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ドラゴンと魔石の島に僕等は生きている  作者: ナナイロナイト
第一章
5/60

侵入少年

 ――ピーピー!


 コンクロが警戒レベル1のアラートを出した。

 ミサイルぐらいの危機だと警戒レベルMAXとなり、絶対に無視できない派手派手しいサイレンでアラートを出すが、それに比べると音が小さく、ラジオ程度のボリュームしかない。赤色灯も点灯しない。寝ていたら気付かないかもしれない。

 つまり、それほど緊急性や緊迫感はなくて、要注意レベルということだ。


「今度は何?」

「ヒトガイマス。モニターニ表示シマス」


 コンクロがモニターに外の景色を映し出した。

 画面中央に、12-3歳ぐらいの可愛い顔をした少年が映っている。ロアの知らない顔だ。


「誰だろう?」

「データベースニ登録ハアリマセン」

「島外の人間なのかな。こんなところで何をしているんだろ」


 少年は、「おーい! おーい!」と、両手を大きく振ってこちらを呼んでいた。


「こっちを呼んでいる」

「攻撃シマスカ、回避シマスカ。指示ヲクダサイ」


 コンクロが物騒な選択肢を上げた。

 丸腰の少年相手に攻撃などあり得ない。


「いやいやいや。いきなり攻撃はしないでしょ。まずは調べなきゃ」


 先ほどのミサイル攻撃で、コンクロが少し過敏になっているようだ。


 この一帯は、ロアが採掘権を持っている。怪しい侵入者がいれば排除できる。

 資金力のある組織なら、採掘権を持つエリアに盗掘者が入らないよう、鉄条網で土地を囲み、砦を作り、大勢の見張りを立てて不用意に近づくものを容赦なく射殺する。

 ロアは、侵入者がいても対処しきれないので、火喰石さえ盗まなければよしとして、採掘権を持つエリアを出入り自由にしている。侵入しただけで攻撃することはない。


 少年は、こちらに助けを求めている。

 場所が場所だけに、何か事情があるのではないかと考えた。


「迷子かもしれないし、ここで何をしているのか聞く必要がありそう。とりあえず、止まって」


 ――カサカサカサ……。ブシュー……。


 コンクロは、停止した。

 ゲリラが子どもを囮にして民間人を誘い出す手法を念頭に、慎重に調べる。


「あの子をアップにして」


 少年にズームイン。

 まずはよく観察する。

 手ぶらで荷物も持っていない。

 まあまあよい服を着ているが、普通の服だ。転んだり沼に落ちたりしたのか、ヨレヨレで泥だらけとなっている。

 一番の注目は足元である。このような場所には不向きのブーツを履いている。つまりジャングルの知識がない素人ということ。なんの準備もなくここにいることが不可解である。

 ジャングルに不慣れなものが入り込めば、飛び出た木の根や枝、地面に蔓延る植物に足を取られて転んでしまう。

 コンクロならセンサーを駆使して障害物を回避しながら問題なく進めるが、普通の人間には無理である。

 少年もかなり彷徨ったようだ。


 視界を邪魔するもので覆われているジャングルは、地形を見誤りやすい。やみくもに進んでは、必ず遭難する。

 それだけではない。毒を持つ昆虫や人間を食べる生物に襲われる危険もある。

 このようなジャングルの恐ろしさを、盗掘者はよく知っている。命を落とす危険だらけのここにはやすやすと入ってこない。だから柵も砦も必要ない。

 少年は、よく無事で生きていたと思う。


「ズームアウトして」


 引きの映像となった。


「周囲に誰か隠れている?」

「彼以外ノ生体反応ハ見当タリマセン」

「危険はなさそうね。じゃ、あの子のところまで近づいて」



 ――カサカサカサ……。プシュー……。


 コンクロは、少しだけ前進すると、少年の前で止まった。

 ロアは、天井のハッチを開けて頭を出した。


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