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第五話彼女の・・・

それから・・・


「彼女の・・・」

多分こんな形でなければ、笠原とは友達になれなかったと思う。とても気さくで

話しやすく、仲良くなるのにあまり時間はかからなかった。あの時の緊張がよく

わからない。笠原が部活のない日は一緒に下校するようになった。


「ところで笠原は紙芝居は何をしたい?」

「何の話。」

完全に忘れている。

「六月の始めに近所の幼稚園に行くんじゃん。」

「ああ、忘れてたよ。」

「また、それかよ。」

「ゴメンゴメン。」

笠原ってたまに抜けてるんだよなー。

「沖田君、今日もあそこ行かない。」

「いいね。」

笠原は水切りが好きなので、俺がよく小さい頃に水切りした湖に行くようになっ

た。笠原は正直かなり上手い、八回跳ねさせることもあるほどだ。こつは手のス

ナップらしい。

湖に行くと小学一年くらいの子供が泣きながら立っていた。俺はほっとけなくな

って、

「どうした?」

「湖にお人形落としちゃったの。」

その子供は泣きじゃくりながら言った。

その子の人形は湖の陸地の近くに浮いていたので、俺の手が届きそうだった。陸

地の足をぎりぎりのところまで持っていく。あとちょっと、あと少し、あともう

ちょっー。

「うわあーーーっ」

バッシャーン。

見事に水の中に落下、濡れることを気にしなければ、人形を簡単に取れた。その

子供はとてもうれしそうに笑って、ありがとうと言って帰った。ありがとうを貰

いうれしかったが、全身びしょ濡れはさすがに恥ずかしいし寒い。

「沖田君平気、大丈夫?」

「ああ大丈夫だよ。」

笠原はさらっと

「私の家近いし、よかったら来ない?兄の下着も貸せるし。」

この言葉を言った。


笠原の家は集合住宅の一つ、ペンションのような形の家で彼女に合っていが、

「家狭くない?」

「二人暮しだから大丈夫。」

笑ってはいたけど、目は哀しそうだった。

家の中に入るすぐに浴室に連れていかれながら、以外と冷静になっている自分に

驚いた。浴室の外から、

「兄ちゃんに新しい下着と服を借りてきたのと、後で濡れた服いれるようにビニ

ール袋用意しといたから、かごにいれとくね。」

「分かった。いろいろありがとう。」


シャワーを浴びて着替えた。リビングルームには笠原はいなくて、そこに若い頑

固そうな男がいた。

「いつも妹がお世話になっております。まさか彼氏でないでしょうね?」

この男の眼光が怪しく光る。

「いえ、そんなことはないです。」

必死に答えた。

「これからも友達としてよろしくお願いします。」

友達の部分だけかなり強調して言っていた。

俺はこの時に、笠原と付き合うにはこの壁を越えないしないといけないといけな

いとわかった。



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