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3.受け継いでるのは貧乳遺伝子!?

 知りたくもない両親の本音に急に足取りが重くなる。

(なんかもう、みんなで朝食食べるのがこれから苦行になりそう……)


 ママとパパが私たちにそんな期待を秘めていたなんて。

 何だか未来の伴侶を親に決められているみたいで気分が悪い。

 ……が、残念ながらその意志に沿うかのように、私はまんまと康太を好きになっている。


(親にお膳立てされてるみたいで悔しいな……)

 自分の部屋のドアノブに手をかけた。


「康太ご飯だから起きて……」

「お前、本当貧乳だな。ちゃんと飯食えよ」

 康太が右手に私のピンクのブラをつまみ、ぷらんとぶら下げている。


「い、嫌ぁぁぁぁぁあ!!!」

 私は康太に飛びかかってそれを取り上げた。


「なんだよ、そこに落ちてたんだから柚子が悪いんだろ?」

「だからって女子の下着をわざわざピックアップする?? この変態!!」

 もうホント泣きそう!


「お前のこんなパットでモリモリに盛ってる下着見たってなんとも思わねーよ! そんなんじゃ彼氏できねーぞって心配してやっただけ!!」

 ベーッと康太が舌を出した。


「大きなお世話だっつーのっ!!」


 下着ぐらい見られたっていいじゃない……

 見られたって………


 いや、無理無理無理!!

 絶対無理!!


 だって……

 私猛烈な貧乳なんだからっ!!!




「あはは!」

 食卓を囲みながらお姉ちゃんが大口を開けて笑っている。


「どうしたの花梨(かりん)。食べてる時くらい口を閉じなさい」

 ママに地味に怒られながらもクククと笑いを止められないでいる。


「だってさぁ、柚子のブラを康太が拾って喧嘩してんの目撃しちゃってさぁ」

 プククと声を震わせている横で、真っ赤になっている私と康太。


「いや、あれは柚子が下着を部屋にほったらかしにしてたのが悪くって……」

「だからって普通、手に取んないでしょ!?」

 全く何で朝からこんな話題で言い合いしなきゃ何ないのよっ。

 あまりの恥ずかしさに、せっかく康太に教えてもらって覚えた知識が全部吹っ飛びそう……!!


「康太くん、柚子はね、まだ発達途上だと思うのよ。うちの家系はみんなほら、見ての通りでしょ? 素質はあるはずだから暖かく見守ってやってよ」

 お母さんとお姉ちゃんがここぞとばかりに必要以上に大きな胸を誇張する動きをしてうふふと笑っている。


「お、俺は別に……」

 ほっぺた赤くして目のやり場に困っている康太の思考が怖いくらい読めてしまった。


「変態っ!!」

「何だよっ!」


 あぁ、ムカつくっ!!

 男って胸ひとつで何でそんなにデレデレ出来んの?!


「ほら、しょうもないケンカしてないで時間ないんだから早く支度しなさい! 柚子は洗面台時間かかるんだから」

「もう、分かってるわよ!」


 ママに煽られて渋々立ち上がり洗面所に向かう。


「康太くん。男の子が胸の大きい子を好むのは自然な事だから別に恥ずかしがることはないのよ。うちのパパなんかパパのお母さんが胸小さくて、ずっと大きなのに憧れてたらママが目に留まって夢中になっちゃったって言ってたものね、パパ!」

「あ、いや、まぁ……」

 決まり悪そうに頭をポリポリと掻きながら読んでいた新聞に顔を埋めた。


「本当に俺はそんなにこだわりはないですから、その……大きいとか、小さいとか」

「そう? ……あんな娘でもいいところはいっぱいあるのよ? だから諦めないで気長に成長するのを待って………」

 ママが顔の前で両手を合わせている後ろ姿を見た途端、怒りが沸点に到達する。


「ママ!! 全部聞こえてるんだかんねっ!!」

 聞き捨てならない会話がさっきから不快に耳をついてくるのに我慢の限界!

 ってか、父方の遺伝子受け継いじゃってたら私もう終わりじゃない?!


「………ぶーっ!!」


 すると私の怒りの声をかき消すようにお姉ちゃんが横で吹き出した。

「ママもパパもさ、女は胸が全てみたいな会話すんのやめてよ。柚子はさ、身体の線は細いけど可愛い顔してるし、ここぞっていう時にこの家一番の頑張り屋だと思うよ? 康太だってそう思うよね?」

「俺もそう思うよ、姉ちゃんの言ってる通り。柚子の根性あるとこは尊敬できるし、いつも怒ってばっかだけど笑顔は最高……なんじゃない?」

照れ隠しかテーブルの上の牛乳をゴクゴクと一気に飲み干した康太。


『笑顔は最高』?

 ………え?

 ちょっと、なんかすごく嬉しいんですけど……


「柚子! 口元ゆるゆるだぞぉ」

 お姉ちゃんに人差し指で腕を突かれハッと我に帰る。


「そそそ、そんな事言ったって簡単になかった事なんかにできないかんね!?」

 危ない危ない!

 本音が駄々洩れるとこだった!

 私はわざとらしく頬を膨らませ怒ってみせる。


「分かったよ、今日帰り柚子の好きな新しく出来たケーキ屋のミルクレープ奢ってやるから」

 ポンとさりげなく頭に置かれた大きな手は私の怒りを吸い込む魔法の手。


「うん!!」

「現金なやつだな、ったく。その前にテスト頑張れよ!」


「あぁ、そうだった……」

 康太の顔を見るとまたニカっと笑っている。


 横で嬉しそうにパパとママがうんうんと頷いているのが見えた。

 全くあの二人………!!


 でも、康太が大きさなんてこだわらないって言ってた事……ホントかな?

 また隣で笑っている康太の笑顔が眩しすぎて……また今日も逃げるように目を逸らした。



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