石ころだけですべては解決すると思う(?)
「え?」
え? なにこれ? 俺石ころ投げただけだよな?
すると突然、ポケットがズシリと重くなった。中にはさっき投げたはずの石ころが入っていた。
「なんで………?」
なんで? え? 俺投げたよな? ついさっき?
俺は石ころをまじまじと見つめていた。
すると目の前に、透明なウィンドウのようなものが浮かび上がった。
「うぇ!?」
本日二度目のびっくりである。
よく見ると、何か書いてある。
え~と、なになに……
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固有名:石ころ
所有者:海原コウキ
レベル:1456
ステータス
攻撃力:1456
耐久力:無
魔力:1456
最大投擲飛距離:1456
魔力伝導性:SS
スキル
消費魔力減少:【中】
跳弾
空気抵抗無視【効力距離:現在50m】
忠誠の誓い【主:海原コウキ】
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固有名? 所有者? ステータス?
いきなりそんなことを言われても訳が分からない。
「いったん落ち着こう……」
深呼吸をしてもう一度ウィンドウのようなものを見る。
これは何なのだろうか。俺が知りたいことを視覚化してくれているのか?
俺が「この石ころについて知りたい」と考えた瞬間、急に目の前に現れた……
「うん、よくわからん」
詳しい仕組みはよく分からない。
ひとまずこれを「鑑定」と呼ぼう。
異世界転生とかのラノベで定番の能力だからな。分かりやすい。
俺はもう一度、手にある石ころの鑑定結果を眺めた。
「これはぶっ壊れ……なのか?」
この世界のことはよくわかっていない。
この石ころの数値は異常なのだろうか?
まぁ少なくともただの石ころであんな地形破壊が起こるわけがない
なんで俺はこんな石ころを持ってるんだ?
少なくともこの世界にくるまでは持ってなかっ………………
あ! もしかして!
「まさか、鉄骨が降ってくる直前に蹴った石か!?」
確かにこんな石だったような気がしなくもない。
あまりはっきりと覚えていないんだよな。
確かに俺が、この石を蹴ったら、ロープが切れて鉄骨が頭上に落ちてきたんだよな。
そんでこっちの世界に俺と一緒に来たってところか?
つまり実質この石ころが死因ってことか。いや、まぁ9割ぐらいは石ころを蹴った俺が悪いんですけど。
それにしても、
「投げるだけで地形破壊できる石ころとかもはや兵器だろ……」
俺はボコボコになっている荒野を見ながら呟いた。
そういえば、なんで投げたあと俺のところに戻ってきたんだ?
不思議に思い、石ころの鑑定結果をもう一度眺めているとこんなスキルがあった。
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スキル
忠誠の誓い【主:海原コウキ】
どんなに離れていても必ず主の元へ帰ってくる。
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どうやらこのスキルの効果で石ころが戻ってきたらしい。
「これ……俺自身は鑑定できるのか……?」
なんとなくそう思った俺は、「自分について知りたい」と考えた。すると、目の前にまたもやウィンドウが現れた。俺の鑑定結果だ。
内容はこんな感じ。
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名前:海原コウキ
所有武器:【固有名:石ころ】
レベル:1
ステータス
攻撃力:10
防御力:5
俊敏性:7
New!投擲力:30
魔力:0
スキル
情報開示
投擲力増加【中】
忠誠の誓い【契約物(者)固有名:石ころ】
魔法
なし
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投擲力が異様に高いが、おそらくスキルの影響だろう。
そしてこの石ころ同様「忠誠の誓い」のスキルが含まれている。
このスキルがある限り、この石ころは俺から離れられないということか。逆に言えば、俺もこの石ころから離れられない訳だが。
スキルの欄には「情報開示」というのもある。これが「鑑定」の能力だろうか。
そして目に付くのは「魔力」「魔法」の欄。この世界にはみんなが一度は憧れる「魔法」が存在しているようだ。
そしてこの内容から考えられるのは……
「異世界転生……? いや、新しい体に生まれ変わっているわけではないっぽいから、異世界『転移』というべきだな。でも確かに鉄骨が頭に当たった痛みが………………………………………………まぁいいか!」
過ぎたことは気にしてもしょうがない!! うん!!
人生ポジティブじゃなきゃやってけないときもある!!
「ところで…………俺はいつになったらこの荒野を抜け出せるんだ?」
空を見上げると、太陽のような惑星(?)が沈みかけている。
夜になる前にこの荒野からなんとか抜け出したいな。
そうして俺はまた歩き出した。
――――――――――Side:???―――――――――――――
コウキがゴブリンと戦い、歩き出してから数時間後…………………………
とある冒険者たちがこの荒野に足を踏み入れる。
若い男2人(一人は大剣を携え、もう一人は両腰に短剣を携えている)と女2人(一人は三角帽子をかぶって杖を持っており、もう一人は口元を黒い布で覆い素顔を隠している)の4人パーティーである。
彼らは数キロ走った先に、とんでもない痕跡を見つける。
「おいおい………! なんだこの荒れ具合は!? 前来たときはもっと綺麗だったはずだろ!?」
大剣の男が驚愕をあらわにしている。
「金の魔法エンブレムか、剣のエンブレムの魔物……? これほどまでの破壊力、奴らにはないはず……」
短剣の男が落ち着いた声で行った。
「アレス階級の魔法でも破壊出来ないこの地面を………? いったいなにがあたのでしょう?」
おっとりとした口調で三角帽を被った女は首をかしげる。
「…………あっちまで続いてるわ! 行ってみましょう!」
口元を黒い布で覆った女の言葉に三人は頷き、移動を開始した。