29/188
5話-3
『退けよ!』
「……」
-ギリッ-
歯を食いしばる音が聞こえた
次の瞬間
-ブォッ-
春日は僕にその拳を振り下ろした
拳は僕の鼻先で止まった
僕は微動だにしなかった
『…殴らないのか?
殴れば気が済むなら殴ればいいだろ?!
暴力女ぁ!!』
「……ち、違っ…」
『はっ!何が違う!
お前はあの時と全く変わってない…!!』
「そ、そんな事…無い…!」
『この際だから言ってやるよ!!
お前は全く人の痛みを理解出来ない…』
-バシンッ-
頬に平手打ちを喰らった
「…違う…こうじゃない…こうじゃないのに…」
『…口よりも先に手が出る…"あの時"もそうだったな…』
「ッ!!」
『…どうした?
自覚してなかったのか?
自分はあの頃の自分じゃないとでも思ってたか?
人がそう簡単に変われるモノかよ!!』
「!!!」
…とても気持ちよかった
彼女を言い負かすのはとても…
状況を見れば追い詰められているのは僕に見えるだろう
だが、精神的に僕は春日美咲を圧倒的に追い詰めていた
とても、気分がよかった
『なんだぁ…?
図星だったか?』
「……止めてよ…シンジ…」
『何をだよ!!
本当の事だろう!?』




