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第十話 料理(前編)

更新が遅れてすみません。すみませんが少しずつ書いていこうと思います。


ついに萌が登場します!

「料理(前編)」

今日は約束通り笠原の家で肉じゃがを教えている。

「ほらまたじゃがいも焦げてるよ」

「えへへ、失敗しちゃった」

「えへへじゃないよ。まったく」

と笠原、正直料理が出来ない。魚が地面を歩くほうがまだ可能な気がする。それに比べて……

「沖田君食べてくれたまえ」

「おいしです、さすがですね」

お世辞ではない完璧だ、教えたことを忠実にしてある。材料の大きさや煮込み加減……などなど。妹は大雑把、兄は几帳面。本当に血が繋がっているのだろうか。まったく違うタイプのようなきがする。

「おっとこんな時間か、沖田君ありがとう。私はこれから仕事なので失礼するよ、まあゆっくりしていきなさい」

そう言って、急いで出ていった。

「沖田君。」

「どうしたの?」

「全部焦げちゃった」

笠原に料理は無理だな。


「やっぱり兄ちゃんの料理うまいなぁ」

結局作れず終わってしまった。

「のんきなこと言うなよ、ここまでうまく作れとは言わないけど焦がさないで作るくらいはしてくれよな」

「わかってるよ」

ちょっとすねているのが可愛い。そういえば……。

「この前の続きの話しようか?」

「何の話?」

完全に覚えてないようだ。

「小さい頃の話だよ」

「あの話ね、聞かせて聞かせて」

思い出したらしく、目を輝かして見てきて、俺のめが眩しい。

昌と仲直りした翌日つまり誕生日当日。結局どんなやつが来るのかは知らなかった。昌の友達なら男でも女でもけんか強そうな人がきそうだな。ちょっと緊張してきた。一応朝のラジオ体操で体はほぐしてある。

「徹きたぞ」

びくびくしながら、玄関を覗くとそこには、昌と昌よりひとまわり小さい女の子がいた。態度は百まわりくらい違うけど、緊張しているのか、手と足が同時に動いて顔の下の部分が赤い。まあよかった女の子で、この感じでは大丈夫だな。いや油断大敵、見た目に騙されるな。帽子をすっぽりかぶって、顔が半分以上見えない。しかもこいつが紹介する友達はろくなやつがいなかった。小学二年で筋肉がムキムキな男や、下校中にピンポンダッシュをしながら帰る女などなど。こいつは喧嘩をして顔に大きな傷が出来てるに違いない。

「大丈夫だよ、お前が思っているようなやつじゃないよ。まったく思っていることが顔に出過ぎなんだよ」

呆れたように言った、こいつはすごいとあらためて思う。多分驚いた表情も顔も出ているのだろう。すると昌が、歯に挟まったのが取れないくらいのイライラぐわいで、

「徹、なんか萌に言うことあるんじゃないの?」

「あっ……お誕生日おめでとう」

「あっありんがと」

言った後に元々赤面していた顔が、熟したトマトのように真っ赤になった。それが萌との初めての会話。


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