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第一話「最後の夜だ、思いっきり遊ぼうぜ!」

   

「よう、ウルート! お前、ゼダン隊長の部隊に配属されたんだってな?」

 トミーが僕に声をかけてきたのは、入隊式の最中(さいちゅう)だった。


 バルータ王国の()えある精鋭騎士団、その入隊式だ。だが『入隊式』という名前から感じられるような堅苦しさはなく、最初の団長挨拶の後は、普通のパーティーだった。

 新人騎士同士の交流が目的らしく、先輩騎士の姿はない。立食形式であることも、参加者の顔ぶれも、ちょうど騎士学院の卒業パーティーと同じであり、特に目新しさは感じられなかった。「さあ、これから精鋭騎士団の一員として頑張るぞ!」という気負いも霧散するくらいだった。

 とはいえ、騎士学院時代に友人の少なかった僕は、おしゃべりを楽しむ若者の輪から外れて、一人で食べ物を口にしていたのだが……。

 そこに話しかけてきたのが、数少ない友人の一人、トミーだったわけだ。


 今日も彼は、トレードマークの金髪を美しく撫でつけていた。手にしたグラスには、(ゆか)に敷かれた絨毯と同じ、真っ赤なワイン。酔っても顔に出ないタイプのトミーなので、飲みすぎていないか、少し心配になる。

「やあ、トミー。パーティーを楽しんでるみたいだね」

「当たり前だ! 今日が終わったら、正式に精鋭騎士団の一員だぞ? もう、こんなふうに羽を伸ばす機会もなくなる! 最後の夜だ、思いっきり遊ぼうぜ!」

 僕とは正反対に、社交的なトミーだ。騎士団で外敵と戦うより、こうしたパーティーの方が似合っているのだろう。

 彼は僕の肩に腕を回してきて、仲間の方へ引っ張っていこうとする。

「あっちにさ、エミリーとミーニャがいるんだ。同期の美人騎士ツートップが揃い踏みだぜ。ウルートだって、エミリーのこと、気になってただろ?」

「まあね」

 騎士学院に入学した直後、どの()がタイプか聞かれたので、評判の良い女子生徒の名前を適当に挙げたことがある。剣術の腕前に加えて、回復魔法も使いこなすということで、当時からエミリーは有名人だった。

 ただそれだけであり、特に『気になってた』わけではない。だが、ここはトミーに話を合わせておく。

 今日くらいは、とことん彼に付き合おう。そう思ったのだ。だからトミーに従って、僕も歩き始めた。

「知ってるか? ゼダン隊長は『不敗騎士』と呼ばれてるらしいぞ。よかったなあ、ウルート! それだけ強い部隊なら、死ぬ心配もないな!」

「縁起悪いよ、トミー。今から『死ぬ』なんて口にするのは」

 それが、約二週間前の出来事であり……。

   

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