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7話-2
…その少女はただ一人無表情だった
周囲が目の前で起こった事故に困惑していると言うのに
少女はそれを好機ととらえた
着ていた真っ白なパーカーのフードを深くかぶり、
パーカーのポケットに両手を突っ込んだ
その時、キリリ…と音が鳴った
そして一度深呼吸をして
人一倍困惑していた……僕に向かって早足で歩み寄って行った
……
『…あ、ああ…か、春日…ァ……
なん…で……』
(…なんで?だって?
そんなの決まってるだろ?
僕が……)
-ドスッ-
『……え?』
その瞬間
僕は何が起こったのかわからなかった
-ズシュ…-
肉と肉の間に摩擦が起こった
その時、やっと僕は情況を理解した
(…僕は……刺されたんだ…脇腹を…
それで今のは…刺した刃物を引き抜いた感覚…)
-ザシュッ-
『がぼ…ッ!』
僕の目の前には少女が居た
少女の右手には血に塗れたカッターナイフがあった
どうやら今度は二本目のエモノで刺されたらしい…
左手には果物ナイフがあった
…僕の右肩に刺さっていた…
フードを深くかぶった少女の口は…
笑っていた




