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ドラゴンと魔石の島に僕等は生きている  作者: ナナイロナイト
第一章
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爆撃

 カサカサカサ、カサカサカサ……。

 およそロボットとは思えない音を立てて、コンクロはジャングルをかき分けて進んでいく。

 地図では起伏の少ない土地であるが、大小さまざまな植物が生い茂り根を張っているため、真っ直ぐ進むなど無理な話である。

 大木や大岩があれば迂回する。

 しかし、コンクロのコンパスは正確無比であるので、確実に目的地に向かっている。

 何か起きればコンクロが教えてくれるから、ロアは安心してオート運転を任せた。

 マハフィが先ほど少し怒っただけで拗ねていて、それをなだめた。


「よしよし。今度から気を付ければいいんだからね」

「ピィー」


 背中をさすると気持ちよさそうに鳴いた。


 ロアは、焦げた前髪を指先でいじった。

 いくらいじっても良くなるはずもない。泣く泣く切り落とすことにした。

 ポケットナイフを取り出すと、思い切ってザクッと刃を入れた。


「ああ、スッキリした」


 切り落とした髪の塊を数秒眺めると、ダストボックスに放り込んだ。

 鏡を見ると、前髪パッツンでおでこがあり得ないほど表に出ている。


「まあ、いいか。誰に見せるわけでもなし」


 行きつけの定食屋で店主は笑うかもしれないが、その程度のことだと諦める。


 突如、赤色灯が点灯して、「ビー! ビー!」と、アラートがけたたましく鳴り響いた。


「何?」


 コンクロが叫んだ。


「上空ヨリ ミサイル接近中デス!」

「へ? ミサイル?」


 にわかには信じられなかった。

 このジャングルにミサイルが飛んでくるなど、今まで起きたことはなかったからだ。


「背中ノセンサー画像ヲダシマス」


 丸いモニターに白い影が映し出された。ピッピッと、時間経過と共に物凄い勢いでこちらに近づいてくると分かる。


「この白い影がミサイルなの?」

「ソウデス。着弾マデ10秒デス。指令ヲダシテクダサイ」

「10秒⁉」


 さすがにミサイルで吹っ飛ばされたら、コンクロでも自己修復は不可能。火喰石が格納されている核が破壊されたら一巻の終わり。ただの鉄くずと化してしまう。

 中にいる生物は爆撃に耐えられないし、熱で黒焦げ死体となるだろう。


「かかか、回避! 回避! 回避!」


 ヒステリックなロアの叫び声で、コンクロは着弾予定地点から方向を変えて、射程範囲外にジャンプした。


 ――ドッカアアアアアアンン!


 ミサイル着弾。耳をつんざく爆音とともに、地面が割れるように揺れて、炎と煙が立ち上がる。

 間一髪逃れられた。


「良かった~。当たらなくて」

「ピィー」


 不安げに鳴くマハフィを安心させようと撫でたが効果は薄かった。


「続ケテ2発、ムカッテキマス」


 まだ終わっていなかった。


「逃げて!」


 コンクロは最高スピードで逃げた。

 今までいた場所に続けて2発着弾。


 ――ドッカアアアアアアンン!

 ――ドッカアアアアアアンン!


 コンクロが爆風に煽られて吹き飛ばされた。勢いよく地面を転がる。


 ――ガタガタガタガタ!


「ウワアアアア!」


 操縦室内の上下が何度もひっくり返る。

 吹っ飛びそうになったロアをマハフィがお腹でモフッと受け止めた。


「ピィー」

「ふうー、ありがとう、マハフィ」


 体勢を立て直すと、ロアはコンクロに聞いた。


「ミサイルはまだ来る?」

「4発キマス」

「マジで? 何とか逃げなきゃ! 地図!」


 ロアはモニターに映し出された地図を見て、「ここを降りて!」と、谷底を指した。


「時間ガアリマセン。トビオリマス。ツカマッテクダサイ」


 ロアはマハフィの体をシートベルトで固定すると、自分は椅子の背もたれを必死に抱きしめた。


 ミサイルが到達する直前に、コンクロは高さ10メートルほどの崖を飛び降りた。

 着地に成功すると、すかさず崖下の洞窟に身を隠した。


 ――ドッカアアアアアアンン!

 ――ドッカアアアアアアンン!

 ――ドッカアアアアアアンン!

 ――ドッカアアアアアアンン!


 続けて4回爆発が起こり、衝撃が辺り一面に広がる。爆風と爆炎が四方の植物を焼き払った。

 爆心地は黒焦げになり、地面がえぐれた。

 コンクロ内にいる限り安全だが、もし外にいたら、爆音で鼓膜が破れ、熱風で運が良くても火傷ぐらいするだろう。


 5分ほど静かにしていると、モニターから白い影が消えた。


「砲撃ハオワリマシタ」

「今度こそ、良かった~」


 心からホッとしてしばらく全身の力を抜いた。

 ガバッと起き上がり、座り直すとコンクロに聞く。


「で、何で私がミサイルで襲われたの? 撃ったのは誰?」

「………………」


 コンクロは沈黙している。答えは不明と言うことだ。


「分かんないか……。分かんないよね……。私も分かんないんだし……」

「ピィー、ピィー、ピィー」


 マハフィがシートベルトを外してくれと鳴いた。

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