二話 これは夢?
立っている俺に大臣は席に座るように促した。
俺が座ると話し始めた。
「紹介しましょう。王国軍幹部のリィーナと16魔道師の一人ケイ君だ。今日から君の訓練を担当してもらうことになりました。」
「よろしくお願いいたします。」
「では、私は顔合わせが終わったので帰ります」
帰るのかよ。
なんだ、大臣も訓練に参加する訳じゃないのか。
「よろしくな、私は剣術担当だ。魔力はケイに教えてもらってくれ。」
「と言うことですので、これから魔力の使い方を教えます。まず、私達は身体強化魔法を使い、物理で攻撃するのが一般的です。それを今から教えます。」
「魔法をいきなり教えるんですか?」
「いいえ、身体強化魔法は魔法ではありません。これは魔力を全身に循環させ身体能力を上げるだけです。」
そうなのか、個人的にはファイア!とかやりたかったけどな。
さっさと魔法を使えるようになってやろう。
「魔法は身体強化魔法よりも術式を覚える必要がある分、荷が重い。基本は身体強化と物理で戦うんですよ。」
「はあ、分かりました。どうやれば良いんですか?」
「この箱を両手で持ってください。」
俺はケイさんから箱をもらい手に持つ。
「これに右手から左手に力をながすようにイメージしてみてください。」
できるのか知らないがまずはやってみよう。
目をつぶって魔力よ流れろと念じる。
「成功です。目を開けてください。箱が光っているでしょう?今、魔力が流れています。」
「おお、すげえ光ってる!」
「まあ、その箱は魔力を通しやすいよう調整された魔道具です。次は魔剣でやります。」
俺は剣を鞘に入ったまま受け取り魔力を流す。
これも白く発光した。
ケイさんを見ると軽く頷いた。
これも成功らしい。
「ではここからが本題です。これは、ただの鉄剣です。これに魔力を流せるようになれば実戦でも使えます。」
今度は魔剣でも魔道具でもないのか。
自信はないが頑張るぞ。
両手で柄を握りしめ魔力を流す。
なにも起きないな、駄目か。
もう一回!できるまでやってやる。
時間は少しかかったが魔力を流せるようになった。
ケイさんは少し驚いた様子で言った。
「一日で鉄製の剣まで魔力を流しますか。勇者の名は伊達ではないようですね。ここまで魔力操作がうまい人はなかなかいませんよ。」
よっしゃあ、褒められたぞ!
じゃあ次は身体強化魔法か?
その目線を察したのかケイさんはこう続けた。
「いえ、身体強化魔法は今は教えません。それはすぐにできると思いますそれよりかは体力の方がないようですので今から走ります」
ケイさんがそう言ったのを見たリィーナさんが口を開いた。
「その服じゃあ動きにくいだろうからこっちを着てくれ。」
親指で棚の方を指差した。
棚を開けてみるとジャージ的なものが入っていた。
これは運動着か。
「それじゃあ運動場に行くぞ。」
城に運動場なんてものあるのか。
そこには400メートルトラックと思われるものがあった。
恐る恐るリィーナさんを見ると
「これから私が良いと言うまで走るぞ」
と言った。
ぎゃああ、俺有酸素運動嫌いなんだよ!
無酸素運動はせいぜい短時間で終わるからまだマシなんだけどな。
しかし、今回はやるしかない。
俺は文句を言いながらトラックに着いた。
ついでに言っておくとこの運動場は剥き出しの土である。
転ぶととても痛そうだ。いや、どこで転んでも痛いけどな。
数時間後……
俺は木陰で寝ていた。
睡眠ではなく、ただ寝転がっているだけである。
三、四時間ぶっ続けで走ってたぞ?
もう日が傾いて夕方になっている。
召喚されたのが昼の12時で、走り始めたのが午後2時ぐらいであった。
もう筋肉痛で動けそうにない。
そこにケイさんがやってきた。
「つらそうですね。ここは一つ手助けしましょう。『回復』これが魔法です。」
さっきまで鎖で数十個の鉄球に括り付けられたようなダルさが吹き飛んだ。
思わず飛び起き、目を見開いた俺にケイさんは笑顔のまま去っていった。
回復魔法凄いな。やっぱ俺も魔法使いたい!
だが今日は非常に疲れた。
俺はいつの間にか用意されていた着替えやタオルを持ってシャワー室に行く。
シャワーを浴びて戻ってくると部屋には夕飯が用意してあった。
ここは旅館か!?至れり尽くせりだ。
俺は肉体は回復したが、精神的に疲れた体を引きづりベッドに倒れ込む。
今日はまだ9時ぐらいだが寝てしまおう。
明日も早いだろうし。
そう考えながら意識は闇の中に堕ちていった。
※※※
小鳥の鳴き声と共に目を覚ますとそこはリビングだった。
え?さっきまで異世界にいたんじゃなかったっけ?
まさかこれは夢オチかよ!?
あれ、夢オチって廃れたんじゃなかったか?
え、だとすると今日は歴史のテストだ!
しまった、夢のせいで勉強したことが全部飛んだぞ!
教科書はどこ言った?
注意 夢オチではありません