第四話 07
件のホストクラブに入ると、流星槌という特殊な武器で男が襲い掛かってきた。
三郎丸はその攻撃も、妖力を使った魅了の術をも退け、逆に夢操術というものの一つ、零刻を男にかけた。
「くっ?!」
一瞬の立ち眩み。しかしその一瞬が命取り。流星槌の男はその一瞬で刀を持った敵対者、小滝三郎丸を見失ってしまった。
「な、に? どこに?! うおぉお?!」
流星槌の男は流星槌を振り回すのも忘れて前へ飛び退いた。男の真後ろに低く構えた三郎丸がいたからだ。
「遅い!」
居合のような構えから光が走ったように見えた。次の瞬間には刀を鞘に収めたままで左手で持ち、右手にはふさふさした光り輝くものを持っていた。
「三尾だったようだが、これで二尾になったな。これは情けだ、取ろうと思えば二本取れたんだ。一尾になったらただのキツネに逆戻りだからな」
三郎丸の居合抜きを避けようとして前に飛んだはいいが、結局避けきれず三本あったらしい尻尾の内の一本を切り取られてしまったキツネは、一瞬顔がキツネに戻りかけたものの、人の姿を維持し、流星鎚の鎚を手元に引き寄せた。
「おっと、三本でも俺にやられたんだ。尻尾が二本になった今、お前にもう勝ち目はないぜ。この尻尾が妖力の源なんだろ?」
三郎丸を睨みつけていたキツネの男が、振り返る。隠れていた二郎丸が出てきていた。
「今の君じゃ、もはやうちにすら敵わないってことは分かっているようだね。ならこれ以上の抵抗も無駄だってことも分かるよね。大人しく……」
男はそれでも人を超えた速さで二郎丸の横をすり抜け、店の外へ逃げようとした、が二郎丸の手指から伸びた糸に絡み取られた。
「はい、捕縛ー。しばらくいい夢を見るといいさ。その間に君の体は運ばせてもらうから」
男はもがく暇もなく、意識を落とされた。幸せて安穏とした夢を見つつ、男の体は文字通り操り人形となって、二郎丸のあとについてくるようにされた。
「諦めの悪いやつだ。逃げようとするとは」
「なんだ? 兄にも活躍の機会を与えるためにわざと見逃したんじゃないの?」
三郎丸はバツの悪そうな表情を見せただけで答えなかった。