第四話 夢が邪魔をする 01
暖かな日差しの入る、土曜の正午過ぎ。仮眠室があるのに椅子に座ったままうとうとしていた小滝探偵事務所の所長。彼は先日の浮気調査でほぼ徹夜していたので寝不足だった上に、この陽気だ。
今日の午後は予定もない。仕事の完了で浮かれていたか宅配で頼んだ昼食は多すぎた。それをたまにはいいかと全部食べてしまった。
予定なし、この陽気、お腹いっぱい、素晴らしい座り心地の椅子。眠くなるのもしょうがない。
しっかりと眠りに入ったところで事務所のドアがノックされた。ギャグ漫画のように椅子の上から飛び上がらんかのごとく、びっくりして目覚めた。
「はい、少々お待ちを」
とっさに声を出し、扉に向かう前にティッシュを取って口の周りを拭く。万一よだれとか垂らしていたらことだから。
「おまたせしました」
そういいつつゆっくり扉を開く。
ノックしたのは二十代半ばといったところの女性だった、たまにあるアポ無しでくる客の依頼はだいたい迷いペット探しの案件だが、さて。この歳ぐらいの女性の案件は多すぎて読めない。とりあえず仕事になってくれればいいのだが。
「こちら探偵事務所ですが、それでよろしかったですか?」
「は、はい」
「では、どうぞ、お入りになってください」
折りたたみ椅子を用意し、自分の椅子に座る。
「どうなされましたか?」
「はい、実は……」
言い淀んだ? ペット探しではなく、浮気調査か?
「夢を斬っていただきたく……」
兄貴案件だったか! ん、それにしちゃまだ兄貴が現れないな?
「あの、それをどちらで聞きましたか?」
「上司からですが、なにかまずかったでしょうか?」
前回の瀬尾さんかー! 兄貴の案件だったから記憶消さなかったしな。けど兄貴も何も予防してないってどういうことだ? 手抜かりするような人ではないはずなんだが。