風が吹けば被害を被る
魔法学園での研究成果が消えた翌日、俺は触れただけで学園のありとあらゆるものを壊してしまった。
俺は彼に声を掛けられ、魔力に関する研究を行っていた。
事件が起きたのはとある日。神への信仰が強い教師が、偶然俺と彼の話を聞いてしまった。研究を神に背く行為と曲解し、憤慨した教師が思いきりドアを開けた。その音に驚いた拍子に隣りにいた彼は持っていた植物を窓から落としてしまった。その植物を取りに行かせないように、教師は怒鳴りながらドアの前に立ちふさがっていた。
研究の成果も信仰に反すると無下にされた。俺達は研究もせず遊んでいたことにされた。絶望した俺たちのことを知ってか知らずか、教師は最後に天罰がくだったと怒鳴り、教師が去った頃には植物は風に吹かれ、辺りに何も残ってなかった。
俺以上に研究熱心だった彼から出た言葉は、案外冷静だった。あの教師に見られないように同じものを作ればいい、今日は寮に戻ろう。また明日用意する。と、これくらい想定内であるかの様な口調だった。
睡眠こそ取れたがモヤモヤした気持ちのまま迎えた朝。起き上がろうとベッドに手をかけた途端、そこからベッドが壊れた。一旦座って落ち着こうと椅子に触ると、椅子が燃えた。目の前で起きた余りにも非現実的な光景は、俺のモヤモヤも破壊された。
水魔法が使える教師に消化してもらいつつ、騒ぎを聞いて駆けつけた彼は、混乱する教師や他の生徒の前で口を開いた。
「実は殺された命の魔力が集約する法則を活かして、毒魔法を応用し、魔族を凌ぐ力を持った人間を一晩で作る実験をしていました。」
魔力のない植物に毒魔法を付与することで、魔力持ちの生物ができるかの研究では無かったのだろうか。驚いた俺が彼を見ると、彼は俺にだけ見えるように、魔王のようにニタリと笑った。
俺は彼の手のひらで転がされてたのかもしれない。