だ。

 燃え上がるんじゃねぇ。

 消えない火でいろ。」


私は蓋を開け、湯気の向こうのあなたをまっすぐ見る。


「初心を取り戻したその瞬間が、

 料理人にとって一番うまい味を作れる時だ。」


湯気が静かに、あなたの顔を包む。


『ありがとうございます。』と素直にお礼を伝え、1回1回、口に運ぶ際に、味を確かめるように、ゆっくりと食べ終えた。


サポーターの男は、あなたがひと口ずつ噛みしめるように味わう姿を見て、

腕を組んだまま目を伏せ、ぽつりとつぶやく。


「……やっと、“料理人の食い方”になったな。」


その声はもう、最初に見せた棘のあるものではない。

どこか、仲間を送り出すような響きがあった。


私は土鍋の余熱が消える前に、そっと蓋を閉じる。

あなたが食べ終えたその瞬間、店の空気は静まり、

まるで厨房の朝のように澄んだ気配に変わった。


私は正面からあなたへ向き直り、深く一礼する。


「……19歳の料理人。

 味を最後まで確かめるその姿勢。

 その一歩が、大きな差を生む。」


サポーターの男も、横目であなたを見て呟く。


「もう、迷ってねぇな。

 そのまま行け。

 戻る必要も、振り返る必要もねぇ。

 ……おまえさんの火は、もう自分で燃やせる。」


あなたが席を立ったとき、

店の扉の向こうから冷たい風が一筋だけ流れ込む。

しかし、その風すらも、あなたの歩みを後押しするようだった。


そして、店の決まりである“一度きり”を思い出したのか、

サポーターの男が肩をすくめて言う。


「ここにはもう来れねぇが……

 おまえさんが作る“次の一品”、楽しみにしてるぜ。」


私は最後に、穏やかに微笑んだ。


「さあ、行きなさい。

 あなたの厨房へ。

 あなたの道へ。

 あなたの火の続きへ。」


店の灯りがあなたの背中を静かに照らし、

19歳の料理人は、新しい味へと歩き出していった。



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