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31話-1
…今はそんな事気にしてる場合じゃない
俺は振り返って美咲の傍に向かった
『美咲!』
「…シンジ…」
(息が荒い…!)
俺は美咲に刺さったレーザーナイフの出力を切った
「…痛…い…痛いの…」
『待ってろ!今、救急車を…』
俺が携帯を取り出した
が、その腕を美咲は掴み
首を横に振った
『諦め…』
「…抜いて…」
『…駄目だ
余計、出血が激しくなる』
「…お願い…」
『駄目だ』
「………そう」
美咲は腕を掴んでた手をだらんとおろした
『美咲…!!』
「…ごめんね…シンジ…」
『え…!?』
「…こんな…
簡単な言葉なのに…
今まで…ずっと言え…なかった…」
『!!
お、おい!何を…』
…嫌な予感がした
こんな時にそんな言葉を言うなんて…
「これで…あの事…チャラになったかな…?」
『……ば、馬鹿!
…チャラどころか
借りが出来たよ…』
「…そう」
『…借りが出来たなら
返さないといけない
だから…生きろよ!』
「…ごめん
無理みたい…
これでその借りはチャラね」
『何言って…!』
「ごめんね…ありがとう…
シンジ……
さ…よ……なら…」
『み…美咲!
美咲ィイイイッ!!』