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ドラゴンと魔石の島に僕等は生きている  作者: ナナイロナイト
第二章
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海岸にて

 遡ること一か月ほど前、クーデターが秘密裏に行われた直後のことである。

 ショットガンを手にした複数の政府軍兵士たちが、トアルト島の沿岸部をとあるミッションで歩いていた。

 荒波の浸食で広がったトアルト島の入り江は、なだらかな砂浜が続いている。

 無風の今はとても穏やかであるが、嵐になれば海から吹く風が集中して荒れ狂い、かなり危険な場所になる。

 兵士たちが濡れた砂浜をゾロゾロと歩くと残るいくつもの軍靴跡は、絶え間なく打ち寄せる波によってすぐに消されていく。


「何も見当たらないなあ」

「まったくだ。それにしても、いい景色だ。ここには休暇で来たかったよ」


 兵士たちの気の緩みに対して、別の兵士が叱った。


「気を抜いていないでもっとよく見ろ! 草むら、木の陰、岩穴。死角は至る所にある。そこに隠れているかもしれない」

「しかし、どこにもそれらしい人物もボートも見つからないのですよ」


 漁へ出るのに便利な入り江には、いくつもの漁師舟が置かれている。それらを一つ一つ確認していく。


「我々が想像するボートとは、形状が違うのかもしれない。それを念頭に入れておけ」


 彼女の想像力と疑り深さは、他の兵士も脱帽するほどだ。


「さすが、ピジョン。我々とは頭の回路が違いますね」

「無駄口叩いていないで、さっさと探せ!」


 ピジョンと呼ばれた兵士は、この中では若い方だが階級は一番上である。

 顔つき険しく眼光鋭く、まるで猟犬のようである。敵に食らいついたら絶対に離さない執拗さで、性格も猟犬そのもの。そのことから目覚ましい活躍をいくつも見せて、異例のスピード出世をしてきた人物だ。

 出世と言っても、まだ若いので一兵卒と待遇はあまり変わらず、前線に送られている。


 今回のミッションは、その性格を見込まれて彼女に一任されていた。

 そのミッションとは、王室から消えた「契約の印」を探し出し、王太后の息子であるトウゴを見つけて殺すことである。


 クーデターで内閣と王室を制圧した後、神器であるそれがどこにも見当たらなくて、軍は行方を探していた。

 王室関係者を拷問に掛けたところ、『王太后の息子トウゴがそれを持って、ボートでトアルト島に逃げた』との情報を得ることが出来た。

 王太后に隠された息子がいたことは、政府軍内でも寝耳に水で誰も知らないことだった。


『王太后は、前王が亡くなった後、従者とねんごろになり、子どもを授かった。身分の差から結婚は認められず、その子はトウゴと名付けられ、従者の親戚に預けられた』


 どこまで信憑性があるか分からないが、話を聞いた以上、真偽を確認しなければならない。もし本当なら、契約の印をその子が持っていてもおかしくない。

 それで、ここまで追ってきた。



 入り江をしばらく歩くと断崖に当たった。

 歩みを止めて見上げた兵士は、後方にいたピジョンに伝えた。


「断崖です。これ以上は進めません」


 ピジョンも断崖を見上げた。


「高さ20mというところか」と、目算する。

「この先は探しても無駄だと思います」

「無駄かもしれないという考え方は止めろ。手を抜かず、上がって探すんだ」

「そうなると、かなり遠回りになりますね。垂直には上がれませんから」


 迂回して断崖の上に行くことにした。


「ゴムボートがある!」


 崖の上で持ち主不明のゴムボートを発見した。


「ゴムボートでここまで逃げたのだろうか?」

「考えられなくはないですね。海を隔てたモナハラメから、小さな浮き輪を何個も体に縛り付けて泳いで密入国するものもいますから。ゴムボートなら充分安全に渡れます」


 ピジョンは、ゴムボートをひっくり返したりして、よく観察した。全体が草まみれになっている。

 兵士は疑問に思った。


「このボート、なぜこんな絶壁の上にあるんでしょう? わざわざこんな高さまで運ぶ意味があるんでしょうか?」

「最近の島の天気はどうだった?」

「二日前にハリケーンが来ています。それ以外は晴天でした」


 辺りを見ると、あちこちにゴミや飛ばされた草葉が散らばっている。


(クーデターから5日経っている。どこかでボートを調達して海を渡れば、それぐらいになるだろう)と、ピジョンは計算した。


「嵐で吹き飛ばされて、ここまで上がったんだ。まだ新しい。ここに放置されてそんなに経っていない。ハリケーンが来る前に上陸したと考えると、トウゴが使用した可能性が高い」

「ボート一つで、そこまで推理出来るんですか?」


 兵士は半信半疑だった。


「手分けして付近を探せ! 民家があれば、全て中に入って家探ししろ! 少年がいたら身元を確認! 怪しいものはひっ捕らえろ! 抵抗したら射殺を許可する!」

「はい!」


 兵士たち数名は、走って崖を降りると目に付いた集落に向かった。


 ピジョンは無線で本部に応援を依頼した。


「トアルト島より、報告します。王太后の息子トウゴ潜伏の可能性が高まりました。現在手分けして行方を探しています。応援を頼みます」


 それに対して、『トアルト島は武装勢力が支配している。危険なのでミサイル部隊を派遣する』との心強い回答がきた。

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