表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アストロ・レールウェイ ―火星姉バカ放漫軌道―  作者: 井二かける
第一章 火星行き試運転編 セクション2: エアセクション
20/62

友達


 その後、私たちは渦の重複区間を過ぎたあたりで、一時停車し、車両点検も兼ねてラーメン……もとい救援車の到着を待った。


 意識を取り戻したサリー少尉は、私の活躍を聞いて、ハンカチを噛んでいたという。


 任務に戻った彼女は、私がうっかりセーフモードから戻し忘れた運用主任用コンソールを見て、たいそう驚いたらしい。


「え~?! 私のコンソールに何したの!?」


 クレイ中尉がイタズラ少年のような顔で耳打ちする。


「あいつ、コンソールにすりすりしてたぜ」


 カエルム船長もそれに同調する。


「ああ、至福の表情で涎を垂らしながら頬ずりをな」

「そうなんですね~。ヒカリ少尉とは、あとでじっくり話し合う必要がありそうですね~」


 サリー少尉は満面の笑みで、暗黒オーラを漂わせていたという。正直、その場にいなくて助かったと思う。



 残務が終わり、自室に戻った私は、いつものようにベッドに倒れ込んだ。まだ興奮が冷めやらない。楽しかった。仲間達と死線をくぐり抜けるのがこんなに楽しいことだとは思わなかった。


「ふへへへ~」


 掛け布団を抱きしめながら、狭いベッドをゴロゴロする。


 下段のルナから抗議の声が上がる。


「いい加減、静かにしてください。私は疲れてるんです」

「いいじゃん、楽しかったんだから」

「……ほんと、どうかしてますよ。少尉は」

「かもね~」


 クレイ中尉の言葉を借りれば、私は《《オタク最終処分省》》の役人だから、その辺は仕方ないのである。


 しばらくの静寂の後、ルナは呟くように言った。


「少尉……私は本当に怖かったんです。手を握っていてもらえなければ、きっと私は正気を保っていられなかったと思います」

「それは多分私も同じかも」

「いいえ、違います。少尉は最初から正気じゃありません」

「言うね~」


 頂きました。ルナがツンケンしてないと、生きていけない身体になっております、私は。


 でも今日のルナの声は少し覇気がない。

 

「……私、もう後悔したくありません」

「じゃあ、コ――」

「コンジットの音は楽しめないです」

「じゃあブ――」

「ブロック崩しには興味ないです」

「先回りやめてぇ~」

「少尉の趣味は特殊すぎて私には理解できません。一緒に楽しめるものがいいです」

「じゃあ一緒に探そっか。明日から」

「はい」

「……もし何も見つからなかったとしてもさ、友達でいてほしいな」

「……当然です」



 私は壁に耳を当てる。もしかしたら、ルナもそうしているのかもしれない。


――シャン、シャン、シャン、シャン……。


 いつも通りのコンジットの音がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ