第三話 04
女子高生、二郎丸の説明と瀬尾の解釈を聞いて、ようやく小滝三郎丸はどういうことか状況の把握はできた。
把握はしたが、三郎丸にとっても夢を見ることを夢見る、こんなのはさすがに初めてのケースだった。
「ということは、夢を見たい、という夢を斬ればいい……、とは残念ながらなりませんよねぇ。その夢をなくしてしまったら、夢を見たいという希望ももちろんなくなりますので、あに……、その占い師に夢を紡いでもらう必要もなくなりますし」
「ちっちっち、そこは探偵さんとウチは解釈が違うねぇ。ウチの解釈ではそれを斬ってもらっていいし、その後にウチは瀬尾さんに今のご希望通りのてきとーな夢を紡いであげるつもりだよ」
「はい、私もそれでお願いしたいです。夢とか言っていますが、少なくとも私にとっては、感情的な生きる理由、なんです。生命体である限り、生きたいというのは本能ですが、それに個人の感情を乗せて生きる理由を作っているのだと思っています。人間は賢くなりすぎて、そういったものを夢見た、のではないでしょうか?」
「……瀬尾さん、あんた悟ってるなぁ。まあそんなだと生きづらそうではあるね、確かに」
「周りに合わせても苦にならないので都合はいいんですが、さすがにそろそろ私自身の生きるモチベーションがなくなってきつつあるのが自分でも解かってしまって……」
「ああ、なるほど。今完全に理解した。そういうことね」
三郎丸は一人で納得したようだった。この件に関しては答えは出ないとは思うが、三郎丸個人としてのとりあえずの答えを導き出せたようだ。
とっくに自らの答えを持っているはずの二郎丸が、瀬尾さんを憐れむような目で見ていたのが、少々違和感を覚えた。
「さて、ここは探偵事務所で営利でやっているものですので、費用がかかりますがよろしいですか?」
「ええ、もちろんです。それは占い師さんからも聞いていますので、それなりの額を持ってきています」
「話は早くて助かりますねぇ。まず貴方自身への調査費として十万、こちらは領収証も出せます。そして施術費用として九十万、支払っていただきたく。申し訳ないですがこれは領収証は出せません。探偵事務所で施術ってなんだ?ってことになってしまいますからね。それでよろしければお引き受けいたしましょう」
さすがにそれはふっかけ過ぎでは、と思わないでもないことを三郎丸は言い出した。