7話-3
僕は抵抗しようにも体の全ての感覚は痛覚が支配していた
少女は声を出さずに笑ったまま左手に力を入れる
メシメシとナイフが食い込んでいった
『うああぁあ…ッ!』
あまりにもの激痛に声をあげようにも声があまり出ない
痛みが脳を揺らしていた
気がつくと肩にナイフはなかった
代わりに血と肉が溢れ出ていた
少女はナイフを持ったまま構えをとった
その時、彼女の唇の両端がよりいっそう吊り上がった
一瞬の空白の後に
ナイフがリズミカルに僕の体を貫いていった
まるで、僕の体はダンスを踊ってるように動いていた
僕はすでに痛みをほとんど感じなくなっていた
ほんの一瞬の出来事だったが、
僕はとても長い時間の様に感じた
最後に少女は果物ナイフを僕の胸に突き刺すと
僕の体はそのまま冷たいコンクリートにたたき付けたられた
僕はその時になってやっと死の恐怖に支配された
あまりにも突然で考えが追い付いていなかったからだ
少女は右手のカッターナイフを離して落とすと
真っ赤に染まった自分のパーカーを汚らわしそうに見て、僕の傍まで歩みよった
彼女は冷たい目で僕を見下ろしていた
僕はその時、初めて彼女が誰かわかった
…彼女は
『……ミ……コ……』