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2話-1
…桐生神子
僕はこの名前が大嫌いだった
だって、神の子って…
おこがましいにも程があるじゃないか
一時期、その名前のせいで虐められたし…
でも、唯一
僕がこの名前が好きになれた時があった
…僕が小学生の頃
怪我をして病院に入院していた時期があった
小学生の僕にとって病院は退屈な場所でしかなかった
けど、
あの子と知り合えた
その場所で…
そして、あの子の名前が霧生神子と知った時驚いた
同じ読みの名字に
同じ漢字の名前
彼女に好意を抱いていた僕にとって
その事を知った時、
言葉に言い表せない様な…何らかの幸福感を得た
…そう、僕は彼女に恋をしていた
…でも、彼女は…
…死んでしまった
その時、僕は淡い初恋と共に
その幸福も失った
だから…
目の前のこの娘は
あの子に似ているだけの女の子であって、
…あの子じゃないんだ
あの子は…
死んでしまったのだから…