「陽」か「陰」かそれですべては決まる(偏見)
この世界には主に二つの属性がある。
「陽」と「陰」。このどちらかに属すかで、その人の人生は大きく変わる。
そんな訳で、今日から陽キャデビューしようと思う。
ん? 唐突過ぎて意味が分からないって?
俺――海原コウキは陰キャだった。中学までは。
気弱そうな雰囲気に目元まで降ろした前髪、特に目立つこともなかった中学三年間。
しかし! 今日からの俺は違う!
着崩した制服に搔き上げた前髪、かもし出す雰囲気はまさに「陽」!!
「完璧だ……完璧な仕上がりだ!」
と、自室の姿見で自分の身なりを確認していると、
「コウ!学校遅れるわよ!」
という母さんの声。
時計を見ると既に七時半を大きく回っている。
HRは八時十五分から始まるので、あと二十分もない。
「やべっ!」
そう言って俺は急いで一階に降りて玄関へ向かった。
「最近学校の周辺工事してるらしいから、気をつけてねー!」
「はーい!!」
俺は大慌てで家を出た。
四月にしては暑く、前日降った雨のせいでジメジメする。
家から出る前に確認した温度計は、二十七度を示していた。
少し背中に汗をかいていることに顔をゆがませつつ、俺は通学路を走っていた。
家から学校まで、歩いて約三十分。走れば二十分もかからないぐらいなので何とか間に合うだろう。
「はぁ!……はぁ!……あっつ……!」
走りすぎたせいか、少し気分が悪くなった俺は学校近くの公園のベンチに腰を下ろした。
喉が異様に渇く。どこかに自販機はないかと周囲を見渡していると、キラッと何かが光るのが目に入った。
「なんだあれ……」
誰かがお金でも落としたのか……? 俺は吸い寄せられるように、光る何かに近づいた。
落ちていたのは、少し茶色がかった石ころだった。
「……なんだ……ただの石ころか……」
俺はその石ころを蹴飛ばした。
その瞬間、
プツン!!
何かが切れる音がした。
「ん?」
音がしたほうを見るとそこには切れたロープが落ちているわけで、
そして上を見ると鉄骨が落ちてきているわけで、
「ボウズ! 離れろ!!」
遠くから声が聞こえてきたが、俺は動けなかった。
(あぁ……死んだなこれ……)
上から落ちてくる鉄骨がゆっくりに見える。
人間、命が危なくなると周りがゆっくり見えるようになるというのは本当らしい。
頭に鈍い激痛が走ると同時に俺は意識を手放した。
初めまして!あかなおと申します。
小説を読むのが好きで、自分でも書いてみたいと思いこの作品を書き始めました。
もしかしたらおかしい箇所などがあるかもしれませんが大目に見ていただけると幸いです。