第四話 03
「野箆さん、どうでした?」
小滝は二階の事務所に戻って、快適な椅子に座り、タブレットで時間をつぶしていたら、静かにドアが開いたので、立ち上がってそう聞いた。
潰した時間は二十分ほど。占い師であるとしている野箆さんに、少し引っかかるところが見えるお客、鹿沼さんをいろいろと見てもらったはずだ。
野箆さんと言われた、部屋に入ってきたのは品のある老婆だった。
「ああ、あんまりかんばしくなかったねぇ」
「やっぱり? 野箆さんがこんなおばあさんになってるのに、お金周りでトラブルとかおかしいですからね」
「さすが三郎丸だ。わしら関連のようだったよ」
「わずかですが妖気を感じましたからね。聞いていい話でしたら聞いておきたいですが」
「三郎丸には手伝ってほしいからね。ああ、鹿沼さんにはお帰りになってもらったから。いろいろと裏はなしで言い含めたし、妖気は払っておいたから一つ以外問題はないはずだ」
「何か問題が残ったのですか?」
「ああ、三郎丸には大きな問題がね。あの子の夢を斬る必要はないだろうからそこは収入にはならないよ」
「はは、野箆さんに話を振った時点でそれは諦めていましたから、お気になさらず。で、結局どうだったんですか?」
「あの子には僅かだが魅了の妖気が刺さっていた。けど直接そうされたわけではなく、どうやら友人からのようで、その友人が魅了されているようだ」
「すなわち魅了を伝播された?!」
「そうみたいなんだ。おそらくその友人も聞いた限り魅了した本人でもないみたいだし、他にけっこう明確に魅了したと思われるやつがいるようだ」
野箆さんは自分で折り畳み椅子を開いて座った。
「で、ここからはわしからの依頼になるんだがいいかい?」
「野箆さんの顔を立てられるなら喜んで。野箆さんに顔はないけど」