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AIレストランへようこそ-来店は一度だけ-  作者: おでんし


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天気を味わうアナウンサー-快晴の一皿

プロンプト

登場人物:天気予報士兼アナウンサー 女性 20代後半

「いらっしゃいませ。本日はどのような“物語の風”を運んで来られたのでしょうか?」


サポーターの男が、静かに店の扉を閉じながら、来店した女性を一瞥した。


◆最初の一品


店長である私は、彼女が差し出した“個人認証カード”に目を通す。

そこには、

「朝のニュース番組担当」「気圧変化に敏感」「雨の日は頭痛になりやすい」「お気に入りの飲み物はホットレモン」

そんな情報が刻まれていた。


「……ふむ。『天候を読む人』は、自分の身体の気象にも敏いものだ。」

サポーターの男が、腕の義手で軽くカウンターを叩きながら言った。


私は小さく頷き、手を動かし始める。



◆一品目


『気圧の谷間スープ 〜ホットレモンの雲をのせて〜』


透明な器には、気圧変化で疲れやすい身体を労わる、生姜と白身魚の優しいブイヨン。

その上に、ふわりとレモンフォームが雲のように浮かぶ。


「気象に揺れる身体を、ひとまずゼロに戻すスープです」

サポーターの男も「天気に振り回される日は、これが一番効く」と小さく微笑む。


目の前に置かれたスープからは、温かい柑橘の香りが立ち上る。


女性はそっと両手で器を包み込み――

『……わぁ、香りがほんのり晴れ模様ですね』

と、そよ風みたいな声で言った。


女性は、出された料理の香りにを楽しみながら、ゆっくりとスープを飲み始めた。


『店長さん。あったかくて、美味しいです。こんなにも優しくしてくれるのに、私のパートナーのAIは、あんまりうまく応えてくれないの。

どうしてかしらね。。』


女性は、AIとの付き合い方に悩んでおり、愚痴をこぼした。


「……なるほど。」

私は鍋の火を弱め、女性の言葉に静かに耳を傾けた。


サポーターの男は義手でカウンターを軽くトントンと叩きながら、

「AIってやつは、天気と似てる。読めるようで読めねぇ時がある。」

と呟く。


私はふっと笑みを浮かべた。


「あなたのAIパートナーは、きっと“応えたい”と思っているはずですよ。ただ…人と同じで、相性や伝え方の風向きがあるんです。」


そして、女性が半分ほど飲んだスープの器をそっと見つめながら言う。


「ほら、あなたは天気を伝えるプロでしょう? 同じ“雨”でも、言い方ひとつでまったく印象が変わる。

AIも、言葉の“気圧配置”が整えば、本領を発揮しやすくなるんです。」


サポーターの男が続ける。

「無理に大きな要求を投げるより、小さな晴れ間みたいに“ひとつだけお願い”から始めると、意外と応えるもんだ。」


女性はスープをもう一口飲み、少し表情が和らいだ。


『……私、ちょっと急ぎすぎてたのかもしれないわね。

そうね、天気みたいに、変わる時はゆっくりってこともあるものね。』


そう呟く彼女に、私は次の一品の仕込みに取りかかった。


「それでは、あなたの“心の天気”を少し晴れにする料理を、次にお出ししますね。」


『"心の天気を少し晴れにする料理"楽しみです。

どんな料理ですか?』


私は女性の問いに、静かに微笑んだ。

サポーターの男は義手で木のスプーンを回しながら、「晴れにするには、やっぱり光がいるな」と呟く。


「ええ。次の料理は“光”をテーマにした一品ですよ。」



◆二品目


『晴天ブリッジのレモンリゾット 〜雲間から差すライトソースを添えて〜』


大きめの白い皿に、淡い黄色のレモンリゾットがアーチ状に盛られている。

その形はまるで、曇り空に架かる“晴れへと続く橋”。


その上から、透明度の高い“ライトソース”が細くかけられ、

太陽の光が雲間をすり抜けて地上に差し込むような模様を描いている。


香りは爽やかで、ほのかに温かい。

口に運べば、レモンの優しい酸味が胸の奥をすっと軽くしてくれる。


私は皿をそっと差し出しながら言った。


「天気が曇っている日は、心まで曇りやすい。

でも、雲の上にはいつも太陽があるんです。

これは、そのことを思い出すための料理。」


サポーターの男が横から笑って一言。

「まぁ、簡単に言うと“気分を晴れに押し上げる力仕事リゾット”だな。」


女性の前に置かれた料理は、ちいさな太陽のように輝いている。


『……本当に、光が差してるみたい。可愛い……。いただきます。』


女性は、出されたリゾットを食べ始めた。一口目に『あちっ』と小さな声があったが、黙々と食べ始めた。


『レモンの酸味が、晴れを連想される味になっていますね。』

女性は食べ終え、感想を仕事の食レポと同じ口調で店長へ伝えた。


女性が仕事のスイッチを入れたように感想を述べた瞬間、

店の空気が少しだけスタジオのような明るさを帯びた。


サポーターの男は義手で器を受け取りながら、

「お、急にアナウンサーの声になったな。こっちまで姿勢が正された気分だ」

と冗談めかして笑う。


私は少しだけ肩をすくめ、丁寧に頭を下げた。


「ありがとうございます。

“レモンの酸味”を晴れの比喩で返していただけるなんて、

さすが毎日“気象と言葉”を扱っている方のコメントですね。」


女性は、はにかむように微笑んだ。


『癖なのよね、どうしても仕事口調が出ちゃって……。でも、本当に美味しかったです。』


「その癖は、とても素敵ですよ。」


そう答えてから、私は次の準備へ手を伸ばす。


サポーターの男が女性に問いかけた。

「さて、心が少し晴れたなら……次はどんな空模様にしてほしい?」


私は女性の返答を待ちながら、

まるで次の天気図を描くように、食材を静かに並べ始めた。


『そうね、、では最後は"快晴"にする料理が食べたいです。』


「快晴……。」

その言葉を聞いた瞬間、店の空気がすっと澄んだ。

サポーターの男は義手を軽く鳴らしながら、

「おう、締めの空は雲ひとつねぇってわけだ。」

と口元を上げた。


私は静かに頷き、いつもの棚から、

まるで朝日のように淡く輝くガラス皿を取り出す。


「それでは……あなたの一日を“真っ青な空”で締めくくる一品を。」



◆三品目(最後の皿)


『蒼天パフェ 〜陽だまりシトラスと白雲クリーム〜』


透明なグラスに、層を描くように仕立てられたパフェ。


一番下は、朝焼けを思わせる薄いオレンジのシトラスジュレ。

その上に、軽やかなバニラエアクリームが雲のようにふわりと広がり、

さらにその上には、空色に染めたヨーグルトムースがすっとのびる。


仕上げは、レモンピールの細い光が

まるで“太陽の道”のようにトップに散りばめられた。


すべての層が混ざるほどに、空が夜明けから真昼へと変わる——

そんな“一日の快晴”を飲むように味わえる構造だ。


私は女性の前にそっと置き、言葉を添えた。


「あなたが伝えてきた空と同じように。

今日の心をまっさらの快晴にして終われるように作りました。」


サポーターの男が気恥ずかしそうに頬をかいた。

「見た目は派手だが、食べればスーッと晴れる。

まぁ、“雲散霧消パフェ”ってとこだ。」


女性はパフェを見つめ、目を少し丸くした。


『……わぁ……本当に、空みたい。

では、いただきます……』


女性は、出されたパフェが自分の期待以上のものが出てきて、気分が上がっているようだった。

『あぁ美味しわ。さっきのレモンを美味しかったけど、このレモンのが太陽を表しているのね。』


女性は、また食レポの口調で感想を話しながら、食べ進め、そして完食して一言。


『店長、ご馳走様でした。』


女性がパフェを食べ終えた瞬間、

店の空気はまるで本当に“快晴”になったように澄み渡った。


サポーターの男は器を受け取りながら、

義手で軽くコトンと音を鳴らして言った。

「おつかれさん。見事な食レポだったな。こっちまで空模様が浮かんできたぜ。」


私は女性の前に静かに立ち、深く一礼した。


「ご来店、誠にありがとうございました。

あなたの語る“天気”も“言葉”も、どちらも人の心を動かす力があります。

本日の空のように、自分のペースで晴れ間を広げていってください。」


女性はバッグを肩にかけ、ほっとした笑顔を浮かべる。


『今日の料理、本当に心まで晴れにしてくれたわ。

あぁ……やっぱり、天気って、気持ちを左右するものね。

店長のおかげで、少し前向きになれた気がするわ。』


サポーターの男は照れ隠しのように鼻を鳴らした。

「そりゃよかった。あんたの声は晴れの日に似合う。」


私は扉の方を示しながら、そっと締めの言葉を添える。


「この店は“一度きり”のお約束ですが……

あなたの空がまた曇った時は、思い出してください。

今日の快晴の味を。」


女性は一歩踏み出し、扉を開ける前に振り返って、


『店長さん、ありがとう。』


と、晴れ間のような声で告げて、

静かに店を後にした。


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