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ドラゴンと魔石の島に僕等は生きている  作者: ナナイロナイト
第一章
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出発

火喰石という万能エネルギーを持つ特殊な石を採掘して暮らす少女ロアの元に、少年トウゴが転がり込むことから話が動き出します。

 火喰石(ひくいせき)ハンターのロアは、AI搭載蜘蛛形採掘ロボット「コンクロ」に乗り込むと、AIに話しかけた。


「コンクロ、調子はどう?」

「良好デス」

「周辺の地帯図を表示して」

「了解デス」


 操縦席前方を覆う大型モニターに、等高線図がデジタル表示される。

 地形の起伏を示す等高線は黄土色。

 座標軸は青色。

 すでに採掘を終えている地域には、赤いバツが表示されている。


 ロアが火喰石の採掘を始めてから一年たらずだが、祖父の代から掘り続けているためにバツの数はおびただしく、地図全般を赤く染めている。


「座標152°、拡大して」


 少しでも領域に余裕がある個所を探し、拡大して、さらに細かく表示していく。

 わずかに残る未採掘場所が見つかれば、当たりを付けるのだ。

 必ずしも火喰石が出てくるとは限らない。

 出てくるまで掘り続けるギャンブルである。それが火喰石ハンターの宿命だ。


「今日はここにしよう」

「了解デス。目的地ヲ座標152°ニ、セットシマス」


 少しジャングルを分け入るが、手ごろな場所はあらかた掘りつくされている。あらたな鉱脈を見つけるには、危険覚悟でより奥地まで探しにいくほかない。

 このところ絶不調なロアは、ほとんど火喰石を手にしていない。このままではコンクロを動かす火喰石も足りなくなる。

 今日は今までの分を挽回しようと少し焦っていた。


「コンクロ、到着予定時間を算出して」

「2時間18分32秒デス」


 コンクロが地図から計測した時間は、驚くほど正確である。

 たとえ地図に乗らないトラブルが起きても、予告した予定時間を守ろうとあらゆる手段を講じる。

 そこまでしなくてもいいのにとロアは思うが、融通の利かなさはやはり機械だからだろう。


「出発!」


 アルトドラゴンのマハフィは、前脚をロアの肩に乗せると、まるで冒険に出発する号令のごとく声高く鳴いた。


「ピィーーーー!!!」


 ロアの言葉を合図に、コンクロが八つの脚を器用に動かして歩きだした。その動きは蜘蛛そのものである。

 見た目が蜘蛛に似ているだけでなく、性能も蜘蛛に負けず劣らず。それがよく分かるのが、地図にない状況に陥ったときだろう。

 もしもドラゴンの群れにぶち当たれば、木を登って回避する。急斜面の崖も登れる。それだけの強靭なバネと硬い爪を持っている。

 さらに、ジャンプもするし、水中歩行もできる。

 危険を察知するため、すべての脚の関節にセンサーがついている。これで周辺の状況を常時監視している。


 前脚はドリル付き。

 ドリルで地中を掘り進み、鉱脈を見つけると採掘する。

 他のハンターに襲われても反撃できるよう、後ろ脚には火炎放射器や銃火器が仕込まれている。これだけの性能を同時にこなせるのも、火喰石のお陰である。

 火喰石の力で自動修復までするので、メンテナンス不要の優れものだ。


 火喰石は、300グラム程度でロケット一基を宇宙に打ち上げるエネルギーを放出する。



「ブワッ」


 ロアの背中にいたマハフィが、興奮したのかロアの肩越しに小さく火を吹いた。

 その火がロアの額をかすめて前髪が少し焦げた。焦げた前髪から異臭がして、操縦室内が黒煙でかすんだ。


「アッツウッ」


 叫び声に反応したコンクロが、すかさず天井から小さな消火用放水ノズルを出してロアに向けた。


「ああ、大丈夫だから。もうなんともないから」


 慌てて放水を止めた。これから始まる前にずぶぬれになりたくなかった。


「マハフィ! 火を吹いたらダメでしょ!」


 ロアの叱責にマハフィはうな垂れた。


 マハフィはトアルト・ドラゴンという島の固有種である。

 体内の石嚢(せきのう)という袋に火喰石を入れて、分泌される消化酵素と反応させて口から火を吹く。

 昔は火喰石を食べてしまうと考えられたことから駆除対象となり、生息数が激減した。

 今では食べるのではなく格納しているだけと誤解が解けて、数を増やすための保護対象となっている。

 しかし、今度は体内の火喰石目当てに密猟されるようになってしまった。


 マハフィはロアに懐いているが、野生のドラゴンは火を吹く危険生物。出会ったら逃げることにしている。

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