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プロローグ 故事成語

   

 山にまつわるもので『背山(はいざん)の陣』という言葉がある。

 今から数千年の昔、ザラ共和国とバルータ王国の何度目かの戦争において、追い詰められたバルータ軍が、逆転勝利のために用いた戦法だという。

 バルータ軍の指揮官は、断崖絶壁のような山々を背にして布陣し、部下たちに「退却できない!」という覚悟を(いだ)かせた。結果、バルータ軍は必死で戦い、ザラ共和国を打ち破ることに成功した。


 また『泣いて愛人を斬る』という言葉もある。

 同じく数千年前、ザラ共和国が三つのルートからバルータ王国へ攻め込む際、総司令官が北の侵攻軍の指揮官として任命したのは、寵愛していた女性騎士だった。クショバ山の麓でバルータ軍と激突した彼女は、早々にクショバ山を占拠、その山頂に布陣したという。

 確かに兵法書には「高地から低地を攻めるは有利」と書かれている。だが、現場の状況に照らし合わせて用いるのが兵法というものであり、少なくともクショバ山の戦いには適していなかった。

 麓の山道入口を全てバルータ軍に押さえられ、彼女の軍は水も食料も乏しくなり、山頂で孤立。疲弊したところに総攻撃を食らい、壊滅してしまう。

 ほうほうの(てい)で逃げ帰った彼女も、大敗の責任を取る形で処刑され、その死に総司令官は涙した。人々は「女の色香を用いて分不相応な地位につくと、ロクなことにならない。その女性も、女性を抜擢した方も」と噂したという。


 どちらも、歴史書に記されている逸話をもとにした言い回しだ。だが故事成語の元ネタなんて、しょせん後世の歴史家による創作。現実には当てはまらない、と僕は思っていた。

 今日この日までは。

   

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