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ドラゴンと魔石の島に僕等は生きている  作者: ナナイロナイト
第一章
9/60

クーデター

「二人はどこで知り合ったんだい?」

「ジャングルで拾った」

「ジャングルで?」

「そうだ。この坊やが落ちていたんだ。捨てておけないから拾った。行くところもないらしいから、うちで働いてもらうことにした」

「何か事情がありそうだな……」

「……」


 アマリクドは、低い声から一転、高笑いになる。


「ハッハ! どんな事情があるにせよ。資本は体だ。丈夫な体ならどこでもやっていける。どんどん食っていけ!」


 客の事情に深く立ち入らない主義なのか、それ以上聞いてこなかった。


「あの、シシノイブの肉フライが食べたいんですが」

「おっしゃ。待っとけ! すぐ用意する」


 アマリクドは、調理に取り掛かった。


 ――ジュワー……。


 揚げ物の音と香りが漂ってきて、トウゴはワクワクした。


「お待たせ」


 肉フライがテンコ盛りで出てきた。


「こんなに?」

「モリモリ食べてグングン大きくなれよ」


 縦でなく横に大きくなりそうだ。

 シシノイブの肉フライは、衣がサクサク、赤身の肉は滋味に富んでいる。

 トウゴは、旨い旨いと夢中になって食べた。

 たくさんあると思っていたが、あっという間に最後の一切れとなった。名残惜しくて味わって食べた。

 ロアは、追加注文した鉄板焼き肉を食べている。


 店内では、ほとんどが大人でアルコールを取りながら食事をしている。

 静かに飲む人はほとんどいなく、たいていは大声で話している。

 飲み仲間に議論を吹っ掛け、持論を展開する者たち。議論が白熱して喧嘩になりそうだと、アマリクドが「外でやってくれ!」と、注意をする。


 ロアがカウンターを選ぶ理由は、ここならアマリクドが近くで睨んでいて、酔っ払いに絡まれ難いからだ。

 少女一人でいると絶対に声を掛けられる。でも、アマリクドがすぐに追っ払ってくれる。

 この店は安心して利用できるから常連となった。


 陽気なBGMが酔っ払いの声に負けじと大音量で流れている。

 ラジオDJが曲のタイトルを紹介しては、次の音楽が掛かる。

 その音楽が途中で切れた。

 不思議なことに、それまで聞いていないと思っていた客たちが一斉に話すことを止めて、聞き耳を立てた。


 ――ここで緊急速報です。大統領と首相が国軍兵士らによって拘束された模様です。繰り返します。大統領と首相が国軍兵士らによって拘束された模様です。続報が入り次第お伝えします。引き続き、音楽をお楽しみください。――


 一旦途切れた曲の続きが流れてきた。

 店内がザワつく。


「なんだ? なんだ?」

「クーデターか?」

「大統領と首相が拘束されたって、一体どうなるんだ?」

「火喰石の相場に影響はあるのか?」

「どうなってしまうんだ?」


 口々に火喰石の相場を心配する声が上がった。


「……」


 黙ってニュースを聞いていたロアに、トウゴは質問した。


「みんな、火喰石のことを心配しているけど、何か影響でもあるの?」

「ここには火喰石ハンターが多いんだ。このクーデターで相場が荒れることを警戒している。暴騰するのか暴落するのか、とても大事な問題だ」

「火喰石ハンター? じゃあ、みんな採掘しているの?」

「ああ。ほとんどが雇われだけどな。独立しているのは私ぐらい」

「雇われと独立と、どう違うの?」

「雇われは採掘権を持っていない。採掘権者に採掘料を払って火喰石を探す。見つかった火喰石は全て採掘権者に買い取られて、自由に売ることが出来ない」

「そうなんだ。ロアは自分で持っているから、売る相手を選べるんだね」

「買い取り業者と交渉して直接売ることが出来る」

「ロアって、凄いんだね」

「今頃分かった?」


 ロアはフンと鼻で笑った。


「見つけた火喰石を全部自分の物にできる。売らずにコンクロに使うのも自由。家のエネルギーに使うのも自由。雇われの火喰石ハンターは全て買い取られてしまうから、自分が使う分は販売価格で買わなければならない」

「不自由なんだね」


 そして、損である。


「それでもやるということは、実入りは悪くないってことだよね」

「大きな鉱脈を見つければ大儲けできる。雇われでも豪邸を建てたものは多い。みんな、それを夢見て穴を掘るんだ」


 そこにはギャンブルのような楽しさがあって、一旦嵌まると抜けられなくなるのだ。

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